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リアクション
そのころ、魅世瑠たちは川辺で狩猟の練習をしていた。
「いいかぁ、肉は空からふってくんじゃねーぞ、食いたかったら、狩りだ!いいなぁ」
魅世瑠は、子供たちに石礫を集めさせる。
お手製のスリングに石をつめれば、簡易武器の完成だ。
「よーし、あの木のほらを狙ってみろっ!」
魅世瑠の合図で、子供たちが いっせいに木にむけて石礫を打つ。
一番上手なのは、もちろん、ラズだ。
「ラズ、ずっと、狩りして暮らしてた。狩り、食べ物食べられる、大好き」
嬉々としている。
「あなたが上手なのはわかってますわ、でも子供たちもとても筋がいいのですわ」
ジャタの森出身の蝙蝠型獣人、アルダトが感嘆の声を上げる。
「俺たちはよぉ、暗いトコで変な化けモンと戦って生き残ったんだっ、狩りなんてちょろいよ」
少し大きな男の子が生意気を言う。
「いせーがいいなぁ、お前!」
剣の花嫁、フローレンスが男の子を見る。
「ハルだ!名前で呼べっ!」
「ハルは弱虫だよ、ほんとはね」
ちゃちゃをいれたのは、レッテた。
「なんだとぉーーー」
今にもつかみ合いになりそうな二人の間に、ラズが割って入る。
「ラズ、けんか、嫌い!」
「だなっ、ここでけんかするするより、獲物を狙おーぜっ!」
魅世瑠はみんなを川の上流へと連れて行く。
魅世瑠は女王の加護を、フローレンスは殺気看破を、アルダトは超感覚のスキルを使って、子供たちに危険が及ばないよう、配慮しながら。
「しっ!」
急に魅世瑠が足を止める。
「いたよ、パラミタオオケワタガモだ。みんな静かに!」
ラズとアルダトが足音を消して、水鳥の群れに近づいてゆく。
「こういうのは飛び立たれたらおしまいだから、射程距離ギリギリまでそっと近づいて、一気に仕留めるんだよ、そこで見てな」
ぎりぎりまで近づいたアルダトが機関銃を乱射する。数羽のパラミタオオケワタガモに命中した。
「それ取りに行け!」
魅世瑠の合図で、それまで息を潜めていた子供たちは一気に水の中にはいってゆく。
急所を外れ息のある鳥には、ラズが止めをさした。
フローレンスは、手際よく焚き木の準備をしている。子供たちの体はパラミタオオケワタガモを捕まえるときに濡れている。
洞窟で待っていた子供たちは、パラミタオオケワタガモを何羽も下げて戻ってきた、魅世瑠やレッテを大騒ぎで囲んでいる。
「これ、どうやって食うんだ?」
ハルはずっと不思議に思っていたことを聞いてみる。
「だよな、最初にいっただろ、肉は空から降ってはこねーって」
魅世瑠は、そういうとカモの首を雅刀で切断する。
溢れる血をそのまま、流す魅世瑠。
子供たちの中には、悲鳴を上げるものもいる。
「だけどよ、目を背けちゃいけねーぜ、食べるってのはこういうことだ」
シーがやってきた。
「魅世瑠、子供には時期があるノダよ、知るにはまだ早い子もいる。おいで」
泣いている子を抱きかかえるシー、
「この子は、ここまでで十分だヨ、よくがんばった」
頷く子供たち、シーは数人の子供を連れて洞窟内に戻ってゆく。
魅世瑠とラズは、カモの毛皮剥ぎ羽むしりをする。
羽の根は魅世瑠がランドリーでよく洗い落とす。
「後で服の材料にするんだ」
内臓は取り出す。寄生虫が危ないので食わない。
「後で弓弦などに使う、だから捨てない」
先ほど威勢のよかったハルがガタガタ震えている。
「大丈夫か?」
フローレンスが声をかける。
「当たり前だっ、次はオレ一人でやってやる!」
「いい心がけだわ。新しい住まいではあなたが頑張るのよ」
解体の終わった魅世瑠が肉の塊を大きな木の葉で包んで、ハルに渡した。
「シーにもってけ、ワンちゃんが腹空かせて帰ってくんだろ、いつもモロコシ粥ばっかじゃもたないぜ」
頷くハル、洞窟に向かって駆けてゆく。
2.巨大蟻退治
