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隠れ里の神子

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隠れ里の神子

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第1章 隠れ里ってどこにある!?

 窓から差し込む柔らかな陽射しに一瞬、蒼空学園在籍の巫女である御子柴鞠乃(みこしばまりの)は目を細めた。彼女の端正な顔立ちにその表情はいささか不似合いに見える。
「あなたが御子柴鞠乃ちゃん?」
そう言って、鞠乃に近づいてきたのは、クイーン・ヴァンガードのアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)だった。鞠乃はアリアの方をちらりと見やり、
「そうだけど」
 とそっけなく答えた。
「あぁ、良かった。私はアリア・セレスティ。鞠乃ちゃん、隠れ里に行こうとしているって本当?」
「本当よ。神子になりたいなって思って」
「そうなんだ。私も神子になれるかな?」
「さぁ……。私にも詳しいことはわからないの。だから、隠れ里に行ってみようと思ったのよ」
「そっかぁ……。じゃあ、私が護衛してあげる☆」
「あなたが?」
 怪訝な顔をして問う鞠乃にアリアはウィンク一つして見せた。
「大丈夫だよ。こう見えて、私強いんだから」
「じゃあ……お願いするわ。1人で行くのは心細いし」
「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!」
 突然聞こえた大声に鞠乃もアリアも振り返る。
「可愛いお嬢さん2人っきりでどこにあるかもわからない隠れ里に行かせるわけにはいかないなぁ」
 黒と白を基調とし、竜をモチーフにした防具を身にまとった武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は颯爽と現れた。
「あんた誰?」
 鞠乃は眉間に皺を寄せて、牙竜に問う。
「俺か? ケンリュウガー。ただの正義の味方だ!」
「あっそ」
 鞠乃は興味が沸かなかったのか、牙竜を適当にあしらうと視線をアリアに戻し、どのようなルートで隠れ里に行くかを相談し始めた。
「ちょっと! それだけ!? あんまりじゃない!?」
「だって、今、私たち忙しいんだもの。あなたに構っているヒマはないの。ごめんね」
 アリアにまで冷たくあしらわれ、牙竜は思わずその場で立ちすくむ。
「いやいやいやいや! 俺も護衛するから! 1人よりも2人! 2人よりも3人だって!」
 牙竜の言葉に鞠乃とアリアは顔を見合わせる。
「まぁ、いいわ」
「そうこなくっちゃっ!」
 牙竜はウィンクをして見せたが、残念ながら、マスクが邪魔をして、それを鞠乃とアリアに見せることはかなわなかった。
「人数が多いに越したことはないし」
 鞠乃のその発言を聞いて、周りに一瞬にして人だかりが出来る。
「いやー、その言葉を待ってたのよねー」
 サイドテールと巨乳を揺らし、久世 沙幸(くぜ・さゆき)は鞠乃の机の角にちょこんと腰をかけた。
「ほら、隠れ里って名前からして、興味をそそるじゃない? 一度は行ってみたかったの。でも、ほら、なんせ、こんな可憐な乙女が一人で行けるようなところでもないでしょ? だから、一緒に行かせてよ☆ 私が出来ることは何でもするからさ。ね?」
 沙幸はそう言って、いたずらっぽく笑って見せた。その顔にはまだ幼さが残っている。
「俺も同行させてもらうぜ。獣人を密猟の対象としか思っていないレティーフは許せないんでね」
 眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら、葛葉 翔(くずのは・しょう)は言った。
「そうそう、知ってるか? レティーフの奴、プットを人質にして隠れ里を探してるらしい。鏖殺寺院と戦ういい機会だから、俺もアイツらを見つけるまで同行させてもらうぜ」
 天城 一輝(あまぎ・いっき)はニカっと白い歯を見せて笑った。それを隣で見ていたパートナーのローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)も「私も一輝の手助けをする為に一緒に行かせていただきますわ」と上品に微笑んだ。
「あの……私もご一緒していいですか? 神子と呼ばれる方に色々お話をうかがってみたいんです。そして、出来れば……その、チョコを一緒に食べたりなんかしちゃったりして……」
 藤原 すいか(ふじわら・すいか)は控えめに言いながら、黒色の瞳を数回しばたたかせる。その後、パートナーのイーヴィ・ブラウン(いーびー・ぶらうん)を見上げた。前髪ぱっつんの黒髪ロングヘアをかきあげて、イーヴィは意味ありげに微笑んだだけだった。
「隠れ里に神子がいるのが本当ならぜひ会ってみたいな。それにこんな可愛い女の子が困っているのをほうってはおけないし」
 そう言って、サトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)は綺麗な黒髪を揺らし、鞠乃に微笑みかけた。
「かっ、可愛くなんてないけど……」
 鞠乃は赤くなり、俯いてしまった。
「全く、ルウ君はストレートな人ですね。まぁ、私はルウ君が行くというなら、一緒に行きますけど」
 銭 白陰(せん・びゃくいん)は涼やかな微笑を浮かべた。そんな白陰を押しのけて、ナイト・フェイクドール(ないと・ふぇいくどーる)は元気いっぱいに、
「ボクは獣人さんとお話してみたいのです! だから、ボクは二人について行きますなのです!」
 と満面の笑みで言う。それをサトゥルヌスと白陰は微笑ましく眺めていた。
「僕も一緒に行ってもいいですか? シャンバラに明るい未来を築くために、女王復活のための協力の約束を取り付けたいんです」
 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は落ち着いた口調で話す。その雰囲気からは誠実さがうかがえた。
「私からもお願いします。2人だけで行くにはいささか荷が重いというのが正直なところです。皆さんと一緒に行かせていただければ、心強いですし」
 優斗のパートナーである諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)は、そう言って、優しく微笑んだ。その場に居合わせた女性陣が思わず見惚れて、感嘆の溜め息をつく。
「俺にも手伝わせてくれ!」
 甘い雰囲気を一瞬に現実に戻したのは景山 悪徒(かげやま・あくと)だった。彼は全身黒ずくめという出で立ちで異彩を放っていた。パートナーである小型 大首領様(こがた・だいしゅりょうさま)は、そんな悪徒を横目でちらりと見やると静かに「我からもお願いする」と言った。
「あの……」
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)はおずおずと鞠乃の方に歩み寄る。
「私も一緒に行ってもろしいでしょうか。私には戦うことしか出来ません。ですから、鏖殺寺院と戦いたいのです。鏖殺寺院を許すことは出来ません」
 小夜子は穏やかに、だが、強い意志を感じさせるように言葉を紡いだ。
 鞠乃は同行したいと言った生徒たちを一瞥すると、
「じゃあ、みんなで行きましょうか……。でも、さすがに人数が多すぎるのよねぇ……」
 と考え込み始めた。