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リアクション
本当の思いを
「あ、フリッツ? 俺だよーサミュだよー。いや、特に用はないケド、元気してるかナーと」
サミュエル・ハワード(さみゅえる・はわーど)はとても楽しそうに、携帯の向こうから聞こえる声に耳を傾けた。
無邪気そうな声のサミュエルだったが、かけるまでちょっと悩んだ。
フリッツは地球に帰省しているからだ。
それでも、勇気を持って発信ボタンを押し、電話越しに「よう、サム」と言う声が聞こえると、それだけで明るい気分になった。
「ウン、あ、今みんなネ、ケーキ作りしてるヨ。サミュは味見係でいいって言われて出来るの待ってるんダ。ひなはいないけど、ルースもレオンも佐野もパーティに来てて、ナガンは常にうろうろしてて、藍澤とショータも……」
そんな感じで友達の近況も交えながら、サミュエルはフリッツに色々と話をした。
「パーティのケーキとか料理も食べたヨ。プレゼント交換に団長人形も用意シテネ……」
サミュエルのお話に、フリッツは相槌を打ったり、時々、質問を返したりして聞いてくれる。
たわいのない会話だけど、サミュエルにとっては、とても楽しい電話となった。
「うん、じゃぁまたネ。あ、フリッツ! 大好きだヨ。メリークリスマス」
最後にそう言葉を告げて、サミュエルは電話を切った。
サミュエルは幸せな気持ちで携帯をしまったが、その視線の先に親友の姿が映った。
「アレ……?」
レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)が朝野 未沙(あさの・みさ)を連れてどこかに行く姿が見えた。
だが、サミュエルが声をかける前に、2人は見えない場所に行ってしまった。
「お姉ちゃん、大丈夫かな。何だか胸騒ぎがするの」
「Ahan……だーいじょうぶ大丈夫い。すぐ戻ってくるからよう」
心配する朝野 未羅(あさの・みら)の頭を、シュレイド・フリーウィンド(しゅれいど・ふりーうぃんど)がポンポンと撫でる。
「ほら、恋だって気にせず、もぐもぐ食べてるぜ〜」
シュレイドが指さすと、泉 恋(いずみ・れん)がパーティで楽しそうに食べて飲んでいた。
「パーティの後片付けもするんだろ。変なところでパワー使い切っちゃいけないぜぇ」
「未羅ちゃん、飲み物足りなくなると困るから、手伝ってくださいですぅ」
朝野 未那(あさの・みな)の言葉に、未羅は頷き、とことこと動き出す。
今日のパーティのお料理や飲み物などは、かなりの部分、朝野姉妹が請負ってくれた。
未那にいたっては会場の飾り付けまでしてくれている。
その上でさらに、彼女達はマメに働いてくれていた。
「未成年の方が多いから、ノンアルコールカクテルが足りないんですぅ。姉さんいなくて人手が足りないので、作るの手伝ってくださいですぅ」
「よっしゃ、それじゃ俺様も手伝うとするかね」
パートナーたちは仲良くパーティの裏方の仕事をしにいった。
「うん……分かった」
レイディスから告げられた言葉に、未沙はそう短く答えた。
言葉にすると短い言葉。
でも、そこには未沙のたくさんの想いがつまっていた。
レイディスに呼び出されたときに、(もしかしてお誕生日のこと覚えててくれたのかな?)と嬉しくなった未沙だったが、そうではなかった。
自らの思いをしっかりと、レイディスは未沙に伝えたのだ。
「俺が愛せるのは一人。今この瞬間も、これから死せる時迄もセシリアだけ。もしこれから関わりを持つとしても、友人として。それより上はない。そんな状態で傍に居て貰うのは、見ているだけで辛い。だから、ごめん」
曖昧にしたくないと思ったレイディスはハッキリと自分の思いを口にした。
そんなレイディスを見て、未沙は小さな笑みを浮かべた。
「分かってるよ。うん、分かってた……」
紅葉の山で抱きついたとき、未沙は「ありがとう」の後に「でも、ごめん……」が続くのが怖くて、勢いで抱きついた。
そして、レイディスは紅葉が風で散る中、未沙を抱きとめてはくれたけれど……それだけだった。
レイディスは、自分がせがんだくらいで、あっさりと関係を持てるほど軽くて器用な人じゃないと未沙は知っていた。
紅葉の山に行ってから、色々あって、笑いも空笑いになって、どこか軽く冷めたようになってしまったレイディスを、レイディスのそんな状態を未沙は欲してなかった。だから。
「うん……分かったよ、レイちゃん」
精一杯の笑顔で答え、未沙はレイディスをパーティの方に誘った。
「今回のお料理はね、クリスマスってことで、かなり腕を振るったんだよ。だから、食べて行ってくれるとうれしいな。ケーキもそろそろ出来そうだしね」
その言葉にレイディスは一つ頷き、2人はパーティ会場へと戻っていった。
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