リアクション
◇ ◇ ◇ 『聖剣の剣は大変だったけど、ありがとう。こちらも助かったわ。 “地へと根付いたものは奪るな” 古き良き空賊の格言だそうよ。別に奪いには行かないからご安心を。 こちらは、『巨人の魔剣』『竜の聖剣』の方で目星がついたから、出掛けてきます。 それでは』 リネン・エルフト(りねん・えるふと)からその後届いた手紙を読んで、若いっていいねえ、と都築は呟いた。 『世界樹の聖剣』は、所詮、探していた多くの宝のひとつに過ぎなかった。 そして最早、それらは過去の出来事に過ぎない。 リネンの目は、既に未来を見据え、新たな可能性へと向かっていた。 報告書の作成が終わり、一息つく為にお茶でも飲もうと水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)が自販機に向かうと、先客がいた。 階級章を見て敬礼してきたので、ゆかりも答礼する。 その顔を、何処かで見たような気がする、と内心で首を捻った。 向こうも似たような顔をしている。 程なくして思い出し、硬直したゆかりに、経堂 倫太郎(きょうどう・りんたろう)はにやりと笑った。 「や、いつぞやのお姉さん……いや、大尉殿でしたか、お久しぶり☆」 「……え、何、どうしたの、カーリー。この人誰?」 パートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が不思議そうな顔をする。 ゆかりは大声で叫びそうになるのを何とか堪えて、倫太郎を人気の無い場所に引っ張り出した。 「あ、あなた……!」 彼は、春にゆかりがバーで声をかけられ、そのままホテルに直行した相手だった。 翌朝目が覚めたらいなくなっていて、抱かれ損、という屈辱的な扱いをされたのだ。 「何故こんなところにいるの!?」 「久しぶりに会ったのにつれないね。オレ情報科なんだけど」 「えっ……」 まさかこれから同じ科に勤務する相手とは。 絶句するゆかりを内心面白がりながら、倫太郎は大袈裟に溜息を吐く。 「何だか冷たいなあ、あの夜はあんなに情熱的に愛し合ったのに」 「あなた、逃げておいて何を……!」 「え、あの時の相手? カーリー……」 酒が入っていたとはいえ、こんなチャラい男に引っかかるなんて……。 マリエッタは呆れ半分、殺意充分で倫太郎を睨む。 「そんな熱い視線で見つめられても、オレは年下には興味ないし」 「こっちの台詞よ!」 倫太郎に笑われ、マリエッタは飛びかかりかねない勢いだったが、ゆかりが何とか取り押さえた。 「大尉ってことは、オレも部下になるわけだね。よろしく」 そんな二人に対し、倫太郎は軽薄に笑い、 「あんたと同僚とか冗談じゃないわよー!」 とマリエッタの叫びが木霊した。 連日猛暑が続いているというのに、こんな時に限ってクーラーが故障した。 大規模プール施設に遊びに行きたいが、休みは一日しかなく、のんびりゆっくりできそうもない。 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、最初こそ仕方なく部屋で大人しく過ごそうかと思ったが、すぐにそんな気も失せた。 「セレン、何やってるのよ?」 部屋にデッキチェアを持ち込み、リゾート水着に着替えて寝そべり、ヘッドフォンで音楽を聴いているセレンフィリティに、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が呆れる。 「気分よ、気分。 どうせ暑いなら、少しでもリゾートで過ごしてる気分になりたいじゃない」 「だからって」 という言葉をこれ以上聞く気もないらしく、両手でヘッドフォンを押さえている。 まあ、気持ちは解らないでもない。 冷たい飲み物を持ってきてあげようと腰を上げたセレアナは、腕を取られてそのまま引っ張り込まれた。 「ちょ、ちょっと……!」 唇を塞がれる。 そのままデッキチェアに縫い付けられ―― ――気が付けば、互いに一糸纏わぬ情事後の状態だった。 「何考えてるのよ……」 「何も考えてない……こうやって何も考えずイチャイチャしちゃ悪い?」 「イチャイチャどころじゃないでしょ、バカ……」 言うと、セレンフィリティは笑って、もう一度、と身体を寄せてくる。 「熱くなりましょうよ、もっと……」 「あ……」 セレンフィリティの情熱的な手を抵抗無く受け入れて、セレアナの身体が熱く震えた。 |
||