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ゴブリンの群れ、湖の水蛇、さらわれた村人たち

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ゴブリンの群れ、湖の水蛇、さらわれた村人たち

リアクション

 1.

「それで、アテナたちはどうする? 瑛菜おねーちゃん」
「ああ、まずは子供たちを助けるサポートかな。ヒュドラの方にも何人か向かってくれるみたいだしね」
 自分の装備を確認しながら、熾月 瑛菜(しづき・えいな)は問いかけるアテナ・リネア(あてな・りねあ)に応えた。
 ゴブリン達の数がわからないのは不安要素だが、今は自分たちに出来ることをやるしかない。
 協力者が集まってくれたのは僥倖だった。
 洞窟が視界に入る。
 先行してくれた彼らに感謝しつつ、追いつくため、瑛菜たちは武器を構えて駆け出すのだった。


     /


「――はぁッ!!}
 襲いかかるゴブリンを斬り倒し、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は一息つく間もなく新たな敵に向き直る。
「強さはさほどでもないけど、流石に数が多い……!」
 先行し、派手に暴れることで救出隊の囮になればと考えたが、倒しても倒しても沸き出すように現れるゴブリンに辟易する。
 目論見通り集めることはできているようだが、この数ではどこまで効果があったものか。
 リジェネレーションによって傷は塞がるけれど、精神的な徒労感はいかんともしがたい――
『ギッ――!』
「っ――」
 そのスキを突くように、死角から襲いかかるゴブリンに対応する。
 同時に三匹。反撃で二匹の意識を奪う。浅い。多少のキズは覚悟して身構える。

 ――銃声。
 地に伏したのは残ったゴブリンの方だった。
「やあ。微力ながら助太刀するぜ」
「……助けたのはあたしなんだけど」
 貴仁に声をかける白石 十兵衛(しらいし・じゅうべえ)を、ぶすっとした表情で皮肉ったのは黒田 紫乃(くろだ・しの)だ。
 とはいえ文句があるわけでも無いようで、紫乃は貴仁の会釈に応えつつ増援に向けてハンドガンを構えた。
 余裕ぶった態度をとるものの、紫乃にとっては初めての『実戦』だ。
 照準を定め、落ち着いて、引鉄を引く。
 脚を撃たれたゴブリンが倒れるのを目指して、息をつく。
 だから――目の前の敵に集中していた紫乃は、潜み近付くゴブリンの影に気付かない。
「……しまっ、」
「ふッ――――!」
 背後から近づいたゴブリンは、十兵衛の綾刀によって打ち据えられて動かなくなる。
「紫乃には指一本触れさせない…紫乃に触れていいのは俺だけだ」
「ッ、変なこと言うな!」
 十兵衛の軽口に怒声を返し、紫乃は気を引き締め直した。
 冷静に。もっと周囲に気を配らなければ。
「…………ありがと」
 少しだけ赤く染まった頬を隠すように背を向けて、ぼそりと呟く。
 十兵衛は少し嬉しそうに口元を歪めると、紫乃を守るように一歩踏み出した。


     /


 洞窟の少し奥まった場所に、村から盗まれた財宝が山と積まれていた。
「意外とすんなり到着できたでありますね」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は周囲に自分以外の気配がないことを確認すると、足元の宝石を拾い上げる。
 他の人間の戦いに紛れてひっそりと侵入したとはいえ、こちら側の道筋にゴブリンは数える程しかいなかった。
 囮、ということならば、ゴブリンにしては知恵が回りすぎている気もする。
「……ま。自分には関係のないことであります」
 楽に持ち帰れそうなものをいくつか見繕い、吹雪は早々に退散することにした。