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リアクション
クリスマスの夜に2人で
「お嬢さん、宜しければ僕と一曲踊って頂けませんか?」
シルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)はルイン・ティルナノーグ(るいん・てぃるなのーぐ)の手を取り、恭しく一礼した。
白いタキシードに青い蝶ネクタイ。
胸に薔薇のコサージュをつけたシルヴァは、いつもよりかっこよく、ルインはドキドキした。
「はわっ!? え、えと、ルインで良ければ喜んで……か、かなっ!」
あわあわと慌てながら、ルインはシルヴァに手を取られて、ホールの中央に行った。
そして、シルヴァのリードに任せて、くるくると舞うようにダンスを踊り、そんなルインをシルヴァは微笑ましそうに見つめた。
12時になる直前。
シルヴァはルインの手を取って屋上へと向かった。
実はレオンハルトを使って、早めに会場に着き、ピッキングを駆使して、屋上への鍵を開けておいたのだ。
シルヴァはコンビニで買っておいた使い捨てカイロを取り出し、冬の夜空を見上げながら、ルインと手を繋いだ。
手を繋いで感じる仄かな温もりに、ルインは微笑を見せながら、シルヴァと共に星空を見上げた。
「聖夜と言っても、誰かが祝福してくれる訳じゃない。でも人はそれを有り難がる。不思議ですね」
盛り上がるパーティ会場の方を眺め、シルヴァが小さく笑う。
「祝福……? よく、分かんないかな……」
ルインは困ったように笑みを返す。
それでも、シルヴァはルインの理解を求めていたのではなかったのか、それ以上追求せず、独り言のように呟いた。
「まるで星のようです。一見尊く見える幻。けれど、所詮夢は夢に過ぎないから綺麗なのです」
「シルヴァ様はお星様ほんとに好きなんだね……。でも、ルインはシルヴァ様の方がずっとずっと綺麗だと思うんだよっ! シルヴァ様は、ルインのお星様だもん」
いつもよりどこか儚げなシルヴァを見て、ルインはぎゅっとシルヴァに抱きついた。
シルヴァが何処かに消えてしまわないように。
そんなルインにシルヴァは優しい笑みを浮かべ、その髪をゆっくりと撫でた。
「まるでルインが僕のパートナーみたいですね。僕の花嫁さん、とでも呼んでしまいましょうか?」
囁くようにそう告げ、シルヴァは自分の首にかけていたペンダントをルインにかけてあげた。
「シルヴァ様……」
ルインはシルヴァに寄り添い、二人は聖夜の夜を星空の下で向かえたのだった。
夏野 夢見(なつの・ゆめみ)はパーティへは行かず、フォルテ・クロービス(ふぉるて・くろーびす)と腕を組んで、イルミネーションの綺麗な街を歩いていた。
「あ……クリスマスはやっぱり空いてるね」
夢見はそう言うと、空京神社の境内に上がった。
神社には誰もおらず、夢見とフォルテ2人っきりだった。
「そういえば何かお話があるのでは?」
「うん。話したい事って言うのは、これからの事なんだけど。あたし、フォルテと結婚してもいいよ」
その言葉にフォルテはきょとんとした。
「出会って三ヶ月でいきなり結婚ですか、ちょっと早くはないですか?」
「あ、責任取れって話じゃないよ!」
夢見は慌てて、これまでのことを謝り、改めて言った。
「あたしと将来結婚してくれるって誓って欲しいの。フォルテの気に入る女性になるよう努力するから。もう、あたしにはフォルテのいない生活なんて考えられないの……」
「ふむ……実は、私は最近昔の恋人を夢に見なくなったのです。……心配しないで下さい。その方はもう天寿を全うしましたよ。代わりに、夢見さん。あなたの夢を見るのです」
「え……」
「浮気症の癖、未だに初恋の人を忘れられない、こんな私で良ければ、あなたの告白、受け入れましょう」
その言葉に夢見は一度黙り、自分の指に何かを嵌め、フォルテの指に同じものを嵌めた。
「……これは?」
「婚約指輪の代わり」
それはシルバーアクセサリーのお店で買ったお揃いの指輪だった。
「これが答えだよ」
夢見の想いを受け、フォルテはそっと夢見にキスをした。
「あ……」
これまでの緊張をつくために、とフォルテがしたキスだったが、夢見はもっと緊張した。
それでもドキドキそてうれしくて、夢見はフォルテに身体を預けて、抱きしめられた。
「このままずっと二人でいたい。門限なんてなければいいのに」
夢見はフォルテの胸の温かさに瞳を閉じながら、そう願うのだった。