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リアクション
第5章
剣の花嫁達が襲ってきたのを見て、スープを配った男性を追いかける人達がいた。
「ソア、ベアと一緒に光学迷彩を使っててくれ」
緋桜 ケイ(ひおう・けい)は箒を操りながら後方で箒に乗っているソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)に言った。
「わかりました! 相手を油断させる作戦ですね!」
「わかったぜ」
ソアとベアはケイの意図をすぐに汲み取り、光学迷彩を使おうとした。
「お前ら! さっきの男追いかけてるんだろ!?」
下の方から声がした。
ヤギの獣人化して自転車に乗ったサンダー明彦がそこにはいた。
最初、何事かと3人はぎょっとしていたが、なんだか見たことのあるメイクだったのでサンダー明彦であることがわかったようだ。
「俺もヤツを追いかけてる。何かあったら協力するぜ? 氷術だって使える!」
サンダー明彦の言葉を聞き、ケイは自分達が男性を追い詰める為に氷術を使用した作戦を伝える。
それを聞き、サンダー明彦はすぐに了承した。
自分はケイと一緒に隠れず真正面からぶつかると告げる。
「なんだか……ホイップと会ったときは俺様達が守っていたが……今は安心してホイップを任せられるな」
ベアは光学迷彩を使う前にそう言った。
「本当ですね。なんとか剣の花嫁さん達が元に戻る方法を聞いてきましょう!」
ソアは、そう言うと光学迷彩でベアと一緒に姿を消した。
しばらく進んでいくと村の手前で男性を発見することが出来た。
「おいっ! 待てやっ!」
歩いていた男性はサンダー明彦の言葉で走り出そうとしたが、その足元をケイとサンダー明彦が氷術で凍らせた。
凍らせた地面を軽く飛び越し先へと進もうとする男性。
そこへ、隠れていたソアが氷術で作った氷の壁を男性の前と横に出現させ、行く手を阻んだ。
やっと男性の足が止まった。
「もう観念するんだな」
ケイがゆっくりと下降し、男性の背後から近付いた。
「剣の花嫁達を元に戻す方法を教えて貰おうか」
ケイの言葉に男性はゆっくりと向きを変え、ケイとサンダー明彦へと振り向いた。
先ほどとは違う雰囲気を湛えている。
長いマントを脱ぎ、カツラを取ると長い髪の毛が出現した。
そこに居たのは――。
■□■□■□■
石化ホイップの周りでは剣の花嫁達との戦闘が激化していた。
「全てはティセラ様の為に……ホイップ、70のD……巨乳を殺す!」
虚ろな瞳で襲い来るはユリ。
ユリは悲しみの歌を歌いだした。
周りにいる人達はどんよりと舞い降りた悲しみにより意気消沈してしまった。
「ユリ、やめる……んだ」
耳をふさぎながらララがユリの側へと行き、ユリを羽交い絞めにしようとする。
しかし、普段のユリからは考えられないほどの力でそれを振りほどいてしまった。
「嘆きの川を越えて来たれ、コキュートス・ピラー!」
リリの方はドーム状の氷の周りに時間稼ぎ用の氷の壁を出現させた。
振りほどかれたララはそれでもユリをホイップへと近付けないように羽交い絞めにしようとするが、やはりうまくいかない。
「ホイップ様と……わたくしの恨み思い知らせてやる、ですわーっ!」
ララが羽交い絞めにする瞬間を狙ってロザリィヌは轟雷閃をユリへと向けて放った。
少しだけ動きが止まっていたユリにそのまま命中するかに見えたが、ララがそれを庇った。
ララは轟雷閃をもろに食らい太ももからかなりの量の血を出している。
「ユリは操られているだけなんだ!」
「それじゃあ、気絶させれば良いよね!」
久世 沙幸(くぜ・さゆき)は雅刀を抜くと、刃先ではなく棟の方で構え、鳩尾に一撃を入れた。
確実に入ったはず――それなのに、まったく動くのをやめようとしない。
表情も変わらない。
痛いはずなのに。
どんどんホイップへと近付いてくるその歩みを止めたのは実だった。
ホイップの側を陣取っていた実は近付いてきたユリの足元に氷術を放ち、地面と足を一緒に凍らせたのだ。
「よっしゃ!」
実がガッツポーズをとっているのは、ともかく、今度は人型になったヌウが森にあった蔦でユリをぐるぐる巻きにし、更に自由を奪った。
「ごめん、でも、大人しくした方がいい」
ユリは必死に抵抗しようとするが、何重にも巻かれて抜け出せずにいる。
「ごめんね、ごめんね!」
ファルは謝りながら、ユリの鼻へとお化けキノコを持っていった。
キノコからは胞子が少し出て、ユリの体の中へと吸い込まれていく。
暴れていたユリはやっと眠り、その動きを止めたのだった。
「すまない、助かった」
リリはユリを止めてくれた人達に礼を言う。
「すみませんでしたわ……」
リリに攻撃を当ててしまったロザリィヌはしおらしく謝ったのだった。
「……」
「ファル、コユキ心配か?」
グランの側で思いつめたような表情をしている呼雪をみつめていたファルにヌウが声を掛けた。
「うん、でも大丈夫だよね?」
「ああ、勿論だ」
ヌウの方はグランを目を細めて見たのだった。
その表情は疑いの眼差し。
