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リアクション
第一章 犯人追跡
イルミンスール校内の大図書館。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は校長のエリザベートとそのパートナーのアーデルハイトに案内されて、本が盗まれた場所を調べていた。
犯人が触れたと思われる周辺の物品を『サイコメトリ』で、その物品に籠められた情報を読み取っていく。やがて、犯行の情景を見ていた物品を見つけた。
それは本棚だった。ルカルカはその本棚から「犯人の顔」と「本の外装」と思われるものを読み取った。
「エリー、アーデ、犯人の顔と盗まれた本を読み取れたよ! 皆の捜索に役立つと思う」
「でかしたですぅ、ルカルカ! でもぉ、私のことはぁ、エリザベート校長先生と呼び名さぁい。大ババ様もそうですよぉ」
ルカルカはイルミンスールにはよく来るがイルミンスール生ほどは土地勘は無いため、後方から皆をサポートしているのだった。
ルカルカは読み取った記憶を『記憶術』で想起して、携帯電話で『ソートグラフィー』を行い、それを画像データ化して、ノートパソコンに画像として保存し、探索PCのHCと携帯に転送した。
「これで犯人が他人のフリをしても、偽物の本を渡そうとしても誤魔化されずに追求できるわね……ん?」
「忘れ物……本を内緒で借りていった人の忘れ物ないかしらねぇ」
そこにセリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)が通りかかった。何かを探しているようだ。
「どうしたの?」
「ああ、ルカルカちゃん。本を内緒で借りていった人の手がかりを探してるの。忘れ物とかあれば、レラちゃんににおいを嗅いで覚えてもらえるのよ」
セリーナの側には賢そうな狼がいた。
「うーん、図書室に犯人の私物は見当たらなかったわ。本棚から犯人の顔が読み取れたから、もしかしたらそこににおいが残ってるかも」
ルカルカはその本棚の場所にセリーナを案内した。
レラは着くと、さっそくその辺りを嗅ぎ始めた。
「何かにおいがあったみたい〜。ルカルカちゃん、ありがとう」
「ううん、役に立てたならよかったよ」
■■■
「さーて、古巣からのお仕事依頼か、頑張るかな〜」
緋王 輝夜(ひおう・かぐや)は先行して森の中を駆け抜けていた。
後を追うメンバーが追いかけやすいように森の障害を排除していくつもりなのだ。
「お、さっそくいたか」
輝夜はずんぐり太った蜘蛛を見つけた。
蜘蛛は輝夜に気づくと、糸を吐き出した。輝夜は素早い動きで糸をかわし、『ミラージュ』で残像を作って蜘蛛の目を惑わし、素手格闘での死角からの一撃を喰らわせた。
蜘蛛は悲鳴をあげて昏倒した。
その声を聞きつけたのか、今度は複数のゾンビたちが姿を現した。
「アンデッドには容赦しないよ!」
輝夜は『ツェアライセン』を使い、ゾンビたちを八つ裂きに切り刻んでいった。
涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)はパートナーのエイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)を連れて、痕跡を頼りに犯人を追跡していた。
「まあ、なんだ……自分の身の程を知らないやつにはきついお灸が必要だな」
涼介は犯人が残した樹木の痕跡や盗まれた魔道書から漏れる魔力の残滓などを調べながら言った。
「はい、わたくしたち魔道書ときちんと契約出来れば、魔力を一気に高めることが出来ますけど、それは諸刃の剣で力不足の方ですと魔道書の魔力に蝕まれてしまいますわ」
そのとき、一体のスケルトンが二人の前に現れた。剣を持ち、二人を見つけたとたんに襲い掛かってきた。
涼介は『凍てつく炎』をスケルトンに放った。炎術と氷術がスケルトンを飲み込む。スケルトンは消滅した。
「……兄さま、今のアンデッドは話に聞いていた以上のレベルでしたわ。ということはまだ犯人に反動は出てないようですわね」
エイボンの書は消滅したスケルトンのほうを眺めて言った。
「そうだな、どちらにしても犯人は捕まえて反省させるけどな」
「雑魚をまともに相手などしておれん。単調な動きしかできんアンデッドや、多少徒党を組んだゴブリン程度なら、下手なことをするよりは不滅兵団で一気に押しつぶしていったほうが早い」
アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)は『不滅兵団』を召喚し、ゴブリンやスケルトン、ゾンビを文字通り踏み潰しながら森の中を一直線に犯人を追跡していた。