その頃、大鋸は広いシャンバラ大荒野を、武尊とバイクで並走している。
目の前に集落が見える。孤児院建設の予定地だ。背後には緑多い森も見える。
なぜか武尊は集落の周りでバイクをぐるぐる余分に走らせている。
集落が近づくにつれ、うごめく影が見えるようになった。
「蟻かぁ?」
一瞬先立つ大鋸だが、武尊は驚くそぶりもなく、まっすぐ集落にバイクを走らせる。
近づいてみると、うごめく影は人だった。
事前に武尊から連絡を受けた有志が蟻退治に集まっている。
武尊のパートナー猫井 又吉(ねこい・またきち)が手を振っている。
「巣が見つかったって、他のやつらは出発したぜ」
又吉の傍らにはイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)がいる。
「俺たちは、おまえたちが連れてくる蟻を退治するために待っていたのだ」
イーオンは、その言葉が終わると同時に、大鋸が通り過ぎたばかりの地面に雷術を放った。
巨大な蟻が地面から顔を出し、もんどりうっている。
「おー、きたぜ」
久多 隆光(くた・たかみつ)が武者震いしている。精悍な美貌がさらに際立つ。
少し離れた場所に立っていた虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)も、ブロードソードを構える。集落に蟻か迷い込まないよう、背後にも気を配っている。
巨大な蟻の群れが大鋸たちに向かってきた。
迎え撃つのは、大鋸、武尊と又吉、隆光、 涼、イーオンにパートナーのフェリークス・モルス(ふぇりーくす・もるす)とセルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)の8名だ。
隆光が少しはぐれた蟻に向かって走ってゆく。アーミーショットガンを蟻の間接にめがけて撃つ。
蟻は傷を受けながらも、大きく口を開けて酸を吐き出した。
瞬間、飛び去る隆光。酸を浴びた地面が赤くこげている。
「一人で戦うのは危険だぞ」
イーオンが隆光に声をかける。
涼が隆光の援護に回った。 涼のブロードソードが隆光の攻撃で傷ついた蟻の首を撥ね落とす。
目線を合わせる 涼と隆光、「よし!」蟻の大群に分け入っていく。
二人の前を大鋸が走る。
大鋸は血煙爪を振り回しながら蟻の大群を蹴散らしてゆく。蟻の塊が二つに割れた。
その群れの一匹が、ドラゴニュートのフェリークス・モルスに向かってくる。
フェリークスの長い黒髪と赤い瞳に蟻の牙が触れようとしたとき、その姿が襲ってきた蟻の前から消えた。隠れ身のスキルで目くらましをしたのだ。
フェリークスは蟻の背後に回っている。ブラインドナイブスを使って蟻を確実にしとめるフェリークス。
攻撃の隙を狙い、別の蟻がフェリークスに襲い掛かるが、フェリークスの姿はすでに後方へと非難している。
「イオ!」
フェリークスがイーオンに声をかける。
フェリークスの目線の先には、集落に向けて突進してゆく数匹の蟻の姿がある。
「まだ子供たちがいないとはいえ、集落に入り込まれては建物がめちゃくちゃになる。イオ、頼む!」
イーオンは、バーストダッシュを使って、突進する蟻の前に回りこむと仁王立ちした。
迫りくる蟻の、間接部や目、触覚や口腔内を狙って、正確にドラゴンアーツの怪力を利用する。横倒しになった蟻が最後の力で、酸を吐く。
避けるイーオン、ブラックコートの裾が溶けている。
再び口を開けるその蟻に、止めを刺すのは、人型の機晶姫セルウィー・フォルトゥムだ。
イーオンの背後から飛び出すと、チェインスマイトで蟻を攻撃する。
「イオ、大丈夫ですか」
「セル、すまない」
背中合わせになり、周囲を警戒するイーオンとセルウィー。
傷を追いうごめく蟻に、火術をかける。
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