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盗まれた魔導書を取り戻せ!

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盗まれた魔導書を取り戻せ!

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プロローグ


 ここはイルミンスールから離れた森の中。
 イルミンスールから盗んだ魔導書を懐にしまい込み、森の奥へと逃げる男は、前方で待機していた二人の影に気づき、合図を送った。
「どうじゃ、うまくいったかのぉ?」
 辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)が男の前に姿を現して、そう言った。
「ああ、後はこれを持って逃げるだけだ」
 男は頷き、懐から盗んだ魔導書を少しだけ出して、二人に見せた。
「それがそうですか……わざわざ盗むなんてよほどのものなんでしょうね。わたしも見てみたいものです」
 刹那の側にいたパートナーのファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)は興味深そうに、その魔導書を見て言った。
 しかし、男はすぐに書をもとの懐にしまい込んだ。
「言っておくが、この魔導書の中身を見せるつもりはないぞ。あなた方には俺の手助けを依頼しただけだからな」
 ファンドラはつまらなそうにしていたが、「わかっていますよ」と言った。
(どうせ、後で書は奪うつもりですから、同じことです)
「それじゃ、早く逃げましょう。いつ追っ手が来るかもわかりませんし」
「待ってくれ、その前にやることがある」
 男はそう言うと、スケルトンやゾンビを大量に召還し、今まで逃走してきた退路のほうに、そのアンデッドたちを向かわせた。
「こいつらを追っ手に差し向ける」
「え? 足止めにしても、それだとわざわざ追っ手にこちらの居場所を教えるようなものですよ。アンデッドは自然発生しませんし」
 するとそのとき、体長五メートルはあるかという巨大蜘蛛が一体、三人の前に姿を現した。蜘蛛は鋭い牙をむき出し、今にも襲い掛かってくるようだった。
 瞬間、刹那は『ヒロイックアサルト』を使い、攻撃を仕掛けた。蜘蛛は急所を突かれ、しばらく痙攣していたが、やがてその場に倒れた。
 男は絶命した蜘蛛の亡骸を指差した。
「森にはあの蜘蛛のようにモンスターが山ほどいる。俺たちはそいつらを今のように倒して進む必要があるんだ」
「ああ、わかりました。つまり死骸が道標を作ってしまうということですね」
 ファンドラが納得して言った。
「考えてみれば、木々の枝を軽業で飛び移れる刹那も、枝の上に痕跡を残すことになります。モンスターとの戦いが避けられたとしても、この森を進む以上、追手にこちらのいる方角を知られてしまうわけですね」
 男は頷いた。
「だからできるだけ時間を稼ぐために、アンデッドたちに足止めさせる」
 そうして、召還されたアンデッドたちは群れをなして、イルミンスールの方向へと消えていった。