空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


イーダフェルト、防衛 3

「だからこそ、俺たちが支援するってね! さあ、数には数で対抗だ!」
「まあ大型飛空艇が四隻あっても全然足りないんだけどね」
 三つに分けられた母艦の一つであるホーエンシュタウフェンに乗艦するハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)鶴 陽子(つる・ようこ)
 敵との交戦に入ったラントシュテーム・ネーダーラントを守るべく、イコン部隊と連携して前方に布陣。
「こちらホーエンシュタウフェン、自分の身は自分で守る。だからそちらはそちらで思いっきりやってくれ!」
『こちらLSSAH、了解した』
トーテンコップ、了解』
 自分を母艦とするイコン二機に心配はいらないと通信を行うハインリヒ。
「んじゃレーダーは頼んだぜ」
「ええ、全力で探知に努めるわ。とは入っても、見る限り真正面から攻め込んでくる奴しかいないんだけど」
 あくまでも真正面からしか来ない敵に不気味さを覚える陽子。だが、深く考え込んでいる暇はない。
「なら僚機戦艦、及びホーエンシュタウフェンはこのまま待機。前方のは任せるとしよう」

「さて、久々の前線か。腕が鈍っていないといいが」
「だからこそわたくしがいますわ。探知はおまかせを」
 レーダーとにらみ合いをしながらそう答える島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)
「心強いな。……にしても、本当に正面からしか来ないのだな。回り込もうとするイコン機もいないし、何か考えているのか、何も考えていないのか」
 後方で作戦を立て続けていた癖なのか、考え込もうとする自分に気づき頭を振るクレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)
「だめだな。このようなことでは、部下に示しがつかん。……やらねばな」
 僚機イコン二機と、雇った傭兵団が所持していたイコン二機、計四機を従えて相手を迎撃する。
 それに加え、トーテンコップからの支援砲撃もある。下手に考え込んでいては味方の支援を無駄にもし、犬死する可能性もある。
「よし、行くとしよう。各機へ、近接戦闘は私がする。隙を見つけ次第、敵機へ攻撃を行ってくれ」
 それだけ言い、クレーメックはLSSAHを動かす。前進している間もヴァルナによる索敵が続けられていた。
 接敵の数秒前に四機のイコンが立ち止まり援護射撃を行い、相手の動きを牽制する。対して敵機は散開、上下左右と三次元的な動きで翻弄。
 しかしクレーメックはその動きに惑わされず、上昇した敵イコンへ接近、懐に潜り込むとそのままタックルを仕掛け、相手の動きを止める。
 それを振りほどこうとする一機、その一機を助けるために三機がLSSAHへ群がる。
「敵四機、引き付け完了ですわ」
「わかった。離脱する」
 ヴァルナの声を聞いたクレーメックが瞬時に捕まえていた敵イコンを下方向へと投げ飛ばし、自身は更に上昇。
 投げられた敵イコンは、他のイコンに受け止められ体勢を立て直す。しかし、そこは既に集中砲火の中心地点。
 それを見たマーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)三田 アム(みた・あむ)が迅速に照準を敵イコンへと定める。
「他イコン機と共闘、僚機イコンも射撃を開始しろ。中心は自分が叩く」
「わかった。僚機へ、敵が逃げないよう敵の周りにアサルトライフルを乱射して。火力支援ではない砲撃支援のやり方、見せてあげて」
 その声に従うようにしてアサルトライフルから射出された弾が円を描き、逃げ場を無くす。
 そこへクレーメックに従う四機とトーテンコップによるプラズマキャノンが敵イコンを飲み込み、瓦解させる。
「……させん」
 逃げ場を無くした敵イコンへの攻撃を他のイコンに任せて、トーテンコップはLSSAHに近づく敵機へマシンガンの弾をばら撒く。
「後ろに敵です。友軍機が足止め、ダメージを蓄積している今が好機ですわ」
「了解。足が止まっている相手ならば、どうにでもできよう」
 そう言ってクレーメックはLSSAHに機晶ブレードを握らせて猛進。加速したまま敵右肩部から左腰部分まで大きく斬りつける。
 両断こそ出来ないものの、行動停止させるには十分な威力の一撃に敵イコンはうつむき、沈む。
「悪くはないな」
「……! 上空に反応! 敵イコンの急襲ですわ」
「……来たか。後退しよう」

「上空に反応あり! 敵イコンの反応多数! 私はジーベック少佐とクロッシュナー中尉に伝達するから、そっちは迎撃準備を!」
「よっしゃ任せろ! 僚機戦艦へ通達! リニアカタパルトをばら撒け! 爆弾でお出迎えだ!」
 命令を受けた僚機戦艦四機全てがリニアカタパルトを使用し、爆弾をばら撒く。近づこうとしてくる敵イコンの側面、前面で爆発させ有効打を与える。
 だが、ばら撒ききれなかった箇所から抜け出た敵イコンが尚も接近してくる。
「くそ、左舷弾幕薄いぞ、何やってんの!?」
「言ってる場合!?」
「……スマン、一度言って見たかったんだ。ともかくオフェンスが戻ってくるまで頑張りましょうかね、ディフェンスらしく!」
 他の僚機戦艦たちに爆弾のばら撒きを継続させる。しかし、爆発の網目を掻い潜り敵イコンは近づいてくる。
「ドンピシャだ! 落ちなっ!」
 だが、爆弾は攻撃のためだけではなかった。相手の動きを抑制するための手段でもあったのだ。
 あえて『抜けられる場所』を作り、そこに狙いを定めて攻撃。こうすることで命中率がさほどでもない要塞砲でも当たると寸法だ。
 ハインリヒの考えた即興の策にまんまとかかった敵イコン一機は撃墜。残りは二機だが。
 こちらにかなり近づいてきているため、機動力のないホーエンシュタウフェンでは引き離すのは難しい。
「あと少しだったな」
 と、前線から舞い戻ってきたLSSAHがホーエンシュタウフェンへ落ちるように接近する敵イコンを捉え、横から一閃する。
 その攻撃を受けた相手は思わず足を止める。それがいけなかった。
「撃て」
 停止する、つまりは的となった敵イコン二機へ、トーテンコップ等による集中砲火。強行でダメージを受けていた敵イコンはあっけなく沈んだ。
 とは言ってもホーエンシュタウフェンは目と鼻の先程度、あと少し遅れていたらまずかったかもしれない。
 まだまだ油断のならない状況が続きそうだ。