空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


イーダフェルト、防衛 2

「敵の増援が来ましたか……圧巻、そう言わざるを得ない量ね」
 【新星】メイデンの指揮を執り行う香取 翔子(かとり・しょうこ)が目を細めつつ呟く。
 その後方ではクレア・セイクリッド(くれあ・せいくりっど)が集められた様々な情報を分析し、要点をまとめ各部隊へ伝達するための準備をしている。
「状況を教えて」
「敵部隊の増援を確認。それだけでなく、後方には無数の敵戦艦やイコンの姿を確認。現在は個々で動くイコンたちが協力しあい戦線を維持してる。
 そのイコンたちの援護をしつつ、これより新星の各部隊、総指揮官、及び新星以外の各部隊責任者へ情報の共有を行うのだ」
「そう、ありがとう。情報共有と同時に新星の各部隊へ出撃命令をしなきゃね」
「号令は任せたよ!」
 手元は休ませずに笑顔で翔子を見上げるクレア。それに対して翔子はやれやれと言ったように首を横に振りつつ、自分の部隊へと通信を実行。
「【新星】メイデンの指揮官、香取翔子です。これより我らも本格的に動きます。
 ラントシュテーム・ネーダーラント、ホーエンシュタウフェン、ワロニエン。
 三つの艦艇を中心に戦力を三分し、各方面への防衛ラインを形成、これを維持してください。
 積極的な攻勢は控え、迎撃戦闘で向かい来る敵を撃墜してください。以上です』
 指揮官の翔子の命令を聞いた新星の各部隊が移動を開始する。
「まずはこの艦、ラントシュテーム・ネーダーラントが防衛をします。
 イコン部隊は敵の索敵、戦艦の護衛、敵の迎撃を行います。続いて、戦艦による攻撃を行います」
 翔子の号令に乗艦しているメンバー全員が頷く。
「命令通りだ。突出はせず、相手を叩く」
『こちらニーベルンゲン、了解した。今の所、特機らしき存在は見られない。蜂、蜘蛛型イコンのみだ』
 相沢 洋(あいざわ・ひろし)の通信にギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)が返事をする。敵イコンの索敵を行っているギュンターだが、指揮官機などの姿は見受けられない。
「ふむ……列を成す、陣を組む、ある程度の知識はあるようだが、それを統率するものはいないということか」
 洋が考察しつつ、敵を待ち受ける。もうすぐそこの防衛ライン間近まで敵は迫っている。だが洋は慌てない。
「洋孝、ビッグバンブラストの準備はいいか?」
「現状、出来ることは終わってるって! あとは実際撃つときに弾道の計算とか微調整して、派手な花火を咲かせるだけさ!」
 右手の親指をビッと立たせて自信満々にそう伝える相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)
「了解した。……そろそろ頃合か」
『こちらライヒスフューラーケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)だ。先にいかせてもらう』
 通信が入った後、巫女のような出で立ちのイコンとプラヴァー数機が先行する。
「私たちはあくまで中距離から支援が目的よ。忘れないでよ?」
「わかっている、が……出来れば、オレもドッグファイトに加わりたいんだが、ダメか?」
「ダメに決まってるでしょ。やることやったら後は敵との距離を取って、中距離支援に徹して」
 ケーニッヒの申し出を軽くいなす八上 麻衣(やがみ・まい)。少しだけ意気消沈するケーニッヒだったが、すぐに気を入れなおし敵イコンへと向き直る。
「仕方ない。このもやもやした気持ち、愛銃に乗せて撃ち抜くとしよう」
 そんなケーニッヒの傍で敵戦艦の探知・監視を行うヨーゼフ・ケラー(よーぜふ・けらー)エリス・メリベート(えりす・めりべーと)
「……」
 ヨーゼフは静かに戦場を見渡す。レーダーだけでは捉えられない実際の戦場に、見落としがないように入念に。
「……」
 だが、ヨーゼフの視界には不振な動きをする敵艦は見当たらない。
 前方はもちろん、側面及び後方にも目を光らせるがその方向に敵戦艦はいない。数による正面突破を目論んでいるのだろうか。
「下手な小細工はなし、正面からの攻撃を厚くすることでこちらの戦力を削りつつ、消耗させようということでしょうか」
 火器管制を担当するエリスが現在の状況から導き出される推測をヨーゼフに伝える。
「……こちらノルト。敵戦艦に怪しい動きなし、以上」
『ん、了解だ。情報共有、感謝する』
 必要な情報だけをケーニッヒに伝え、早々に通信を切るヨーゼフ。エリスはケーニッヒの砲撃開始に備える。
「あちらも準備はよさそうだな。それでは派手に行くとしよう。これ以上寄ってもらっては困るのでな!」
 ライヒスフューラーがライフルを構え、防衛ライン付近にいる敵イコンを狙撃。見事命中し、敵イコンの右腕が弾け飛ぶ。
 その攻撃に合わせて僚機イコン、更にプラズマキャノンを構えていたノルトも攻撃に加わる。
 敵イコン部隊へと浴びせられる弾雨は瞬く間に敵を撃ち貫き煙をあげさせる。
「よし、後退する」
 僚機イコンに引き撃ちさせながらライヒスフューラーとノルトが後退、それを追いかけるように敵イコンが前進。
「来たか。出るぞ!」
「りょうかーい!」
 それを見た洋が前線へ上がる。併せてギュンターも前線へ。
「依然特機らしき機体は見えん。が、油断はできまい」
「相手の数だって十分脅威だからな! こりゃあんまり出し惜しみもよくないぜ!」
 サミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)がそう言うと、ギュンターも無言で頷く。出し惜しみをしてやられては意味がない。
「しかしまだだぜ。今じゃねぇ」
 サミュエルは絶好の機会を推し量っていた。そのきっかけを、洋が乗るストーク拠点強襲攻撃改修型が作る。
「先の砲撃に釣られた敵多数。洋孝、準備はいいか」
「……よし、いけるよ! 後はじーちゃんがトリガーを引くだけだ!」
「ならば使わせてもらおう。……ここから先へはいかせん! 教導団、万歳!」
 ライヒスフューラーたちに殺到する敵のルートを予測し、算出した地点へとビッグバンブラストを射出。
 その予測は見事に的中、割り出した地点にて敵イコンと接触。後続のイコンを巻き込み大爆発を起こす。
 多くの敵イコンを撃墜、ないしはダメージを負わせることに成功。更にこの攻撃を見て、サミュエルが動く。
「敵が止まった、しかも負傷している今がチャンスだ。覚醒して一気に叩けるぜ!」
「わかった!」
 サミュエルの言葉に間髪入れず反応し、覚醒するギュンター。
 迷うことなく足が止まった敵を急襲。新型ビームサーベルにて一太刀、また一太刀、更に一太刀、と矢継ぎ早に相手を斬る。
 左腕、右腕、頭部など敵イコンのパーツが空中を舞い、戦闘不能となっていく。
 覚醒したニーベルゲンを援護するため、惜しみない弾幕を敵戦列へ見舞うライヒスフューラーとノルト。
「私たちも負けて入られないな。荷電粒子砲とウィッチクラフトライフルでの攻撃を始めるぞ!」
「合点だ!」
 他三機の攻勢に負けられないと息巻く洋と、武器の使用準備に即応する洋考。こうして流れを手にするイーダフェルト護衛艦隊。
 だがそれを握りつぶしてしまおうとするかの如く、敵の数は増していく。手にした流れも一瞬の内に水の泡と化すことも考えられた。