操られている魅音はホイップには近づかず、少し離れた場所から火術を放った。
火術はホイップの周りを囲んであるリリが作った壁によって阻まれホイップに届く事はなかった。
だが、リリの作った氷の壁は水蒸気に変化し、空へと登ってしまった。
「全てはティセラ様の為に……」
魅音はそう呟くと今度は雷術を放とうとした。
「ちょっ〜と、おねんねしてな」
しかし、横から接近した静麻が遠慮なしに全力で蹴り飛ばした為に雷術は発動しなかった。
魅音は木に背をぶつけるも、まだ術を発動させようとする。
術に集中している隙にリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)は魅音へとそっと近づき、キュアポイゾンを使用した。
「効いてください!」
毒を使われているわけではなさそうだ。
キュアポイゾンをかけられた魅音は平然としている。
それどころか、近寄ってきたリースに狙いを定め今唱えていた雷術を放ってきた。
「きゃっ!」
雷術がくると思って、目をつむり、自分の身を固くしていたリースは雷術がこない事に疑問を抱き、恐る恐る目を開けた。
そこには、リースを守るようにリースと魅音の前で仁王立ちしていた九条 風天(くじょう・ふうてん)の姿があった。
「リースさん……大丈夫ですか……?」
魔法攻撃力が増している為、相当な衝撃だったのだろう。
がくりと膝をつき、息が上がってしまっている。
「風天さん! 私なら大丈夫です……せっかく連絡をいただいて力になろうと思って来たのに……これじゃあ……私……」
泣きそうになるリースを見て、風天は首を横に振る。
「ボクがリースさんを守るのは当然の事ですから……というか、守らせて下さいませんか?」
力なく笑う風天に顔を赤くしながらリースはリカバリを掛けたのだった。
そんな事をやってるうちに、魅音の方はホイップへと走って距離を詰め出した。
至近距離から術を発動させようとしているのだろう。
「させません」
間合いに入ってきた魅音を剣の平で押し返したのはクリュティだ。
すこしだけ、魅音は下がる。
「い゛い゛な゛ぁ゛……い゛ち゛ご゛ち゛ゃ゛ん゛も゛カ゛ッ゛コ゛イ゛イ゛彼゛氏゛が゛欲゛し゛い゛! 邪゛魔゛し゛な゛い゛で゛ね゛!」
リースと風天を見ていたいちごは、そう言うとハウスキーパーで魅音を更に押し返した。
「い゛ち゛ご゛ち゛ゃ゛ん゛の゛彼゛氏゛は゛ど゛こ゛ーーー!?」
いちごはそのまま、背が高くてカッコイイ男性を探しに行ってしまった。
「まだやる気のようですね」
今度は綾乃が、まだ火術を使おうとしている魅音に向かってスプレーショット
とシャープシューターのコンボで攻撃。
弾は両太ももと両肩に命中し、動く事はなくなった。
「お姉ちゃん! やめてっ! それホイップ!」
玲奈は葵がホイップにランドリーによる攻撃をしかけようとしているのを必死にしがみついて止めようとしているが、その足が止まることはない。
「全てはティセラ様の為に……」
もう少しで攻撃の届く範囲内に入ってしまう。
そこへ強烈な光が。
玲奈と葵の視界を奪う。
更にダメージ最小限にしたアシッドミストを濃く狭く発生させた。
「ガイアスさん、今です」
「うむ」
視界を奪った張本人ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)がガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)に合図をすると、ガイアスは煙幕ファンデーションで視界を更に悪化させた。
「これなら……」
横で雷術のスタンバイをしていた神和 綺人(かんなぎ・あやと)は殺気看破で察知した気配に向けて雷術を放った。
当たった感触はあったようだ。
視界が戻ると雷術は当たっていたが、少し痺れた程度だったらしくまだ動こうとしている。
「お姉ちゃんーーっ! 止まってーっ!」
玲奈はまだ葵にしがみついている。
「そんなんじゃ止まらんだろ、っと」
陣は封印解凍によって攻撃力を上げると処刑人の剣で切り付けようとする。
「後でちゃんと治療します」
その横では真奈もハウンドドッグで手足を打ち抜こうとしている。
「や、やめて! お姉ちゃんが――」
「やられたく無いなら、パートナーのお前が食い止めろや!」
陣は懇願してきた玲奈に一喝した。
玲奈はびくっと肩を震わせると金砕棒を強く握りしめ、葵のみぞおちに一撃を入れた。
「お姉ちゃん……ごめんね?」
良いところに入ったらしく、葵は前のめりに倒れ込んだ。
「動きが止まってよかったです」
ジーナは言うと、ホイップのところへと行こうとする。
「何をする?」
ガイアスが質問する。
「地面を掘ってホイップさんを隠してしまおうと――」
「いや、グランがさきほどホイップは動かしてはいけないと言っていたぞ?」
「えっ? あっ? そうなんですか?」
ガイアスの言葉にしょんぼりと戻ってきたジーナだった。
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