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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
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 また、他のところでもモッテモテの生徒もいた。セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)である。パートナーの騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が黄鬼ゲット! をもくろんでいる間、こおりおにで凍らされた子を時に来る「子」の精霊をおびき寄せようと、囮の『子』を天空に配置するつもりだったのだが、その翼のある姿に惹かれ、精霊たちならずも天狗たちまでもが一目見ようとやってきてしまったのだ。
「なんちゅうべっぴんなお姉さんや〜」
 一匹の天狗が、セルフィーナに近づいてくる。
「これが西洋で言うところの、天使いうやつやろか」
「ほんまや、真っ白でめっちゃきれいやわ」
「眼福、眼福」
 天狗や花の精霊までもが、セルフィーナを取り囲んでしまう。
「あの、みなさん、まだ鬼ごっこの途中ですよね」
「ええねんええねん、あんなん、赤鬼だけが張り切ってるだけやねん。それよりも、べっぴんさんとお話したいわ〜」
「そうそう、お話ししたいわ〜、あ、タッチされると凍ってしまうさかい、もうちょっとお喋りしてたいわ〜」
「でも、こんな綺麗な人にタッチされるんやったらそれはそれでええわあ〜」
 精霊や天狗たちに囲まれ、セルフィーナは苦笑してしまう。


 フリルやレースで改造した制服に、伊達眼鏡がキュートな騎沙良 詩穂は次から次へ、「至れり尽くせり」のスキルでどこかからかお菓子ばかりが大量に引き出した。
「うふ☆ 黄鬼さん、美味しいお菓子がいっぱいだよ! いらっしゃいな〜」
「お、か、しぃ?」
 黄鬼はひょこっと木の陰から顔を出す。黄鬼の鼻はどうなっているのか。お菓子やご飯センサーでもついているのか。
(お前は影分身なのか、それともホンモノか…)
 戦闘モードの時だけ出現するという、詩穂のSな面が一瞬、顔を出すが、すぐに顔を引っ込めてしまう。
「そう、お菓子だよ〜どう? 食べる?」
 詩穂が黄鬼の様子を伺う。
(お菓子か? お菓子を食うなら、お前はホンモノだな。くわねえなら、お前は影分身だな!)
 詩穂のSキャラの面がまた、心の中に出てきたようだ。
「ねえねえ、僕、欲しいものがあるんだ」
(来た! しかも髪型はアフロでトラ柄のデカパン! これはまさしく○木○―!!)
「なにかな〜?」
「お姉ちゃんのそのジュエルリングが欲しい〜」
「え? これ?」
「それ、なつかしの指輪キャンディだよね? キラキラして綺麗だなあ〜美味しいしね」
(どっちだ! 影分身か、ホンモノか! ええいどっちでもかまわないわ!)
「いいわよ、上げる代わりにタッチさせて」
 詩穂はそういうがいなや、黄鬼にタッチすると、次の瞬間に黄鬼はドロンっと消えてしまう。
「ひどいや〜おかし食べたかったのに〜」
「…やっぱり影分身だったのね。うーん残念。それにしても大量にお菓子が余っちゃった。ホンモノが見つかったら、押しつけちゃいましょ」


 一方、天河神社の前で焚き火をしている一行たちの姿があった。キノコにお芋、七輪でサンマまで焼いている者もいる。もちろん、黄鬼をおびき寄せるためであり、当然、黄鬼はそれをじっと影から見つめていたのであった。
「お、黄鬼さんじゃねえか。よう、あんたも食うか? ……あー美味ぇ、胃に染みるぜーっ!」
レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)は、黄鬼に気がつくと見せつけるかのようにして、香ばしいキノコを口にする。
「本当に美味しいぜ! あ、なんだ、このキノコ。やたら白くって細長いな…あ、ちょっと止めとけ、ミミ、それ、毒キノコかも」
 食欲魔人のミミ・マリー(みみ・まりー)を制しながら、瀬島 壮太(せじま・そうた)もキノコを黄鬼に見せびらかす。
「え? 毒キノコなの? 毒は少しずつ舐めてならすと良いんだよ。黄鬼さん、美味しいご飯たべたいよね。ほくほくの栗ごはんにアツアツの秋刀魚でしょ、お芋だって今の時期おいしいし…はやくしないとせっかくのご飯が冷めちゃうよ」
「そうそう、サンマめっちゃ脂のってて美味しいぜ〜!オレが用意した、大根、アサヒポン酢、すだちに大量のサンマ! どうだ?」
 七枷 陣(ななかせ・じん)はサンマ攻撃に出る。
 小尾田 真奈(おびた・まな)がささっと用意を調える。
「はい、迅速にサンマを焼いてしまいましょう。大根を擦って…ポン酢とすだちを合わせて…。はい、ご主人様。黄鬼様、お一ついかがですか? 今はサンマが旬です。脂が乗ってとても美味しいですよ〜」
「鬼さん鬼さ〜ん。美味しいサンマタイムの始まりですよ〜、ポンポンポポポン、ぶっかけポ〜ン♪ っと。う〜ん!美味しいです! おいしいです、オイシイデス! …よだれが、止まりません!!!」
