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夢のクリスマスパーティ

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夢のクリスマスパーティ
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感謝をケーキにこめて

「……できた!」
 琳 鳳明(りん・ほうめい)は出来上がったモンブランを見て、目を輝かせた。
 モンブランってこんな焦げ茶色じゃなかった気もするけれど。
 もう少し見た目が綺麗だった気もするけれど。
 それでもなんとか皆に教えてもらって出来たケーキを手に、鳳明は感動した。
「セラさーん!」
 鳳明はパーティ会場にいるセラフィーナ・メルファ(せらふぃーな・めるふぁ)を探し、声をかけた。
「どこに行ってたんですか、鳳明」
 セラフィーナは口を尖らせて、鳳明を見た。
 鳳明のほうから誘っておいたのに、置いてけぼりにされて、セラフィーナはご機嫌斜めだったのだ。
「今日がワタシと会ってからちょうど1年になるのに、鳳明ってば……」
「はい、セラさん、1年間ありがとう! 1周年記念に!」
「え……?」
 差し出された焦げ茶色の何かを見て、セラフィーナは目を丸くする。
「これ……は?」
「モンブラン! セラさん好きでしょ?」 
「あ……」
 モンブランだったのか、というツッコミを飲み込み、セラフィーナは鳳明を見る。
「私、セラさんにお世話になりっぱなしなのに、ちゃんと感謝の気持ちを伝えたことがなかったから。だから今日、今までの感謝と、これからもよろしくって想いを込めてケーキを作ったんだ。一応1周年記念ってことにもなるのかな?」
「覚えててくれたんですね」
 うれしそうに、とてもうれしそうに、セラフィーナが笑顔を見せる。
「これからもいっぱいよろしくね、セラさん!」
 鳳明の言葉にセラフィーナは胸がいっぱいになりながら「もちろんですよ」と答えるのだった。


 関谷 未憂(せきや・みゆう)は作ったロールケーキの表面にチョコクリームを塗ってフォークで模様をつけ、ナッツをトッピングして粉砂糖をかけて……ブッシュ・ド・ノエルを完成させた。
「うん、綺麗にできた」
 仕上がりに満足して、未憂がにっこりと笑顔を見せる。
「へー、シャレた形のケーキ作るねぇ……どれどれ」
「……食べます?」
 やっと出番の来た味見係の高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)に、未憂がブッシュ・ド・ノエルを差し出す。
 悠司はフォークを差して、切り株の一部をちょっと取って口に運び。
「なんだ……」
 味を確かめた悠司の口からそんな言葉が漏れた。
「え、な、なんだって、なんですか?」
「何かつっこんでやろうと思ったのに、結構うまい」
 悠司の言葉に、未憂が目を丸くして、次に軽くぽかぽかと悠司を叩いた。
「もう、なんだなんて言うから、一瞬、緊張しちゃったじゃないですか」
 それでも、うまいと言ってもらえて、未憂はちょっとうれしそうに微笑むのだった。


 轟 雷蔵(とどろき・らいぞう)のケーキは……見た目は惨憺たるものだった。
「非常に豪快な……飾り付けですね」
 真菜がなんとか褒め言葉を見つけて言う。
「あ、でも、スポンジとかは綺麗にできましたし。きっと味は……かと」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)がそうフォローしたとおり、雷蔵がケーキを持ち帰ると、ツィーザは味は褒めてくれた。
「……何の実験台って思ったけど食べられる味だった。教えてくれる人が良かったんだね」
 ツィーザの言葉を聴き、雷蔵はメイベルに感謝したのだった。


「……このケーキどうしよう」
 東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)は出来上がった自分のケーキを口にして、複雑な表情を浮かべた。
「どうしたんですか、秋日子くん?」
 首を傾げる要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)に秋日子はケーキを差し出した。
 要はそれを食べ、同じく複雑な表情を浮かべた。
「食べられないほどではないですが、おいしくもないですね……」
「そうなんだよね、食べられなければ……だし、まずければネタにもなるんだけど、そこまででなく……」
「……一度、材料が適当すぎですよ、とは言いましたよね?」
「言ったけど……それを聞いちゃうと、要に負けを認めてる気がしたんだもの」
 変なところで負けず嫌いな秋日子を見て、要が微笑を浮かべる。
「まあ、後で帰ったらケーキを食べましょう。自分が用意してあるんで」
「要が? わあい!」
 喜んだ秋日子だが……帰ったら、禍々しい外観のケーキが待っていることをまだ知らない。
 もっとも味はちゃんとおいしいので、楽しいクリスマスにはなるだろう。


鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)のケーキは、見た目はアメリカのどぎつい色のケーキのように青かったが、味はまともだった。
「本当に良かった……」
心底安心したようにレイン・ルナテッィク(れいん・るなてっぃく)が呟く。
「……なんでこんなことになったんだろう」
 ピンク色になったケーキの上にサンタクロースの砂糖菓子を載せ、ろうそくを立てて、完璧なクリスマスケーキに仕上げたはずのハーポクラテス・ベイバロン(はーぽくらてす・べいばろん)だったが、味はものすごいものになった。
「どうしたの?」
 不思議そうな顔のクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)に対し、ハーポクラテスは複雑そうな顔をした。
「クリスマスケーキって、こんなのだったんだなって、ちょっと期待外れって言うか……」
「憧れのものに近づいてみたら、実際はたいしたことがなかったなんてよくあることですよ」
 デコレーション用のチョコレートを全部食べてしまったクハブス・ベイバロン(くはぶす・べいばろん)が、したり顔で言う。
「ね、良かったら一緒にどう? ブルーケーキ、割とおいしくできたよ」
 氷雨に青いケーキを向けられ、ハーポクラテスは少し悩んだあと、赤いサンタクロースとろうそくを乗せた。
「ん……これでクリスマスケーキになった。それじゃ頂こうかな」
「うん!」
 勝手にデコレーションされたことを、氷雨はまったく不満に思わず、むしろ楽しそうな笑顔を浮かべて、ハーポクラテスたちと一緒に青いケーキと赤いサンタを楽しんで食べるのだった。
 一方、彼らと一緒にケーキ作りをしていたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は出来上がった生クリームと苺のケーキを見て大変満足そうだった。
「これでエルシュに持っていける!」
「うれしそうだね」
 他の人から色々とケーキをもらってご満悦のクマラが問いかけると、エースはうれしそうに頷いた。
「あの機晶姫にこれで勝てる。負けられない戦いがココにはあるんだッ」
「張り合うつもりはない言いながら、勝つ気満々じゃん……」
「だって美味しいって言葉と笑顔が欲しいじゃないか」
「エースがお菓子作りに挑戦ってだけでもオドロキだったのにな。恋人効果ってやつ?」
 クマラはちょっと大人びた口調になりながら、ふとあることに気づいて、笑顔を向けた。
「エースもオイラの笑顔が見たくて、ホットケーキを教えてもらったの? エース、オイラの事をそんなに想ってくれてたんだね?」
「いや、想ってない」
 あまりにキッパリした言葉に、クマラは頬を膨らませるのだった。


「ん、その、なんだ……メリークリスマス」
 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は帰ってきたアルマ・アレフ(あるま・あれふ)にケーキを見せた。
「あ、あれ、ケーキ? 手作り……?」
「ああ、ちょっと作ってきた」
 すでにアルマ以外のパートナーは待っていて、後はアルマが帰宅して、ケーキを切れば食べられるという準備が出来ていた。
「ごめんね、なんかあたしのせいでみんなが待ってたみたいで……」
「いや、こういうのはみんなが集まってからでないとな。なんだかんだで皆にはいつも世話になってるから、お礼にと思っていたし」
 少し照れながら、そういう佑也にアルマは笑顔を見せた。
「ありがとう、これ、あたしからも……」
「ん?」
「大分ちっちゃくなっちゃったけど……」
 失敗しすぎて材料がなくなってしまったアルマが最後にやっと完成させられたチョコケーキ。
 それは、小さな手のひらサイズのケーキだった。
「アルマがケーキを……」
「だ、大丈夫だと思う。最後は真菜が全部計ってくれたし」
「真菜が?」
 その言葉を聞き、佑也はやっとアルマが自分と同じくクリスマスパーティのケーキ作りに来ていたことに気づき、小さく笑った。
「……一緒に食べようか」
「う、うん」
 2人はそれぞれのケーキを分け合い、皆でそれを楽しんだのだった。