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リアクション
第4章
森の中では、おやじがまだ逃げ回っていた。
ジャタの森西を進んでおり、もう少しで森を抜けるところまできている。
「……やはり時間が」
そこでは、先回りに成功していたアシャンテがスナジゴクに指示を出していた作業が途中になっている。
まだこちらに気づいていないおやじが近づいて来た。
「……途中でもやらなければいけないか……繭螺、エレーナ頼む」
アシャンテが上空にいる2人に携帯で連絡すると、2人は頷き合いスキルを発動させる。
「繭螺ちゃん、行きますわよ?」
「うん!」
繭螺とエレーナはおやじの側へと近付く。
「んあ!?」
おやじは頭上で誰かが何かしようとするのを見て、煙幕を使おうとしたが、失敗。
繭螺は酸性度ゼロのアシッドミストで視界を悪くし、エレーナはヒロイックアサルトの幻惑の霧でほんの一瞬だけおやじに幻覚を見せる。
幻覚でおやじがハンドル操作を誤らせた。
その隙を見てアシャンテは高周波ブレードで腕を切りつけると、おやじは本格的に体勢を崩した。
おやじは立て直そうとするが、スナジゴクの作った大き目の穴にバイクのタイヤを取られてしまった。
「しまった!!」
やったかと思われたが、おやじは体勢をなんとか立て直し、森を抜け、平原へと出てしまった。
先ほどのアシャンテ達の行動のおかげで後ろでおやじを追いかけて来ていた人達が追い付いた。
「ちぃっ!」
おやじは舌打ちを1つすると後方へ何かを投げつけた。
瓶の中で液体が揺れている。
「任せな!」
馬に乗っていたフィーネ・ヴァンスレー(ふぃーね・う゛ぁんすれー)はグレートソードで叩きつぶした。
その瞬間、瓶は簡単に割れ中身が辺りに飛び散る。
中身は――油だ。
後方のバイク等はタイヤを取られそうになる。
更におやじはもう1つ投げつけてきた。
「させねぇぇっ!!」
今度は小型飛行艇で上空を飛んでいたレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)が遠当てで、おやじが投げた物を吹っ飛ばした。
「また火かよ……これ以上火事を起こして何が楽しいんだ!」
レイディスが吹き飛ばした物は火炎瓶だったのだ。
吹き飛ばされた時、一緒に火も消えてくれたので平原が火事になる事は避けられたが、もしこれが油の撒かれた所に行っていたらと思うとゾッとする。
ブチ切れているレイディスは更におやじの後輪に遠当てをぶつけようとするが、なかなか当たらない。
「これならっ!」
おやじの手から離れた何かは上空へと上がっていく。
「任せろ」
ちょうど良い位置に居たジェイコブが剣で払いのける。
と、同時に破裂した。
「へっ……はっ……へーっくっしょいっ!」
中身は大量の胡椒だ。
胡椒は空中で分散し、風下に居た人達にくしゃみと鼻水のコンボが発動した。
ジェイコブに運転を任せているユウガはくしゃみをしながらも、遠当てをおやじの前へと放ち止まらせるように仕向けるが、なかなか当たらない。
くしゃみと鼻水、それから胡椒の粉末で視界が悪くなっている為だ。
前方から近づき胡椒や油を回避出来た五月葉 終夏(さつきば・おりが)は、箒に乗り上空から隙を見ていたが、動いた。
「火ー付けたら何にも残らないからね。頭を冷やしてあげるよ」
滑空しながらおやじに近づき、氷術を放つ。
氷術はおやじの頭に直撃するが、おやじは直ぐに手にしていた『シナモンスティック』で凍った部分を叩き割った。
「ひゃっほーいっ! そんなへなちょこ氷なんぞ、簡単に壊せるわぁ!」
おやじの言葉に終夏はさらに怒りを増幅させたようだ。
「逝っちまいな!」
総司はおやじの後ろからガンマを構えるとガンマは言葉を発しながらスプレーショットを放った。
「中々面白い行動をとっているじゃないか」
サイドカーに乗っている大佐もハンドガンでおやじのバイクを狙う。
しかし、おやじも運転は慣れているのか左右に車体をくねらせ、標準を合わせづらくしてくる。
車体にはスプレーショットが何発か当たったようだが、タイヤには当たらず。
おやじの腕にハンドガンの弾が1発かすった程度となった。
おやじに隙が生まれた。
その瞬間を待ってましたと何人かが動いた。
刀真は小型飛空艇で上空から前へと回り込み、銃を構える。
武尊の運転するサイドカーに乗っているシーリルも財産管理で速度や風向きを計算し、シャープシューターでタイヤを狙う。
洋兵は小型飛空艇でおやじの左側に付きスナイパーライフルで照準を合わせる。
そして、合図があったわけでもないのに、ほぼ同時に弾が発射された。
が、シーリルのところだけは、並走していたマコトが鞄の小人を投げて武尊のハンドル操作を狂わせ為、少しぶれた。
武尊は舌打ちを1つしたが、シーリルが狙いやすいようになんとかバイクを走らせた。
3人の弾がおやじのバイクのタイヤを貫通した。
バイクは派手に転倒し、おやじはバイクから振り落とされる。
受け身を取りながら地面を転がるおやじ。
「ここまで来たッスから、逃がさないッス!」
サレンはまだ転がっていたおやじに飛びかかって抱きつき、しばらく一緒に転がってから止まった。
「確保ッス!」
「は、放せ! ティセラ様の元へと行くんだ!」
おやじは暴れて、サレンの腕をほどこうとする。
「観念するんだな」
小型飛行艇から降りたレイディスはおやじの喉元に剣を付き付けた。
「あんな事したんだ、もう泣いたり笑ったり普通に出来ると思うなよ?」
そして、武尊はおやじの胸倉をつかむと顔を殴り付けた。
「こちらにも、ソレよこして下さい。周りの人を守る為に自分を犠牲にする女性を見るのは二度目です……これは嫌な事を思い出させてくれたお礼です」
刀真は武尊がよこしたおやじの鳩尾に蹴りを叩きこんだ。
石化したホイップを見て、刀真は自分の過去と重ねたようだ。
「てめぇら、どけ」
怒気をはらんだ洋兵の言葉におやじから皆離れる。
すると、洋兵はその手のスナイパーライフルでおやじの両足を打ち抜いた。
「ぐあっ……」
「な、何もそこまでする事ないッス!」
サレンが抗議の声を上げた。
「俺はこういう奴が大嫌いなんだよ! 邪魔するってんなら……容赦しねぇぞ」
こうしておやじは捕まったのだった。
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