空京

校長室

選択の絆 第一回

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選択の絆 第一回
選択の絆 第一回 選択の絆 第一回

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静香とラズィーヤ、ヴァイシャリーの防衛 4

徐々に契約者側が優勢となっていくが、
そんな中、エルキナに真っ向から勝負を挑む者たちが現れる。

「うちの校長狙うとはいい度胸!
百合園女学院教育実習生、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が相手するわ!」
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が、スレイプニルに跨り、名乗りを上げる。
「一人を多勢で囲むは騎士道にもとるがそうもいかんか。
ヴェロニカ・バルトリ(べろにか・ばるとり)が相手する! 貴公の名は!?」
【女王の騎士】ヴェロニカ・バルトリ(べろにか・ばるとり)が、
ワイルドペガサスを駆り、やはり名乗りを上げる。
「エルキナよ。
ふふ、教育実習生さんにシャンバラの騎士さん」
祥子とヴェロニカに近づいてきた向き直ったエルキナを、
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が、グラビティコントロールで動きを封じようとする。
「女性を傷つけるのは本意ではない……。
おとなしく捕まってくれ!」
アクセルギアで高速移動する牙竜は、
アブソリュート・ゼロを6回連続使用して、氷の壁でエルキナを取り囲む。
「あら、面白い」
エルキナが、剣を振るうと、氷の壁は粉々に砕け散った。
「こんなことして、遊んでいるつもりなの?」
「くっ!」
牙竜が、エルキナの目を見つめ、
エンド・オブ・ウォーズで戦意を喪失させようとする。
しかし、エルキナには全く効果がないようだった。
(彼女は、何かが違う!?
今までの敵とは……!?)
牙竜はそう直感した。

レティ・インジェクターに乗り、
姫宮 みこと(ひめみや・みこと)が、
エルキナへと迫る。
「静香校長を狙った理由、話してもらいますよ!」
(校長を狙った理由のう……。
おおかた最初の女王器とか、
ナラカにいるという古代の超兵器少女とか、そのへんに繋がるのであろうかな)
本能寺 揚羽(ほんのうじ・あげは)が、みことを補佐しつつ、
そんなことを考える。

「さっさと目的を白状しなさい!」
「どんなに強くても多勢に無勢。
さっさと事情を話して降参するのが身のためですよ!」
祥子とみことが畳み掛ける。

「そうね。せっかくだから教えてさしあげましょう」
エルキナが、余裕の笑みを浮かべ、
契約者たちから間を取った。

「私は、光条世界からの使いエルキナ。
さきほども言った通り、
光条世界がこの世界と非常に重要な交渉を行うことになっているの。
あなた方の実力、とくと拝見したわ。
けれど、まだまだのようね」

「交渉だって?
話し合いで解決できるのなら、こんなことをする必要はないはずだ!
エルキナよ、俺は、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)
俺は悲劇を選択したくはないんだ!」
牙竜が、そう呼びかけるが。

「“話し合い”じゃないわ。
私たちの“当然の要求を行うための場”よ。
そのためには、あなた方の交渉の代表の一人になるはずの、
ラズィーヤ・ヴァイシャリーのパートナーを
手元に置いておきたかったんだけど……。
ちょっとお遊びが過ぎたようね」

百合園のイコン部隊によって、
ヴァリュキュリアたちがやられているのを見て、
なおも、エルキナは不敵な笑みを浮かべた。

そこに、ピンク色のドレスが舞った。
「静香校長!?」
みことが、その姿に驚く。
安全な場所に退避したはずの静香がここにいると、
そう、思わせるほどに、その姿は静香に瓜二つであった。

「いい御趣味ですわねぇ。女の子みたいな人追い掛け回して」
それは、
ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)とユニオンリングでユニオンして、
静香に変装した、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)であった。
その攻撃を回避して、
エルキナは、面白そうに笑った。
「あなた、契約者の間でも、有名なんですってね」
エルキナは、アルコリアの正体を見抜いたようだった。
「さあ、どうなのでしょうか。
貴女方は暴力なのでしょう? なら、私も暴力で在りましょう」
アルコリアの格闘に、エルキナが応戦する。

そのまま、剣姫の閃きで連斬を放つアルコリアだが、
エルキナは剣でそれを弾き、
アルコリアの身体を薙ぐ。

アルコリアは、血まみれになっても、
戦いの手をやめようとしない。
「ふふ、ひさしぶりに面白い相手にお会いできました」
「私もよ、うれしいわ」
アルコリアに、エルキナは本気で斬撃を叩き込む。

しかし、そうしているうちに、
イコン部隊によって、女騎士たちが倒されていってしまう。

「あら、本当に、お遊びが過ぎたみたい。
もっとあなた方と遊んでいたかったわ。ふふふ」
アルコリアの耳元にそっと息を吹きかけ、
みぞおちに思い切り拳を叩き込むと、
エルキナは離脱した。
アルコリアは血を吐いて、地面に叩きつけられる。

エルキナと女騎士……ヴァリュキュリアたちは、撤退していく。

「また、近いうちにお会いしましょう」

本物の静香とラズィーヤに一瞥して、
エルキナは空の中に消えてしまう。

「面倒なことになりましたわね」
ラズィーヤが、それを見てつぶやいた。
「ラズィーヤさん、僕のせいで、ヴァイシャリーの街が……」
静香は、責任を感じているようだった。
「こんなふうに、守られるだけじゃなくて、
百合園の校長として、いざというときに皆の役に立つようにしないと……」
そう、静香が決意したように言った。



光のヴァリュキュリアは倒すと光になって消えてしまうため、
捕虜などは残っていないと思われたが。

なぜか、1体だけ、ヴァリュキュリアが捕縛されていた。
龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)が、
武装解除したのちに、
治療を行おうとする。
「女性ですから理由はなんであれ、
傷が残ることがないようにしないといけません」
ヴァリュキュリアは、抵抗しないかわりに、返事もしなかった。
もともと、ほとんど怪我をした様子はなく、
簡単な治療だけで済んだことを、灯は少しだけ安心した。

「話を聞き出すというのは、難しいでしょうね」
みことが、その様子を見て言った。
このまま捕縛して尋問しても、何かを答えてくれそうには思えない。



ヴァイシャリーの街の被害は、契約者たちのおかげで、
最小限ですんだものの、
強大な敵の出現による緊張と、
これから大きな事件が起こるという予感が満ちていた。