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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
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リアクション

 一方、セクシー担当(自称)のレベッカの前に、ふいに人影が現れる。
「大丈夫ですかな、お嬢さん」
「あなたは…クロ、オニさん…?」
「こんな吉野の山奥で、金髪に青い眼の方に出逢えるなんて。それにタンクトップにホットパンツ。足の長さも他の日本人とは比べものにはなりませんな〜ああそれに白くて抜けるような肌…そちらのお嬢さんも銀の髪に赤い瞳! エキゾチックなムード満点ですね…このような山に鬼なんぞでいると、あなた方のように異国の方と直接お会いすることはなかなか難しく…ああ、鬼をやっていてよかったです…鬼ごっこ最高でございますなあ!」
 心底うっとりしたように、黒鬼が呟く。
「うわ、こいつ、マジ、外人好き!?」
 一同(除く:凍った天狗に夢中のオーコ)が黒鬼の趣向に軽く引くが、レベッカがニッコリと作り笑いを浮かべて黒鬼に迫った。
「クロオニさん、ワタシ、この糸に絡まったまんまナノ。とても痛いワ。ほどいて下さらないかしら」
 超がつくほどのミニホットパンツからすらりと伸びた足を、レベッカがくるっと組み替えると、黒鬼はゴクリ、と唾を飲み込む。その姿を見て、アリシアやミツ子たちは「ホンモノだ…」と確信する。
「で、では私が解いて差し上げましょう…」
 鼻の下を伸ばした黒鬼が、そっとレベッカの足に近づいてくる。
「もらいましたよ!!」
 次の瞬間、黒鬼とレベッカのやりとりを楽しんでいたミツ子が隠れ身を使ったまま、黒鬼にタッチする。
「やったネ! ミツ子! …ってあれ??」
 ミツ子がタッチしたにもかかわらず、黒鬼はドロンと音を立てて、姿を消してしまう。
「どういうことなのでしょう?」
「これは、影分身と言うものでしょうか?」
 ミツ子と、固まってしまった天狗の子に飽きたのか、他の精霊を探していたオーコも近寄って来る。
「黒鬼ってエロんじゃ?」
「あの影分身、充分スケベでいやらしくて、最悪でしたわよ!? 影分身は『個性が薄い』とシナリオガイドでも書いてありましたわ!」
そこにどこからか、黒鬼の高笑いが聞こえる。
「ホンモノはこちらですよ、お嬢さん方!」
「ど、どこにいるの?」
山の中を見渡しても、黒鬼本体は見つからない。
「私は根っからのスケベェでございましてね〜いやはやみなさんと色々、楽しみたかったのでございまして、ですからこの鬼ごっこをする前に、それはそれは努力を重ねて、影分身を操る方法を習得いたしました。…他の赤鬼、黄鬼はともかく、この吉野山は今や私と私の分身たちの大遊技場なのでございます…! 黒鬼オンステージでございます!!」
「うわ、なんかヤバイ感じネ! ホンモノのヘンタイって奴じゃないの、アナタ!」
 レベッカが眉を顰めて呟くと、しばらく沈黙が続いた後、黒鬼の独り言が聞こえてくる。
「…そこまで言われると、非常にこう、胸がちくちく痛いような気がしてまいります。…まあ、皆様は私の影分身をタッチしたということで…ご満足いただきましょう。では」
 ざざああっと音がすると、黒鬼の気配は消えてしまう。
「キー! くやしいデス!」


「なんかもーねぇ、修学旅行でまで修行とか…ばっかじゃないの? 山の中で走りまわるなんて絶対にイヤ! あたしは、ここでお菓子食べてるからとっとと終らせてねー」
パートナーの黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)に全てを任せて、リリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)は紅葉の下で呑気にお菓子を食べていた。
「それにしても、一人で紅葉見物も飽きてきたなあ〜にゃん丸、なにしてるんだろう。さっさと黒鬼の一匹や二匹、捕まえてきてごらんなさいってのよ」
「うわぁぁぁっ!」
リリィが毒づいたその時だった!
森の奥から、にゃん丸の叫び声が響き渡る!
