空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


【3】氷壁遺跡の戦い 1

 一方、影人間たちの防壁ラインを抜けて先に進んだシャンバラ軍は――
 アルティメットクイーンを守るため、行く手を遮ろうと待ちかまえていたグランツ教徒と戦闘に突入していた。



「へっ……こっちが多額の投資までしてやったニルヴァーナを、そう簡単に落とさせてたまるかよ!」
 叫びつつ、国頭 武尊(くにがみ・たける)は光条兵器を持ったグランツ教徒を優先的に狙った。
 『ポイントシフト』――瞬間移動の技でグランツ教徒の目の前に現れた武尊は、そのまま『Pキャンセラー』で相手の能力を封じる。さらに『アブソービンググラブ』と呼ばれる特殊な力を有した手袋を嵌めた手で、グランツ教徒の顔を掴んだ。
「ぐおおおぉぉぉっ――!」
 『アブソービンググラブ』は相手のエネルギーを吸い取る手袋だ。
 徐々にエネルギーを吸い取られるグランツ教徒は叫びをあげ、その間に武尊は『マレフィキウム』を併用して自らのパワーアップを図った。相手の魔力やエネルギーによって一時的に自らの力を底上げする呪法――
「うおおおぉぉぉっ!」
 そのまま、武尊は腕を振り上げてグランツ教徒を投げ飛ばした。
「武尊、やるじゃねえか」
 怪獣化した猫井 又吉(ねこい・またきち)が、二体のアイアンハンターを引き連れて声をかけた。
 獰猛な獣の着ぐるみに姿を変えている。又吉は大剣を振るって近づくグランツ教徒を蹴散らした。
「はっ……お前こそ」
 武尊はこきこきと指の関節を鳴らして、不敵な笑みで言った。
「連中がこっちに見合った対価を用意してるなら話は別だが……今回はそういう状況でもなさそうだな」
「対価ってパンツのことかよ。いっつもそれだな、てめぇは」
 又吉は呆れたように言う。
 が――すかさずその顔が接近していた敵に振り向き、目から怪光線を放った。
「目からビイイィィィムッ!」
 ちゅどおおおぉぉんっと吹き飛ぶグランツ教徒たち。
「…………懐かしいものを見たな」
 武尊は感慨深げにそうつぶやいた。



「悪いがこのまま立ち止まっているわけにはいかない。ここから先に――行かせてもらうぞ!」
 宣言し、真っ先にグランツ教徒たちに立ちむかったのは風森 巽(かぜもり・たつみ)だった。
 巽は拳を地面に叩きつけることによって地震を起こした。それは『震天駭地』と呼ばれる技であり、大地を震わせて敵の足止めを図るものだった。揺らぐ地面に、思わずグランツ教徒たちはどよめきをあげる。
 その間に、ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)が『剣の結界』を放った。
「みんな、この中に入るんだよ!」
 ティアが放ったその結界は、周囲を取り囲む光の剣が中にいる者を守ってくれるというものだった。
 グランツ教徒たちが魔法攻撃を放つと、それを宙に浮かぶ光の剣が相殺する。結界に守られた巽たちは、自由に動くことが出来た。
 しかし――
「……切りがないわね」
 白雪 魔姫(しらゆき・まき)が腹立たしげにうなった。
 グランツ教徒たちの魔法攻撃が次々と撃ち込まれる。結界によってなんとか難を逃れているが、敵も波状攻撃でこちらを追い込もうとしているようだった。
「あ、あのあのっ……なんとかする方法はないでしょうか……?」
 エリスフィア・ホワイトスノウ(えりすふぃあ・ほわいとすのう)があたふたとしながら言う。
 魔姫はこの、自らを守る為にここまでついてきた機晶姫を見て、うーんと悩ましげな声を出した。
「そうねぇ……なんとか――」
「出来ないことはないと思うよ」
「……!」
 魔姫ははっとなった。
 彼女の声に続けたのは佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)だった。彼は冷静な目でグランツ教徒たちを眺めやりながら、隣の佐々木 八雲(ささき・やくも)にもちらりと目をやった。
「ねえ、兄さん」
「――ああ」
 八雲は寡黙にうなずいた。
「相手がこちらを執拗に狙ってくるということは、それだけ敵もこちらの動きに騙されやすいということだ。僕と弥十郎なら、相手を引きつけられる。そうしたら一気に――」
「その作戦、あたいらも乗ったぜ」
 言ったのは、狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)だった。
 彼女はにやりと笑いながら、親指を立てて自らを誇示するように指していた。
「パートナーのグレアムが、とっくに罠を仕掛けてある。あとはそこまで誘導するだけだ。まあ、でも、それだけじゃあ敵さんを全員ぶっ潰すのは不可能だろうけどな。せいぜい……」
「……半数、仕留められれば良いというところか」
 八雲が乱世に続くように言った。乱世もこくりとうなずいた。
「そういうこった」
「大丈夫。残りはその罠のある場所で、足止めすればいい。だけど、他のグランツ教徒たちは……」
 弥十郎が巽たちのほうを見る。巽はこくりとうなずいた。
「悪いけど、任せておかないとねぇ」
「そういうことだな」
 弟の苦笑にうなずき、八雲は静かに首を動かした。
 敵の間には、こちらの味方であった者もいる。恐らく、敵も味方もなく、今回はアルティメットクイーンに利があると踏んで与した者たちだろう。そちらの相手も大変だが、いまは他の仲間に任せるしかない。
「よし――行くぞ!」
 八雲の合図に、乱世たちはうなずいた。