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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
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 栂羽 りを(つがはね・りお)サバト・ネビュラスタ(さばと・ねびゅらすた)は元気いっぱい! に精霊タッチに励んでいた。
「鬼ごっこかぁ、ふっふっふっ! 足の速さならたとえ鬼や天狗が相手だろうと負けないんだからね☆絶対に勝負に勝ってごちそうゲットしてやるんだから覚悟しろーっ!!…ってあれ? ここってさっきも通ったような??? …ま、いいや! どんどん捕まえるぞー!」
「修学旅行ねー、団体行動って結構ダリィなって思ってたが…なんだか面白そうなことになってくれたじゃねぇか!、っておい!りをの奴超ド級方向音痴のくせして1人で突っ走ってんじゃねええ馬鹿野郎!! 結局俺がフォローすることになるのかよ、畜生! だからそっちは行き止まりだってーの!!」
 サバトの声にも、りをは耳を貸さず、暴走し、つぎつぎに精霊や天狗たちを見つけては、どんどんとタッチを繰り返していく。
「これだけ運動してれば、夜のご飯も美味しくなること間違いなし! やほー! こだまも私を応援してくれてるわ! いえっす!」
「だから、俺にフォローさせるなってば!」
 森の中を飛び回る、元気な二人であった。


 同じく、張り切る生徒がここにもいた。志位 大地(しい・だいち)。その人である。
 甚平と足袋、ある意味、高野山にぴったりのいでたちにて「精霊たちをタッチしまくって撃墜王」を目指していた。
「さて、楽しみますか…」
 大地が精霊たちとの追いかけっこを楽しむつもりなのが伝わったのか、天狗たちが大量襲来してくる。
「小僧、覚悟せい!」
「おっと、追いかけられるのはあなたたちのほうでしょう?」
 スキルの鬼眼を使うと、さしもの天狗も一瞬、怯んでしまう。
 そこに大地は、トラッパーをかけ、天狗たちを大量に捕獲したのだ。
「はい、タッチ、タッチタッチ…」
 トラッパーにかかって動けない天狗たちを、次々に軽く大地はタッチしていく。
「さて、これでかなりの天狗さんたちを凍らせることができましたね。…なかなか、こういう原始的な遊びも楽しいものです」

 ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)は、金剛峯寺にお参りをしていた。鬼を横目におまいりをすることによって挑発をし、こちらに注意を引き付けておく手はずで、フェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)は赤鬼を捕まえる算段だったのだ。
しかし、赤鬼はウェルの姿を見て
「ううむ、立派な奴だ」
 と納得してしまい、挑発に乗るどころか、木々の上から二人にささやかながら、『高野山散策マップ』をひらり、ときちんと2部、落としてよこしたのだった。
「…作戦は失敗したようだぜ」
 ウェイルの言葉に、フェリシアもうーんと唸るが
「まあ、良いじゃない。『散策マップ』使えそう! 私、奥の院に行ってみたいな〜! 『みろく石』に触ってみたいし!」


 セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)は赤鬼退治と意気込んできたが、高野山の大きさにぐったりしていた。
「金剛峯寺につくまでに、疲れてしまうのじゃ…頭脳派じゃからな、ゆっくりと休憩をいれつつ参ろう」
 そのセシリアの前を、精霊や天狗がさささっと駆け抜ける。
「おお! 精霊たちではないか! うぬう、捕らえて見せようぞ!」
 セシリアは俄然、立ち上がって追いかけるが、天狗におしりフリフリっとされた挙げ句、
「捕まえられるものなら、捕まえてみるが良い。お疲れのようじゃがな…」
 捨て台詞まで吐かれてしまう。
「なんじゃとー! ええい、タッチしてみせるぞ! 意地でも!」
 頭に血が昇ったセシリアは氷術を使うが、天狗もさるもの。すすうっと次から次へとセシリアの攻撃をかわしてしまう。
「そのようなザマでは山の幸はやれんぞ、ほほほほほ〜!」
「それだけはいやじゃー!!」
 想像していた以上に、運動をさせられているセシリアであった。