パートナーのイルミンスール森の精 いるみん(いるみんすーるもりのせい・いるみん)はアルツールに地元の地祇として協力を頼まれたので、道案内をしていた。
いるみんは格闘戦しか基本的にできず、下手に仕掛けて囲まれたらかえって味方の足を止める事になりかねないので、自衛以外の戦闘は極力避けることにしていた。
途中、巨大蜘蛛が木々の間から飛び出してきた。巨大蜘蛛はいるみんのほうを向いて威嚇した。
「やむをえないこととはいえ、敵を目の前にして素通りするのは本意ではない。観客のいないのも業腹だが、どうしても私と戦おうというのならほんの一瞬だけ相手をしてやろう!」
いるみんはそう言いながら、接近する巨大蜘蛛の関節を破壊しようと試みたが、失敗して弾き飛ばされてしまった。
アルツールは『フェニックス』を召還して、蜘蛛に向かわせる。全身を火に包んだフェニックスを見て蜘蛛はひるんだ。
蜘蛛を『フェニックス』に任せて、二人は先を急ぐことにした。
奏輝 優奈(かなて・ゆうな)は魔導書の内容が気になるようだった。
「魔力強化の魔道書やってなぁ、ウチも興味あるな〜。犯人確保に協力すれば、見せてもらえるかな? 校長にお願いしよっと」
優奈は『超感覚』で、獣特有の感覚の鋭さを身につけ、相手の足取りやにおいを探った。
やがて、大体の方向を定めると、『スカーレット・グリント』に乗って猛スピードで走行した。
「小型飛空艇の四倍速や、これならザコもシカトできるやろ」
「胸騒ぎがします……。
私の使う『厭わぬ者』は、もともとイルミンスール大図書室にあった魔導書の内容を参考に手を加えたもの。盗まれた魔導書が、私が参考にしたそれであったら、止めさせなければいけません」
レイカ・スオウ(れいか・すおう)は魔導書の内容が自分の使う魔術とよく似ていることに不安を感じていた。
もし自分の魔術と同じものだとしたら、絶対に使ってはいけない。
レイカは『昂翼のアネモイ』で森を翔け、森の怪物を『シャホル・セラフ』の厭わぬ者で強化した『氷術』や『火術』を繰り出し、蹴散らしていった。
「楽しようと泥棒するなんて許せません! 犯人を捕まえて、盗まれた魔導書を取り返しましょう!
墓守姫さん、行きますよ!」
次百 姫星(つぐもも・きらら)は野生の勘を駆使して、逃げた犯人やその痕跡を捜して辿っていく。
「死者を無下に呼び出して足止めとは、どうやら私を怒らせたいらしいわね。
ええ、ミス次百。その犯人を捕まえて、灸を添えないとね。フフフ……」
呪われた共同墓場の 死者を統べる墓守姫(のろわれたきょうどうぼちの・ししゃをすべるはかもりひめ)は殺気看破を応用して、逃げる犯人を捜していた。
そのとき、スケルトンの群れが二人の前に現れた。スケルトンたちは剣を持ち、構えている。
姫星は『龍鱗化』と『風の鎧』で身を守り、墓守姫は『光術』でスケルトンたちをけん制した。
二人はひるんだスケルトンの群れを強行突破していった。
ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)は犯人の残す痕跡の情報などから効率よく追跡し、あらかじめ把握している森の地形から、進路を予測し先周りしていた。
「犯人も魔法使いの端くれなら、何も持って帰らなくても読めば済むコトね」
ロレンツォは言った。
「犯人さんも、きちんと貸出しか閲覧の手続きを踏めばよかったのにね」
パートナーのアリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)は不思議そうに言った。
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はメタリックブルーのトライアングルビキニの上に、ロングコートを羽織るだけの姿で、森の中を進んでいた。
煽情的な美しい肢体を惜しげもなく晒しながら、慎重に犯人の痕跡をたどり、『銃型HC弐式』のサーモグラフィ機能を使って犯人の行方を追い、着実に逃げ道をふさいでいった。
「犯人は魔法を使って痕跡を誤魔化しにかかっている可能性もあるから、注意が必要ね」
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は黒いロングコートの下にホルターネックタイプのメタリックレオタードを着用し、セレンフィリティと共に犯人追跡に当たっている。
『女王の加護』で自分とMCの身を守りを固め、『神の目』で犯人が待ち伏せしていないかを警戒。セレンフィリティが犯人の痕跡を洗っている間にも、自分はいつ襲われても即応できるように臨戦態勢を取っていた。
「ほ、本を読むのが大好きな私としてはイルミンの図書室から貴重な魔道書を盗むなんて、ゆ、許せないです!
