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リアクション
第三章 VSパラミタオオダコ 1
パラミタオオダコ。
それは『海の悪魔』とも形容されている生物であり、大きな触手で獲物に巻きつき、絞め殺してから食う。
主なエサは、イルカやサメ。
そう。パラミタオオダコにとって、今この場所は絶好の狩場に見えたことだろう。
「おい、なんだよこりゃ、やべぇよ!」
突然の乱入者に、周囲は騒然となる。
逃げ遅れたボートのことごとくが、高波に大きく揺れた。
「う、うわぁ!」
揺れのせいで運悪く、バランスを崩したガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)が海に落ちてしまった。
その身体に向けて、にゅるにゅるとタコの触手が伸びていく。
「ガートナ! 今、助け……おい、そこのタコ野郎!」
瞬間、島村 幸(しまむら・さち)が叫んでいた。両手に持つライトニングウェポンの照準をタコにあわせる。
「行きますよ、電圧さいだぁいぃぃ!」
即発射。
だが、オオダコに着弾した電撃は、タコの表面を覆う体液に阻まれ、バチリと滑っていく。
そして、電撃はそのまま海へと伝わり。
「がぁぁぁああぁああああぁ!」
ガートナが巻き添えになった。
「ちっ。それでは、光条兵器でしとめてあげましょう!」
瞳をギラリと輝かせ、幸が光条兵器をタコに放った。
ガートナーへと伸びていた触手が、弾けるようにして打ち払われる。
「うぁあああああぁぁぁぁぁぁぁ」
そして、やはりガートナはその衝撃に巻き込まれていた。
「幸、いいんだ、私に構わず逃げ……」
ガートナーは健気に声をかけるのだが。
むぎゅ。
彼の言葉はそれで最後になった。
幸がガートナの身体を足場にして、タコへと立ち向かっていったから。
*
「皆さん、逃げてください……あれ?」
指導員の思いとは裏腹に、討伐対の面々はタコに対してある種殺気立っていた。
「陣。タコって食べれるよね」
「あぁ、もちろん」
じゅるりと涎をたらすリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)に七枷 陣(ななかせ・じん)が不適に答える。
「フカヒレにタコ料理って、豪勢だよね!」
「せやな。そや、オレ、タコ焼き作ったろか」
「それ、いい!」
諸手を打って、陣とリーズが小型飛空挺を駆る。
タコの近くまでたどり着くと、伸びてくる触手を交わしながら周囲を旋回した。
「たしか、電撃は効かないんやったか。それじゃあ、リーズ。あれ頼むわ」
「了解だよ! ……タコさん、どっちが喰われる立場なのか、もう一回よく考えようね」
リーズがタコに向けて見えない重圧を飛ばす。途端、触手がびくりと震え、動きが鈍る。
「おっしゃ、まずはその足もらうでー!」
海面擦れ擦れを包容にして、飛空挺がタコへと向かう。
交差する刹那、刺し伸ばされた忘却の槍がタコの足一本を貫き取っていた。
「獲ったどー!」
「私たちも負けてられないわね」
グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)と上杉 菊(うえすぎ・きく)が曳航するボートの上で、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が呟いた。
「ちょうどいい感じに、水中に逃げたみたいだぞ、ローザ?」
タコの動きを観察していたジェンナーロ・ヴェルデ(じぇんなーろ・う゛ぇるで)の言葉を受けて、ローザは大きく頷いた。
「みたいね――テレサ、セレン、頼んだわよ」
海の中で待機していたのは、シャチの獣人姉妹ルクレツィア・テレサ・マキャヴェリ(るくれつぃあてれさ・まきゃう゛ぇり)とシルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ(しるう゛ぃあせれーね・まきゃう゛ぇり)。
「行こう、お姉ちゃん。この海は、あたしたちの領域(シマ)だよね」
「そうね、美味しく食べちゃおっか」
ともに笑って頷きあうと、獣化した2人はとぷんと海中へと潜っていった。
残された4人は、心配そうに呟く
「はぁ、あのタコも気の毒なこった。水中では無類の強さを誇る姉妹の前に、どれだけの部位が残ることか……。狩られる側に転落した捕食者ほど哀れなもんはないな」
「えぇ。サメだろうがタコだろうが、海の覇者たり得ない――レプンカムイが居る限り」
もちろん、心配していたのは、敵の未来についてだったが。
一旦オオダコよりも深く海底へと潜ったルクレツィアとシルヴィア。
ちょうど真下にまで移動すると、凝縮させた音波を敵に向かってぶち当てた。
直後、時速82kmの猛スピードで、オオダコ目掛けて突進する。ぬらりとした巨体が、海上へと浮き上がった。
「喰らいなさい」
無防備になった獲物を、ローザマリアが狙撃する。が、決め手となるような一撃にはならなかった。
「どんだけぬめっているのよ、あのタコは」
「焦んなくても、あの二人がやってくれるさ」
ジェンナー呂が呟いた直後、再び着水したタコに向かって、ルクレツィアとシルヴィアが高速で接近。噛み付くと同時に、獲物を捩じ切っていた。
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