 藍澤 黎(あいざわ・れい)はふうっとため息をついていた。
「なんと広い結界を……荒っぽい歓迎だな」
 フィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)が禁猟区を使い、ヴァルフレード・イズルノシア(う゛ぁるふれーど・いずるのしあ)は女王の加護をフルに駆使し、途中に別の天狗や、精霊と鉢合わせしないようにローグの隠れ身を利用して移動し、赤鬼を探していたのだ。
「ん? あれは赤鬼?」
 金剛峯寺は壇上伽藍の側にトラジマのデカパンを身につけた人物を発見すると、禁猟区をはっていたフィルラントが赤鬼にむかっていきなり声をかけた。
「うぃーっす!」
「うぃ、うぃーっす!」
「微妙なところだな! 赤鬼本人かどうか、見分けつかんわ!」
「鬼さん、こちらだ!」
「おっにさん、いっしょに、あっそびっましょー、だよっ♪」
 黎とエディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)が陽動作戦にでると、次の瞬間、赤鬼が黎に向かってダッシュしてくる。
「全く、相手の予定も聞かんと、いきなりしかけてきよって! 弘法大師はんか役行者さま辺りの罰が当たるで!」
 赤鬼は無言で、フィルラントの口撃を無視し、そのままフィルラントに突っ込んでこようとする。
「エディラ、こいつ影分身かも…!」
「大丈夫だよ、フィルラにーちゃん!」
 エディラントはSP回復を黎に施すとそのままランスで、フィルラントをかばおうとする。その瞬間だった。伏兵たる黎が赤鬼の気をそらそうとタッチしかけたのを避けた赤鬼は、更に伏兵として潜んでいたさらさら直毛ボブカット、態度だけはばっちり大人のヴァルフレード・イズルノシアにタッチされてしまったのだ。
「……赤鬼を、タッチしましたよ」
「さすがです、ヴァルフ!」
 黎も賞賛の言葉を送る。
 しかし、次の瞬間、赤鬼はドロンっと煙になって消えてしまう。
「せっかくの陽動作戦、うまくいったが、影分身だったようだな…」
「残念やわ! それにしても『うぃーっす』作戦、上手くいったつもりやってんけどなあ」
「がっかりせずともよい、フィルラ。恐らく影分身もチョーさんになりきっていたのであろう」
「れいちゃん! チョーさんってだれ!?」
「エディラ、それ、1980年代頃から2000年代初頭に活躍したコメディアンのことです」
 フィルラントが黎に続く。
「あんな、舞台から『ウィーっす!』ってそのチョーさんが声をかけたらな、客席からも『ウィーっす』と返事が返ってきよんねん。そんでな『声が小さい!』って怒られるねん」
「…へ〜! オレはじめて知った!」
「私もです…」
 にっこにことするエディラントの側で、ぼそり、とヴァルフレードも呟いた。


