校長室
戦乱の絆 第2回
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新たな龍騎士、乙王朝と大帝、アムリアナ エリュシオン宮殿、謁見の間。 如月 和馬(きさらぎ・かずま)とエトワール・ファウスベルリンク(えとわーる・ふぁうすべりんく)は、アスコルド大帝の前に居た。 他には誰も置いていない。 「――なるほど」 アスコルドの声が聞こえる。 エトワールは下げたままの顔を上げることが出来ずに居た。 首筋を、うっすらと冷えた汗の感触が辿る。 エリュシオン領内へゴーストイコンを不時着させた和馬とエトワールは、拘束され、ユグドラシルへと送られていた。 そして、そのまま、すぐにアスコルドの元へと引き出され、良雄誘拐についての考察と実行結果を話すことになった。 アスコルドの掠れた笑い。 「如月和馬。汝に龍騎士の地位と御人良雄暗殺の命をやる」 「……え?」 エトワールは、思わず顔を上げた。 隣では、和馬が不敵に笑いながらアスコルドを見返していた。 アスコルドが続ける。 「御人良雄の件、他言すれば汝の命は亡い。忘れるナ」 ■ 和馬らが退出した後、謁見の間には、乙王朝からの使いとして諸葛涼 天華(しょかつりょう・てんか)と、それに従う黄 月英(こう・げつえい)の姿があった。 天華の高らかな宣言が響く。 「横山ミツエがアスコルド大帝のパートナーとなることは決して無い」 アスコルドを見据え、その異様なプレッシャーに耐えながら天華は続けた。 「それが、横山ミツエ、ひいては乙王朝の答えである」 これは宣戦布告に近いものだった。 アスコルドがクックと笑い零しながら、首を巡らせる。 「汝らがどう足掻こうとも、あれはいずれ我がパートナーとなろう」 彼の口がゆっくりと紡ぐ。 「我がそう望んだのだ」 その言葉に、天華はフッと一笑した。 「運命だの世の道理だのに従うようなものであったのならば、今の乙王朝や横山ミツエは無い」 未だ不敵にこちらを眺めるアスコルドを見返し、同じように笑みを浮かべてやる。 「精々、我ら乙王朝を甘く見ないことだな」 ■ ユグドラシル、路地裏。 「――白輝精には会えそうにない?」 シルヴィオ・アンセルミ(しるう゛ぃお・あんせるみ)の言葉に、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)はうなずいた。 シルヴィオはアイシス・ゴーヴィンダ(あいしす・ごーう゛ぃんだ)と共にユグドラシルで白輝精(はっきせい)に関する情報を集めていた。 そこで同じく白輝精と会おうとしていたトライブたちと出会い、情報を交換し、白輝精へ繋がる窓口を見つけたのだが―― 千石 朱鷺(せんごく・とき)が神妙な様子で言う。 「白輝精は容態を悪くなされた女王に付き添っているため、誰とも面会出来ない状況にある、と」 「忍び込んででも、と思ったが警備が厳しくて手が出せねぇ」 トライブが、首後ろを掻きながら苦い口調でこぼす。 「……陛下に、何が?」 そう、アイシスが問いかけた声は小さく震えていた。 それに答えたのは、橘 柚子(たちばな・ゆず)だった。 彼女と安倍 晴明(あべの・せいめい)は女王についての情報を探っていた。 「少し前に、宮殿周辺では、女王が倒られはったという噂がありました。今、白輝精が傍についとるという話と合わせると、どうやらこれは真実味やないかと」 「噂が出たタイミングと白輝精が傍についたってタイミングから鑑みるに、倒れたのは、ついさっきのことだろう」と晴明が繋いだ。 「そん、な……」 アイシスの両手が、くぅと強く握られる。 シルヴィオはアイシスを落ち着かせるように、彼女の肩に軽く手を置き。 「原因は?」 「不明やという話どすが――」 アイシャの件と関わりがあると見て良いだろう。 「大変なのですよぅ」 あい じゃわ(あい・じゃわ)がこぼす。 じゃわと藍澤 黎(あいざわ・れい)は、ユグドラシルに住まう契約者たちがどのように暮らしているかを調べていた。 住民に紛れて聞いた話では、エリュシオンにおいても、特別な力のある契約者たちは重宝され、モンスター退治などを行いながら、それなりの暮らしを送っているとのことだった。 中には、軍隊などの政府職に就いている者も居るという。 ともあれ―― 黎が言う。 「女王の件は、急ぎシャンバラへ伝えた方が良いだろう。その役目、我らが担おう。元よりシャンバラへ戻るつもりで考えていたところだ。貴殿らは後で安全に抜け出してくると良い」