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隠れ里の神子

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隠れ里の神子

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第3章 隠れ里ってここだった!?

「あっ、タマ、こんなところにいたのかよっ!?」
 実は偶然通りかかった場所でへたり込んでいる珠樹を見つけた。
「やーん。みのるん会いたかったぁぁぁぁっ!」
「みのるん会いたかったぁぁぁぁっ! じゃないだろ!? どうして、タマはあんなわけのわからない置手紙だけで、勝手に出掛けるわけっ!? 一言一緒に行こうと言ってくれればいいのに!」
「なぁに? 置いて行かれたから、拗ねてるの?」
「そんなんじゃねーよ!」
「じゃあ、何で、そんなに怒ってるのよぉ」
「心配してたんだよ。ったく、心配かけさせんなよな」
 そう言って、実は珠樹の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「で、こっちにいる方々は?」
「あぁ、ひもじい私にチョコレートを恵んでくださったシルヴェスターさんと、そのパートナーのガートルードさん。それから、こちらはその時、偶然通りかかられてここまで一緒に来た陽太さん」
「あー、どうも。タマのパートナーの新田実です」
 言って、実は深々と頭を下げた。
「で、だ。タマはここで何してるわけ?」
「お腹が空いて歩けなくって……」
 そう言った瞬間、木の中からアライグマの獣人と思われる獣人がぴょっこり出てきた。
「…………」
 そこにいた一同は自分の目を疑い、沈黙した。
 アライグマの獣人と陽太は目が合い、硬直する。
 アライグマの獣人はしばし時間が止まったように静止した後、何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうとした。
「ちょっ、待て待て待てっ!」
 実は慌てて、獣人の肩を掴んだ。
 アライグマの獣人は泣きそうな顔をしながら、実を潤んだ瞳で見つめる。
「大丈夫ですよ。私たちはあなたに危害を加えるようなことはしませんから。ただお聞きしたいことがあるだけです」
 ガートルードは優しく微笑みかけた。それにほっとしたのか、アライグマの獣人は逃げ出そうとするのを止めた。珠樹たちが一通り自己紹介を終えると、アライグマの獣人はぽつりぽつりと話し出した。
「ボクの名前はエド。見ての通り、アライグマの獣人です。今日は何だかジャタの森が騒がしくって、ちょっと様子を見に行こうと隠れ里から出てきたところで、皆さんに会いました」
「そうだったんですね……。それは申し訳ないことをしました」
 陽太は深々と頭を下げた。そんなところに偶然数人の生徒たちが通りかかった。
「もしかして、隠れ里に入る為の交渉でもしているのか?」
 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)は立ち止まると、片眼鏡を定位置に戻しながら言った。玲の近くには彼女のパートナーであるレオポルディナ・フラウィウス(れおぽるでぃな・ふらうぃうす)、玲たちとジャタの森を歩いている時に知り合った佐伯 梓(さえき・あずさ)と彼のパートナーであるカデシュ・ラダトス(かでしゅ・らだとす)、それから神倶鎚 エレン(かぐづち・えれん)と彼女のパートナーであるアトラ・テュランヌス(あとら・てゅらんぬす)がいた。
「あなたたちは……?」
 ガートルードが驚いたように訊くと、
「それがしらは、隠れ里を探し、ここに辿り着いた。まぁ、目的は様々だがな」
 と玲が答えた。
「目的……?」
 エドは怯えたように玲たちを見上げる。
「大丈夫ですよ☆ 怖がることはないのです。目的と言っても、獣人さんたちと仲良くなりたいって思ってたり、神子さんとお話したいなーって思ってるだけですから。痛いことも怖いこともしないから、心配ご無用なのです」
 レオポルディナはにぱっと笑うと、エドの目線に合うようにしゃがみこんだ。
「ね?」
 レオポルディナに言われて、エドはこくりと頷いた。
「まぁ、あれだ。痛いのとかって楽しくないだろ。俺も獣人と戦闘になるかも……とか思ってたけど、どうやらそんな必要もないみたいだよな。お前見てると」
 エドの頭をくしゃくしゃと撫でて、梓は言った。
「すみません……。アズサは少々ガサツで……。痛くはなかったですか?」
 心配そうにカデシュはエドに問う。
「大丈夫……」
 エドは恐る恐る顔を上げた。人間は怖いものだと思っていたが、その見解は間違っているのかもしれない、とふと思った。人間イコール密猟者ではないのだ。そこまで怯えることはないのかもしれない。
「でさ、私は神子に会ってみたいのよ。それに必要であれば、あなたたち獣人の庇護もしたいと思ってる。だから、隠れ里に入らせてもらえないかしら? 勿論、危害は加えないし、何かあれば全力であなたたちを守る。どうかしら?」
 エレンは言葉を選びながら、エドに話す。それを隣でアトラが静に見守っていた。
「ボクからも頼むよ! 神子はボクたちにも必要だし、君たち獣人と仲良くなりたいって思ってる人たちはいっぱいいるんだ。ボクを見てもわかると思うけど、獣人の中には彼らとパートナーの契約を交わすヤツだっているんだ。密猟者だけじゃないんだよ」
 アトラは早口で捲し立てると、エドの瞳をじっと見つめた。
「……そこまであなたたちが言うなら、隠れ里に案内するのは良いでしょう。ただ……」
「ただ……?」
 梓はエドに鸚鵡返しに問う。
「ただプットが人質に取られています。彼を助けてくれたら、案内するということでどうでしょう?」