 金剛峯寺は不動院で、アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は大声であらぬ下品な言葉を叫んでいた。
「おまえのかあちゃん、(ピー:注:放送禁止用語)!」
「お前の(ピー)は(ピー)で(ピーピーピー)だあ!」
 高月 芳樹(たかつき・よしき)菅野 葉月(すがの・はづき)は二人のあまりの下品さに、赤鬼をおびき寄せる作戦とは言え、少々、顔が赤くなっている。
「このような聖地であのような下品な言葉…いいんだろうか」
 芳樹のセリフに、葉月はあきらめ顔で応える。
「…結界が張られていますので、よしとしましょう…神々も許して下さると思うことにしましょう…」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)ラズー・フレッカ(らずー・ふれっか)も「おもしろそう…」とばかりに、放送禁止用語を連発してみる。真人はせっかくの見所満載の高野山を楽しみたくて、この鬼ごっこを終わらせたいのだ。
「(ピー)が(ピー)で×××!! …恥ずかしいですが、意外と楽しいですね…」
 真人が叫ぶのを、パートナーのセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)は耳を塞いで聞いていないふりをしている。
「…割と楽しいぞ、匠!」
 ラズーの言葉に、パートナーの柳生 匠(やぎゅう・たくみ)は少々、眉を顰めて知らぬふりをしている。
「だれの(ピー)が(ピー)で×××!! だとというんじゃあ!」
「でたああ! 赤鬼!!」
「お前のかあちゃん、でーべーそ!! っていったんだよーん」
 体力担当のセルファは赤鬼を追い詰めるべく、バーストダッシュで追いかけるが、赤鬼はさっと身をかわして、金剛峯寺のほうへと走っていく。
「そっちはダメだぜ! 赤鬼さん!」
 葉月 ショウ(はづき・しょう)も光精の指輪を使い、赤鬼のいる方に向かわせ注意を引くと、氷術を撃つ。しかし、赤鬼もそれを上手く交わして、どんどんと逃げていく。
 ガッシュ・エルフィード(がっしゅ・えるふぃーど)は赤鬼が他の方向へと逃げようとするのを回り込み、上手く金剛峯寺の方へと誘導していく。
 それをミアやアメリア、真人たちが追いかける。さりげなく、赤鬼が蓮華院や、大塔へ行こうとすると、ラズーや匠が道を阻止するように回り込むため、赤鬼は仕方なく六時の鐘手前の橋を渡ろうとする。そこまで追い詰めた時だった。慌てた赤鬼は、生徒たちが張ってあったロープに気がつかず、橋の上で転倒してしまったのだ。
「うわあ!」
 赤鬼は叫び声をあげるが、とととととっとそのまま勢いをころして更に体を起こして逃げようとする。
 そこに、「注意一秒、ケガ一生。前方不注意はダメですよ!」と真人が氷術を繰り出してくる。
「この程度ではワシはまけーん!!」
 しかし、さらに赤鬼の足には匠がトラップとして、トラッパーに加えて油を垂らしておいた上に、ガッシュ・エルフィードが手にした石を赤鬼の頭に目掛けて投げつけたため、小さいながらも金剛峯寺にかかる橋の下に流れる川に赤鬼はどーん!と言う音を立てて落ちてしまったのだ。
 みんな、油をよけながら(匠はきちんと重曹で油を拭き取って)橋の下をのぞき込むと、赤鬼が頭から小さな川のせせらぎに頭を突っ込んでいた。
「やった!」
 橋を飛び越え、ガッシュが赤鬼に駆け寄る。
「たーっちだよ!!」
 しかし、次の瞬間、赤鬼はぼふん! と、煙幕を張って消えてしまう。
「ああ、消えちゃったよ! お兄ちゃん!」
 びっくりしたガッシュがショウに助けを求めるかのように、顔を見上げる。
「影分身だったようだな…お疲れさん、ガッシュ。あがってきな」
「ガッシュ、お疲れ〜」
 アメリアとミーナがガッシュを引き上げてやる。
「ああん! 残念!! もう〜!!」
 セルファが地団駄を踏んで悔しがる。
「まあ、良いじゃないですか、セルファ。ついでだ、大塔でも見物していきましょう。おそらく、金剛峯寺では、最後の赤鬼退治が始まっているのではないでしょうか。そっちはそっちで任せて。その前に油は綺麗に拭き取っておきましょう。匠君一人に任せるわけにはいきませんしね」
 真人は何か気がついているのか、そういうと、匠と一緒に重曹で油をふきはじめる。
「これでたぶん、残るは本体一人だけだぜ!」
 芳樹のつぶやきに
「じゃあ、みんなで油をきちんと拭き取ろうか。大事なお寺の入り口だからね」
 ショウは首肯すると、みんなで大掃除を始めたのだった。
「楽しんだ分だけ、後始末もしっかりしないとな…しかし、油のトラップは少々原始的すぎたな…しかし、油でつるっつるに滑った赤鬼はなかなか笑えたのでよしとしよう」
 匠はそういうと、淡々と拭き掃除を続けている。