 陣は、うちわで匂いをパタパタと黄鬼に向け、サンマを口にすると黄鬼の食欲刺激攻撃を次から次へと繰り出した。その反応を見ながら、黄鬼がホンモノか、影分身なのかを判断しようとしているのだ。
 陣と同じく神城 乾(かみしろ・けん)も、サンマで勝負をかけてくる。パートナーのアニア・バーンスタイン(あにあ・ばーんすたいん)が魔法で七輪を火力を調整しながら「どうしてワタシがこんなことを…」とブツブツ呟くが、それでも夢中になるタイプなのか、七輪の炎は非常に良い感じだった。
「ささ、黄鬼さん、退屈しのぎにサンマでもどうかな。それに他のみなさんも」
 乾は黄鬼を引き寄せるためにも、他の生徒にサンマを振る舞う。
 乾はあらかじめ、黄鬼が来るであろう方向に落とし穴を掘り、こうやってサンマ攻撃を仕掛けていたのだった。
「わあ、嬉しいですぅ。じゃあ、私たちの焼き芋、差し上げますですぅ。熱いから気をつけて下さいですぅ。紅葉の季節、境内にはたくさんの枯れ葉があって、焼き芋にも最適でしたですぅ。黄鬼さんもそんなところにいないで、こっちへいらっしゃいよ」
 パチパチと火がはぜる中、香ばしさと甘い匂いを漂わせる焼き芋をメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)は、乾に渡した。
 メイベルのパートナー、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)は栗を集めて、焼き栗を作っている。
「念のため、鍋や包丁も持ってきたけど、サンマをさばく時にみんなに使って貰えてよかったな!」
「みなさん、喉が渇きますでしょう? お好きな飲み物をご用意しますわ。緑茶、紅茶、コーヒー? お酒はダメですよ」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は焼き芋は喉が渇くため、みんなの好みの飲み物を用意していたのだ。
「さすが、百合園女学院! 気が利くねえ! 黄鬼さんも何が飲みたい?」
 同じく、焼き芋と京飴で黄鬼を説得しようとしていた緋山 政敏(ひやま・まさとし)が感心する。
「私は緑茶! 焼き芋も美味しいけど、サンマも最高ね!」
 スタイルバツグンのカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)は、黄鬼を引き寄せるためにもわざと大げさにはしゃいでみせる。
「私も。ねえ、黄鬼さん、この京飴きれいでしょ? こっちきて食べましょうよ」
 リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)はカチェアと談笑しながら、黄鬼をさりげなく誘う。
 嘉川 炬(かがわ・かがり)と、エリン・クラウディア(えりん・くらうでぃあ)も焼き芋を楽しんでいた。
「やっきいも〜♪ やっきいも〜♪ ん〜いい匂い♪ すっごくたくさん、焼き芋があってうれしいですねえ〜黄鬼さん、一緒にどうですか〜焼き芋おいしいですよ」
 エリン・クラウディアは焼き芋自体、初めて見るらしい。
「いい匂いがいたしますわね、これが焼き芋というものなんですのね。おいしそうですわ〜」
 半分、黄鬼や鬼ごっこのことを忘れかけて、宴会状態に突入している面々。
 その姿を黄鬼は半泣きで見つめていた。
「…どうしたんですか、黄鬼さん?」
 炬がその様子に気がつく。
「だって〜美味しそうだけど〜」
 黄鬼がじりじりとみんなの輪から遠ざかっていく。
「食べたいよ~」
「こっちきて、食べましょうよ!」
 アニアと乾が、自分たちの作ったトラップをそっと避けつつ、近寄っていく。
「すっごく食べたいよ〜」
 黄鬼はそれでもまだ、じりじりと後ろにさがる。
(影分身なのか? それにしちゃあ、食い意地汚くないか? いや、まだ油断はできないぞ)
 全員が、判断に迷って、ついつい、それぞれが手にサンマや焼き芋、京飴を持って黄鬼に近づこうとする。
「食べたら赤鬼に叱られちゃうよ〜」
「赤鬼さんには私から上手く説明しますわ! だから、ね、一緒に!!」
 真奈と、ミミが黄鬼を説得しようとしていた、その時だった。
「ちょっと待て! こいつ、影分身かもしれないぞ!」
 政敏がハっと気がつき、声を上げると、陣がくるっと後ろを振り向いた。自分たちが思っているより、焼き芋やサンマのたき火から黄鬼に誘導されて、離れていたことに気がつく。壮太が慌てて黄鬼にタッチすると、黄鬼はドロンっと姿を消してしまう。
「うわ! やっぱり!!」
 振り向いた先には、なんと黄鬼がたき火の前で次から次へ、サンマ、焼き芋、京飴にお茶をガツガツと平らげているではないか。
「待て〜!」
 黄鬼を追いかけようとしたその瞬間、リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)がみんなと黄鬼の前に立ちはだかる。
「陣くん、みなさん、ここはオレに任せて下さい」
 銀色の髪に緑の瞳、美男子のリュースに黄鬼は警戒心を強くしたようだった。
「お、おまえ、僕をどうするの…」
 口に食べ物を詰めたまま、黄鬼が呟くと、リュースはニヤっと笑って、
「黄鬼さん、オレとどっちが食べるか競い合いましょう!」
「なにぃ!」
「なんですって!」