「にゃん丸!?」身を案じたリリィがびっくりして、森の奥へと駆けていく。なんだかんだ言ってもリリィはにゃん丸のことを大事に思っているのだ。
「どうしたの、にゃん丸! 拾い食いでもしたの? ねえ返事をして! って、きゃぁぁぁっ!!」
リリィが枯れ葉の上に足をのせた瞬間、その細い足首に縄がかかり、リリィを逆さ宙づりにしてしまったのだ! リリィは足をロープに吊り上げられ真っ逆さま!
「きゃあああ! パンツ、パンツが見えちゃううー!!」
リリィは罠にかかったことよりも、おパンツが見えないようにと必死になっていた。両手で前後ろを防ぎ、スカートが重力に従ってめくれさがるのをなんとか防ごうとする。
「おら、にゃん丸、お前かお前だな、こういうことをするのは!」
キレるリリィ。
「そのとおり…リリィ、今日はどんなパンツだ? 黒のレースか!それとも熊さんパンツ? まさか…」
「こ、こ、この発情忍者が! アホ!」
  一方のにゃん丸はと言うと、自分の気配を悟られないために必死で隠れていたのだ。遠くの黒鬼の罠にロープと携帯を設置、自分の悲鳴が聞こえるように細工し、尚且つ隠れ身で落ち葉の中に身を潜めていた。
「カンナ様のオデコ、オデコ、デコデコ、つるつるのオデコ…」
 無心になる呪文、「御神楽環菜のオデコ」を妄想しつつ! そして、リリィとのやりとりを聞いていた黒鬼が必ずやってくるはず! そう確信し、罠を張っていたのだ! さすがは忍者!
 そこに人の気配がやってくる。すわ、黒鬼か! とにゃん丸が身を固くしたその時!
「きゃっほー! パンツ丸見えじゃん! …って、なんだーリリィかよ! しかもヒヨコ柄の毛糸のパンツだぜ。まだ、毛糸のパンツには時期が早いんじゃないのか? って、あれー!!」
 江戸娘のような叫び声を上げて、その人物はリリィと同じようにロープで真っ逆さまにつり上げられる。
「なんかイヤな予感がする…」
 にゃん丸が仕掛けた罠の方へ視線をやると、黒鬼を捕獲するために用意したトラップに、おもいっきり、山葉 涼司が引っかかっていたのだ!
「山葉 涼司! やっぱりてめぇか!!」
「あ! にゃん丸! てめーがこの罠しかけた張本人か!!」
 ぶらんぶらんと逆さまになったまま、涼司が叫ぶ。
「ああ、そうだよ、俺が苦労して仕掛けた罠に何故かかる! お前NPCとしての自覚たりないんじゃないのか! その賢げなメガネは伊達か!」
「なにをー!? お前こそ、なんだにゃん丸って! 『伊賀のにゃん丸』か!」
「古いぞ!」
「うるっさい! あったま空っぽの男同士がなに言い合いしてんのよ! とっとと降ろしなさいよ! にゃん丸!!」
 リリィの怒声に、涼司もにゃん丸もしゅん、と大人しくなり、にゃん丸はガタガタ震えながら、リリィを罠からそっと下ろしにかかると、不意に笑い声が響き渡った。
「あははは…とても楽しいものを見せていただきました…」
「もしかして、その声は黒鬼か!?」
「その通りです。おパンツ作戦とはよく考えたモノですね。いやあ、私もうっかりひっかかるところでした。しかし、私は女性の下着に関しては、純白の下着派でして、残念ながらヒヨコ柄の毛糸のパンツでは、萌えが足りませんでした。その上、そこのメガネくんが罠にひっかかってくれたので、一連の騒動、楽しく見物させていただきましたよ…ふふふふふ…」
「ヒヨコ柄の毛糸のパンツのどこが悪いのよ〜!!」
 リリィの叫びが虚しく吉野の山に響き渡る。しかし、声はすれども姿は見えず。黒鬼はそのまま気配を消してしまったようだった。
「ちょっとにゃん丸…。判ってると思うけど、絶対にぶっ殺す!! それと、涼司もパンツみたからにゃあ、生かしておけないわねえ!!」
「す、すみません…リリィさん…」
「あの、できましたら、命に関わらない程度でお願いします…」
