空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


戦艦部隊攻撃開始 2

「各戦艦の功績により、敵戦列はボロボロ。補強までかなりの時間がかかるとのこと。
 その間に私たちH部隊は後退しながら、前に突出した敵艦の後方及び側面から攻撃を実行する」
「ふむ、成すべきは成せたか。では手始めに船尾を見せてくれているあの艦を撃墜するとしよう」
 後退しつつ突出している敵の後方及び側面に、テレメーアを筆頭に各戦艦による追撃が行われる。
「これが、逆T字戦法だ。危険を冒しただけと思うな」
 全てはこの時の為、後退時にこそ最大の攻撃を叩き込む。ホレーショは最初からそう考えていた。
「……頃合だな。連絡を頼む」
「了解です。こちらゴスホーク、これより出撃します。……荷電粒子砲はどうしましょうか?」
 搭乗者である柊 真司(ひいらぎ・しんじ)ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)は荷電粒子砲を自分に撃ちこんでもらうことで加速することを考えていた。
 だが、敵の戦列はボロボロ、エピメテウスもゾディアックにかかりきりの今、危険を冒してまで加速するよりも、着実に任務を遂行するほうが無難、と真司は判断し、ヴェルリアにその旨を伝える。
「いや、やめておこう。俺たちはこのまま通常移動で接近し、エピメテウスに攻撃を加える」
「わかりました。ゴスホークからウィスタリアSへ、荷電粒子砲は必要ありません。そのまま後退に専念してください」
『ん、了解。……よかったよ、無茶しなくて……』
 桂輔の安堵のため息を聞いた後、ゴスホークがすさまじいスピードでエピメテウスへと接近する。
「ゾディアックと、他イコンが二機か。このまま突っ切って一太刀いれる」
「はい。周りには敵イコンの姿はありません。思い切りいけます」
 その言葉を聞いたゴスホークが更に加速する。あっという間にエピメテウスを攻撃を範囲内に捕らえる。
 ゴスホークは自慢のスピードを活かし、エピメテウスの右目部分へと直行。
『……敵か!』
「遅い!」
 ゾディアックばかりに気をとられていたエピメテウスはギリギリまでゴスホークの接近に気づかず、それが仇となった。
 妨害を受けることなくエピメテウスの右目へとたどり着いたゴスホークから、ファイナルイコンソードが繰り出される。
『ぐおぅ!?』
 その一撃はエピメテウスの瞼を貫通し、深くとまではいかないが眼球を切り裂く。
『うおおおおおおおっ!!!』
 右目を斬られた恨みか、はたまた右目から伝わる痛みか、エピメテウスが両腕を振り回す。
 それだけなのに、瘴気に汚染された空気は更なる悲鳴を上げ、空には竜巻が起きんばかり。
「……巻き込まれないうちに退散するか」
「わかりました。これよりゴスホークはイーダフェルト護衛に転進します」
 ゴスホークはエピメテウスから離れ、イーダフェルトへと向う。
『……己ぇ、絶対に、許さんぞ』
 エピメテウスの瞳に、恨みが、怒りがこみ上げていた。

 一方、後退を続けるH部隊艦隊。後方からの攻撃はノーリスクで攻撃ができるものの、側面からでは反撃も受ける。
 更に敵イコンとの交戦も余儀なくされ、危険な状態が続いていた。
 そんな最中、一機のイコンが敵艦隊に空いた穴へ目掛けて急速接近していた。蒼きボディを持つイコン、ザーヴィスチ
「私たちはこのまま敵戦艦へ接近、撃墜すると共に、味方戦艦への追撃を阻止します。問題はありませんか?」
「ピーピング・ビーも良好ですわ。準備は万全です」
「了解です。なら、あとはやるだけですね」
 富永 佐那(とみなが・さな)エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)が孤立している敵戦艦に狙いを定め、下方から上昇。
 ウィッチクラフトライフルで推力のある部分を撃ちつつ、敵艦に取り付く。
 大型の刀身を持つ高周波ブレードを抜き、艦下方からファイナルイコンソートで切り刻み、行動不能にする。その後、艦の装甲を蹴り離脱。
 しかし、離脱を見越していた蜂型のイコンがザーヴィスチに追いすがる。が、それも佐那の予想の範囲内。
 ある程度スピードを調節しわざと敵を密集させてから、嵐の儀式により嵐を巻き起こしてまとめて蹴散らし、その隙に別の戦艦へと取り付く。
 これを繰り返し、着実に敵戦艦を沈めつつ、味方部隊の後退時間を稼ぐことに成功する佐那。
 この時間を無駄にしまいと各戦艦も全速力で後退、それを護衛するイコンも大忙しである。
「次から次へと、懲りないやつらだ! いい加減引けっての!」
「本当にそうなってくれたら、うれしいわね。でも伸宏君、二時方向から敵イコンが接近中よ」
「了解! 僚機イコンは援護を続行、あいつは俺が打ち抜く!」
 山口 順子(やまぐち・じゅんこ)の指示に従い、岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)閃電の持つウィッチクラフトライフルを向ってくる敵へと構え間髪入れずに発射する。
 弾丸は当たるものの致命傷にはならず、敵はなおもこちらへと向ってきている。
「くそ、地味に早くて嫌になる! だが、これで終わりだ!」
 続いてバスターライフルを構えて発射。先ほどよりも近い位置に来ていた敵へと見事に当たり、戦闘不能にさせる。
「僚機イコンから、こちらに向ってきているイコンを止められないと通信よ」
「蜂型か! 間に合うか!」
 伸宏が焦り援護に入ろうとする。しかし、それは杞憂に終わった。
 一発の弾丸が敵イコンの頭部を撃ち飛ばし、伸宏の僚機イコンのアサルトライフルの弾雨にその身を晒したのだ。
「狙撃か? 一体誰が……」
 弾が飛んできた方向に伸宏が眼をやると、そこには赤いボディを持つイコンの姿があった。
「支援完了。次の敵へと移りましょう」
「後方から敵イコンが追いすがるように来ています。支援のしがいがありますね」
 狙撃を行ったのはロード・アナイアレイターに乗る香 ローザ(じえん・ろーざ)ベータリア・フォルクング(べーたりあ・ふぉるくんぐ)だった。
「インファント・ユニットを射出します」
 ローザがそう言った後に、ロード・アナイアレイターから大型の遠隔操縦式ビーム砲台が射出され、敵へと向う。
 このビット兵器と、ローザの狙撃支援により敵イコンは戦艦へなかなか攻撃が行えず、攻めあぐねていた。
『こちら閃電だ。さっきは助かった。見事な狙撃だったよ』
「いえ。前線で戦ってくれる方がいるからこその支援です。お互いに力を出し切りましょう」
『おう!』
 こうして伸宏とローザは各戦艦を守るイコンとして活躍し、敵イコンの迎撃をしていった。
 全ての部隊が尽力したおかげでH部隊の全戦艦は無事に後退することを達成。
 彼らの活躍と、防衛ラインを死守していた他の部隊の連携により、ここにきて敵戦艦とイコンの追撃はなりをひそめていた。
 しかしこの後発生する事態は、誰もが予想だにしていなかった。