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結成、ガーディアンナイツ!

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結成、ガーディアンナイツ!

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ACT8 本当に戦うべきものたち


 サルヴァトーレたちとヴェルチェたちが邂逅を果たしていた頃。
 ガーディアンナイツとガートルードたちの戦いは激しくなっていた。
 しかし今やもう皆、なんの為に戦っているのかを見失いはじめていた。
 元々はサンドタウンを救うための戦いだったはずだが、いまはそうではない。お互いはお互いのメンツをかけて拳を交えていた。
 見るものが見ればこれはただの喧嘩に見えるかもしれない。
 そんな戦いの中ですっかり忘れられていたミスターカメレオンはなんとかこの場を逃げ出そうと地面を芋虫のように這って進んでいた。
「カメッへっ、こんな町の為に命を賭けられるかよ!」
 と、そんなカメレオンの前に誰かの影が立ちふさがる。
「んっ――?」
 ミスターカメレオンが不審に思って顔を上げて見ると、そこにいたのは赤い瞳をサングラスで隠した銀髪の男――レン・オズワルドだった。
「もう無意味な争いはやめろッ!」
 と、レンは戦うガーディアンナイツとガートルードたちに向かって声を張り上げて叫ぶ。
 その気迫の篭った声にみなの手が止まった。
 そして声が聞こえてきた方を皆は振り返り、目を丸くする。
 レンの後ろ――そこには銃や鍬、フライパンにパチンコ鉄砲など武器になりそうなものを手にしたサンドタウンに生まれ住んでいる老若男女が大勢立っていたからだ。
 そして皆一様に決意の篭った目で地面にいたミスターカメレオンを見つめる。
「皆、何してるのよ! 何も言わないままでいいの? 声を上げて戦うんでしょう!?」
 とそう言って人々に喝を入れるのは人質救出に向かっていた朝倉千歳。
 彼女が助け出した人質たちや人質救出に向かったガーディアンナイツのメンバーたちももいまこの場に立っていた。
「でっ、でていけ……!」
 と人々の中から小さいながらも最初の声があがる。
 するとどうだろう。
 押し寄せる津波のように、人々の口から言葉が次々と飛び出してきた。
「俺たちの町から出ていけ!」
「ここがワシたちの育った町じゃ! 誰のもんでもないわ!」
「もう俺たちはお前のいいなりなんかにならん!」
「どんなことをされても怖くない! 大切な人たちを守るんだ!」
「ぼくはたたかう! わるい奴になにをされても泣いたりしないぞ!」
「わたしだって、たたかうもん!!」
 それを聞いていたミスターカメレオンが大きな声をあげて笑う。
「カメーッへッへッへッヘッ! 犬は群れると本当に強くなるぁ……1匹じゃないもできないクズのくせによぉっ!」
「確かに、彼らは狼にはなりきれない犬だろう。いままで彼らはおまえの与えた恐怖という鎖に繋がれていたのだからな」
 と、レンがミスターカメレオンを睨みつけて言う。
「だが今の彼らはただの犬ではない。鎖を自ら断ち切り、恐怖と向き合い逃げ出さずに戦うことを選んだ本当に勇敢なものたちだッ! この町のために命をかけて戦うことを選んだ彼らを笑うことを俺は許さない!」
「――へっ、そうかよ」
「そうだよ、バカヤロー!」
 パチンコ玉鉄砲をミスターカメレオンに向けて発射する男の子。彼の目にも強い意志が宿っている。
「カメッ、じゃあどうするんだ? 俺様を殺すのか? そうしたきゃ早くやればいいだろうが!」
「それを決めるのは俺じゃない。町の者達が決めることだ。それが荒野のルールというものだろう?」
 レンはそう言うと口元に笑みを浮かべる。
「……みんな、剣を引いてくれ。もう俺たちの役目は終わったはずだ。無益な戦いはよしておこう」
 そしてレンはガートルードと戦っていたガーディアンナイツのメンバーにそう言った。 レンの言葉にガーディアンナイツたちは収める。
 と、サンドタウンの人々の中の誰かが今度はガートルードに向かって叫ぶ。
「おまえもこのカメレオン野郎と同じパラ実生だな! この町からでていけ!!」
 すると、他の人たちもそれに賛同の声を上げて武器を振り上げる。
「ちょっと待ってよ!」
 と、そんなサンドタウンの人たちの前にリカイン・フェルマータが少し怒りながら人々の前に飛び出してきた。
「確かにコイツみたいに悪い奴もいるけど、みんながみんな悪い人じゃない。ちょっとした事だけで人の事を悪くいうのはよくないわよ!」
「そうだ、あの姉ちゃんはそんなに悪い奴じゃないぞ! たぶん、おそらく、もしかしら!」
 と、リカインに加勢して童子華花も飛び出してくる。
「そうね、華花が殴られそうなところを助けてくれたしね」
「そうだな」
 シルフィスティ・ロスヴァイセと天夜見ルナミネスも先のふたりに同意して頷く。
「親分――どうしますか?」
 と、まだ戦いたそうなウィッカーがガートルードに窺い訊ねる。
「先生……ここは無法の荒野でパラ実の領土です。ですが、この地には誰にも変えられないルールがひとつだけあります。
 それはこの荒野は無法であるからこそ、その場所を支配するものがルールを決められるというルールです」
 ガートルードはそういいながら、大勢集まったサンドタウンの人々を見た。
「支配者がミスターカメレオンではなく町の者達だというのなら、その者たちの言うことがルール――それに私も従いましょう」
「引くのか?」
 国頭はガートルードの意外な言葉を聞いて、思わずそう言った。
 するとガートルードは頷いて、踵を返す。
「帰りますよ、皆さん」
 そしてガートルードはそう言うと部下達を引き連れて、サンドタウンの町から引き上げていく。
「――ガーディアンナイツの皆さん」
 と、ガートルードは突然足を止めて肩越しにガーディアンナイツのメンバーを見やると言った。
「今回は引きますが、もしあなた達ミルザムの飼い犬がまた私たちのパラ実の領土で何をしようというのなら――全力で潰します。その事だけは覚えておいてください。ミルザムにもよろしく」
 そして今度こそ本当にガートルードたちは去って行く。
 ガーディアンナイツとサンドタウンの人々はその後姿を様々な思いを持って見送るのであった。