 一陣の風が通りすぎる。にゃん丸と涼司は、この寒さが風のせいだけではないことをしっていた。

 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、吉野の山でドラゴンアーツとヒロイックアサルトとパワーブレスを使い、大暴れしていた。
「罠も影分身も望むところ、全部乗り越えて追い詰めてみせるわよ! ルナには大人しくしていて欲しいんだけどな…」
パートナーの天夜見 ルナミネス(あまよみ・るなみねす)は運動音痴ゆえ、手当たり次第、暴れたおしていく。これでは鬼ごっこにはならない。
「これ、お前ら! そのように吉野山を荒らしてはいかん!!」
 暴れまくるリカインとルナの前に錫杖をついた人物が立ちはだかると、暴れるだけ暴れている二人をその杖の先でどん!どん!と突いて止めてしまう。
「きゃあ!」
「これでは鬼ごっこにはならんぞ〜おまえたち〜吉野山も『紀伊山地の霊場と参詣道』としてユネスコの世界遺産に登録されておるのじゃ! いくら運動音痴とはいえ、手当たり次第に壊してはいかんぞ」
「あいてててて…いきなりヒドイじゃないですか」
「ヒドイもなにも、お前たちが世界遺産で暴れおるんじゃから、ワシがわざわざでてきたのじゃぞ。感謝してほしいな」
 リカインは錫杖を持った人物の姿を再度、じっとみつめると、はっと思い当たったことがあるようで、急にしおらしい態度になる。
「す、すみません…ほら、ルナも謝って!」
「申し訳ございません。とはいえ、黒鬼探しに夢中になっていたので、このような始末でございます。従いまして悪気はございませんで…」
「口撃はいいから! この方は、私の勘が正しければただならぬお人よ!」
 リカインはルナの頭をぐっと押さえつけると、錫杖を持った人物はにこりと二人にほほえみかけた。

「うふふ、マナさんってば面白いですね」
 アリア・エイル(ありあ・えいる)はマナとお喋りをしながら、如意輪寺への山道を散策していた。燃えさかるような紅葉が、少女たちの美しさを際立たせていた。
「ええ、そこでね、脳みそ筋肉男を踏んで、落とし穴を飛び越えたのよ」
 マナはパートナーにした仕打ちを、にこやかにアリアに話している。
「マナって割とパートナーにはひどいんだね…」
「あらいけない?」
「ううん、そういうところ、素敵じゃん! ところで玉藻 前(たまもの・まえ)さんは男の扱いが上手そうだね」
 リリィ・マグダレン(りりぃ・まぐだれん)も、けだるげに会話に参加している。
「我が妲己と呼ばれていた頃には、一国を傾かせたもの…そうだな、黒鬼も我の美貌ならたぶらかすことができるかもしれぬ」
「まあ、玉藻 前さんたら。では黒鬼さんを呼んでみましょうよ」
「おお、そうじゃそうじゃ。鬼さんこちら、手の鳴る方へ…」
「…お呼びかな?」
 一瞬の間をおいたのち、黒鬼が本当に姿を現したのだった。
(マジ、アホだ、こいつ…)
 全員が頭のなかで思ったが、それはそれ。女子独特の作り笑いで、黒鬼をたぶらかせるべく、にっこりとほほえみかける。
「まあ! 本当に来て下さったのね! 黒鬼さん! 黒鬼さんも一緒にお話ししませんか? 吉野のお山についてなら、知性派の黒鬼さんなら誰より詳しいでしょうし、私たちと一緒にお寺へ参りましょうよ」
アリアが満面の笑みでほほえみかけると、次にリリィもけだるげな色気で黒鬼に近づくと、制服のボタンを胸の谷間が見えるぎりぎりまで外して見せる。
「ねえねえ、黒鬼さん〜。あたし、疲れちゃったぁ〜あっつうぃ〜」
「黒鬼さぁん〜私ね、早く山を下りないとね、ベアが死んじゃうかもしれないのぅ。あ、ベアってね、私のペットなの〜だから、『だらすけ丸』、譲って貰えないかなあ」
 マナは目尻にキラッと涙を浮かべて、黒鬼に向かって小首をかしげて見せた。
「うううん〜」