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リアクション
パーティはまだまだ続く
「………いつもケイラがお世話になっています」
ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)からのプレゼントであるワンピースともこもこポンチョを身に着けた御薗井 響子(みそのい・きょうこ)の挨拶を受け、エル・ウィンド(える・うぃんど)がきらっと輝く笑顔を見せた。
「やあ、響子ちゃん、こんにちは。今日は楽しもうね!」
「はい……」
響子はホワイト・カラー(ほわいと・からー)には「……今度、マフィンの作り方教えて下さい」とお願いし、ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)にははじめましての挨拶をした。
その間にもケイラは、料理を平らげている。
「……ちゃんと肉も食べるべき、かと思いますよ」
今日はケーキがたくさんあるため、ケーキばかり食べるケイラを響子が静かにたしなめる。
「本当はもっとケーキとかケーキとかケーキとか入れて欲しいのになー」
もはやケーキのことしか頭にないケイラを見て、エルが楽しそうに微笑む。
「ケイラが喜んでくれてよかった!」
5人は料理を存分に楽しんだ後、プレゼント交換をした。
「はいどうぞ、2020年もエルさんが輝いてますように♪」
ケイラからエルへのプレゼントは、金色の2020年型フレーム(0の部分がフレームになってる)の伊達眼鏡だった。
それに誕生日プレゼントとして金色のどてらもつけた。
「ボクからはこれ!」
エルは癒し系のケイラにはアロマとお香のセットを。
響子には花のヘアバンドを。
ホワイトにはブローチを。
ギルへは香りの良いボディソープと入浴剤をプレゼントした。
「あ……」
そこでケイラはエル以外の人へのプレゼントを忘れていたことに気づき、ハッとしたが、響子がそっとホワイトやギルガメッシュにプレゼントを渡した。
「ハンカチのセットです。よろしければ……」
「わあ、ありがとうございます」
ホワイトもギルガメッシュも喜んで受け取り、ホワイトは皆にクッキーを、ギルガメッシュは皆にタリスマンをプレゼントして、プレゼント交換は終了となった。
その後、全員で王様ゲームをして、ケーキを食べさせ合い、ケイラがみんなのリクエストに答えて、ウードを手にした。
(せめてプレゼントを用意してこなかった代わりに……)
そう思って、ケイラは心をこめて曲を弾いた。
演奏が終わると、会場の他の参加者からも拍手が置き、ケイラは照れながら、ウードをしまった。
「すごくいい演奏だったよ。大和さんたちが聞けなかったのが残念。大和さんが張り切ってたみたいだけど歌菜様とうまくいったのかな?」
エルの言葉に、ケイラは笑顔を見せた。
「うん、大和さん達上手くいってるといいね」
ケイラの演奏を聴いていたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、誰かと感動を分かち合いたいと思い、隣にいた虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)に声をかけた。
「素敵でしたね」
「あ、ああ……」
フチが赤い白のミニワンピースに白いマフラーという可愛い格好の子に声をかけられ、涼はちょっと戸惑いながらうなずいた。
本来は裏方のつもりだった涼だが、パーティらしい雰囲気に少し表に出てきたところで、ちょうどヴァーナーに声をかけられたのだ。
ヴァーナーとしては新しいお友達が欲しいと思っていたので、涼と出会えたのは幸いだった。
「せっかくだから、これ、もらってください」
「え?」
ヴァーナーが渡したのは、マシュマロの体にクッキー棒の腕にグミの手、チョコの目と口、クッキーの帽子で出来た雪だるま型お菓子だった。
「あ、ああ、ありがとう。可愛いな」
「うふふ、そういってくれていうれしいですー。あ!」
ヴァーナーはある人に気づき、走っていった。
「ん?」
涼はそんなヴァーナーの背を見送り、もらったお菓子を見て小さく笑った。
「可愛いお土産が出来たな」
ヴァーナーが見つけたのは椎名 真(しいな・まこと)だった。
ネクタイスーツ姿の真は、タキシード姿のヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)に恋愛相談をしていた。
「執事椎名真は10年後20年後もなれる。君がなりたいと望めばなれる。けれどね、17歳の椎名真は、10年後20年後、望んだってなれないんだよ。感じたことは大切にしなきゃ」
「17歳の俺……か……」
ヴィナの言葉に、真は少し逡巡した後、小さく首を振った。
「想いを受け入れる……受け入れた俺は、執事としてきちんと接することが出来るか不安なんだ……」
「でも、君は君。君自身の想いを否定することより受け入れあげて。悩んでいいじゃない。俺も君もまだ若いよ」
「……うん、悩むのは得意だしね俺……! ヴィナさん相談乗ってくれてありがとう!」
真がヴィナの元から去ると、次に白いドレス姿の双葉 京子(ふたば・きょうこ)がやってきた。
ヴィナは真が響子の相談に気づいていないか、と心配になったが、真はヴァーナーと話していた。
「あ、さっき会ったんだ。『京子おねえちゃん、かわいいです』ってハグしてもらっちゃった」
ヴァーナーの方にヴィナの視線が向いていることに気づき、京子は小さな笑みを見せて説明した。
そして、京子もヴィナに相談をし、ヴィナはそれを聞いて相槌を打っていった。
「私気づいてる、だって剣の花嫁は大切な人の姿に似るから。真くんの主は本当は私じゃなくて、私に似た別の誰かだって事も……主じゃないって分かったら今の関係が壊れそうで怖いの」
「京子ちゃんは優しいね。真くんが執事として君に仕えたいと強く願っているからこそ、口にしない。口にして真くんの重荷になりたくないし、執事として存在意義を見出す彼を否定したくない。そう思ってるんじゃないかな。主という立場を振りかざさないのだから、本当に真くんが好きなんだね」
本当にという言葉を聞いて、京子はハッとした。
そして、少し俯き、京子は静かに言った。
「今のこと、誰にも言わないで……お願い……」
「うん。俺の心に今はしまうよ。でも、君の幸せは君次第だよ。勇気を出して」
「そうだよね……うん! 私、頑張る!」
元気に京子が駆け出していく。
2人が去ると、タキシード姿の原田 左之助(はらだ・さのすけ)がやってきてヴィナの労をねぎらった。
「おつかれ、ヴィナ。悪いな、二人の相談に乗ってもらっちまって。礼を言うぜ」」
「いやいや、俺から見たら互いに惹かれ合っているのに……って気になってたからね」
「そうか。見てるこっちがもどかしいよな。……ったく。まあ恋愛相談持ちかけるだけでも進歩……だな、こりゃ」
左之助は苦笑交じりにそういいながら、ヴィナにグラスを傾けた。
「良かったら、飲まねえか?」
「え、俺19歳ですよ」
「……は? 19歳!?」
ポカンとして左之助はまじまじとヴィナを見た。
「どんだけ精神年齢老け……いやいや、人生達観してるんだよ、お前さん……」
左之助のツッコミに苦笑しながら、ヴィナはノンアルコールカクテルを傾けるのだった。
一方、真はパーティの会場の隅で横になっていた。
「ゴメンね…10分経ったら起こしてもらっていいかな?」
そう言って眠った後、少し元気を取り戻した真は京子と蒼へのお土産を相談し、ケーキをもらって帰ることにしたのだった。
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