絶対に犯人さんを探し出してぬ、盗んだ本を返してもらいますッ!」
リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)は『空飛ぶ箒 スパロウ』に乗って、森の木々に『人の心、草の心』を使って、何か荷物を持って急いで逃げようとしている人を見かけなかったか、どちらに向かったのかを聞いていった。
すると、リースは詳しい犯人の足取りをいくつか聞けたのだった。
セリーナはにおいを覚えた『賢狼・レラ』のあとについて、犯人を追跡していた。
ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)は普段イルミンスールの森の中にいないアンデット系のモンスターがイルミンスールの森ん中をうろついていることから、アンデット系のモンスターが出てくる方向に向かって犯人を追跡していた。
「なかなか犯人の痕跡が見つからないなぁ」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は『風の便り』で犯人の情報を聞きつけていたが、森の土地勘がないため、迷いかけていた。
詩穂は犯人をネクロマンサー系の魔術師と想定し、戦闘になるようなことがある場合に備え、闇黒耐性とバッドステータス耐性を身につけていた。
「あ、あの、よろしければ、道案内します!」
リースが詩穂を見つけ、声をかけた。
「わ、ありがとうございます。是非、お願いします」
詩穂はリースたちと同行することになった。ナディムもセリーナを戦闘に巻き込みたくないため、同行者が増えるのには賛成だった。
ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)のパートナー、ナターリア・フルエアーズ(なたーりあ・ふるえあーず)は犯人の追跡を行っていた。
森の中は迷いやすく、土地勘もないため、追跡は難航していた。
「ローグは大丈夫かな……」
「魔道書ねぇ……リオンが騒ぐ前に動くとするか」
佐野 和輝(さの・かずき)は『トレジャーセンス』で手っ取り早く魔道書の場所を把握した。それから『超人的肉体』と『ゴッドスピード』、さらに蟲で脚部を強化して素早く森の中を進む。
アニス・パラス(あにす・ぱらす)は禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)を『空飛ぶ箒ファルケ』に乗せ、和輝と追跡を急いだ。
アニスは『殺気看破』と、リオンと共に『ディテクトエビル』で周辺を探知してモンスターを見つけ、『精神感応』で和輝に伝えた。
「魔道書が盗まれた? 管理不十分だ、阿呆め。とはいえ、盗人から魔道書を手に入れれば……ふむ、和輝。行くぞ」
リオンは書の内容が気になるようだった。三人はできるだけ障害を回避しながら進んでいった。
「『禁猟区』で方角が分かるけど、土地勘がないから迷うかもしれないな……他のイルミンスール生と会ったら一緒に行動しよう」
ヒデオ・レニキス(ひでお・れにきす)は『禁猟区』と『銃型HC』を使い、アンデッドの来る方角を追って森を進んでいた。
「魔導書を取り戻したら、もちろん返す。そのあとでレザーグの奴が借りたいとか言ってたが」
パートナーのレザーグ・ラグディオン(れざーぐ・らくでぃおん)はヒデオと共に犯人を追跡していた。
襲ってくるアンデッドを『雷術』や『氷術』を放って動けなくし、アンデッドの来た道を遡っていった。
「……事後に、書を図書館へ借りに行くかな。内容に興味があるからな」