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リアクション
5、食品フロアと料理コンテスト・夕
夕食時の食品フロア。
狐耳の白絹 セレナ(しらきぬ・せれな)は九条 風天(くじょう・ふうてん)のカートの前側をがっちりつかんで離さない。どうやら相当食べたいものがあるようだ。
「おい、風天! 油揚げは無いのか! 私は油揚げが食ーべーたーいーんーだー!」
「ああ、いつものですか。とりあえずは一通り回って本日の特売品からチェックして行きましょう」
「駄目だ、今じゃなければっ。ふーうーてーんー……、そのまま食っても良し、鍋や汁物に入れても良しうどんに乗っけても良い。色々使えるぞっ!」
「今宵は欲しいものとかあります?」
風天はセレナをスルーして、坂崎 今宵(さかざき・こよい)に買い出しの意見を求めた。今宵は声をかけられると姿勢を正して、調理道具の買い替えを提案する。
「欠けてしまった包丁各種と、鍋一式、武蔵さんがフライパンを焦がしたのでフライパンを……って、武蔵さんいませんね」
宮本 武蔵(みやもと・むさし)は外見的にはいい大人だが、実年齢もいい大人である。つまりは大人である。大人なのに。大人なのになぁ……。
風天と今宵はそこまで考えて、しばし沈黙した。
「良いですよ。必要なもの片っ端から買ってきて下さい。どうせ荷物持ちはセンセーですし。ああ、人ごみが多くてセンセーがドンドン離れていきます……」
「迷子の呼び出しも頼んでまいります。武蔵さんは多少重いものを持たせるくらいでちょうどいいかもしれません」
今宵はアナウンスを頼もうと薫に声をかけるが、薫はその人ならあっちのほうに歩いて行ったと肉売り場を指さした。他の人より頭一つ大きい後姿はウィンナーの試食に夢中になっているようだ。
「あれ? 大将どこだぁー!? くっそ! 試食品に目が眩んでたら大将達とはぐれちまった!」
「今宵殿、あの御人で間違いないでござるよ」
「……お世話になりました」
人の波でお祭り気分になった武蔵はあっちのお刺身、こっちのメロンと目についたものを片っ端から食いまくっていた。そのうちどんどん離れて行って、ついにはどこにいるのか分からなくなってしまったそうな。
「おー、嬢ちゃん!! ここぁ、いったいどこだ? すっかり迷っちまってな、がっはっは!! ……あいてっ!!」
「さ、武蔵さんはこの調理道具をもってください。あっちに殿が……、なんでしょうあの山は?」
豆腐のコーナーではセレナがお徳用油揚げパックをにぎりしめ、風天に再度プレゼンテーションを挑んでいるところだった。さあ、さあ! 買うのだ!!
「折角ですから、あの超高級油揚げとかどうです?」
なっ!?
「な、なんだと……最高級油揚げ……だ……と……」
セレナは震える指先で最高級油揚げのパッケージを指でなぞると、本当にこれで合っているのかと目で問い合わせた。
「たまにはいいでしょう」
空耳でないのを確認すると、一瞬セレナの背景にフラワァッ! とお花畑が見えた。こ、こんな機会は2度こないかもしれない。いっぱい買っておこう、風天の気が変わる前に!!
「ちょ、ちょっと!? カートに入れすぎな気がしますが……。こ、このままでは食卓が油揚げ祭りと化してしまいます……!」
「使う予定が無ければ作るんだ! 私は油揚げが入っていれば、朝飯は味噌汁とご飯で良いのだぞ!!」
ぽいぽいぽぽいっ! 1枚でも多く、高く積み上げるのだ!
「まぁ、白姉なら何枚でも吸い込んで行くから大丈夫でしょうけど、責任持って食べてくださいよ〜?」
「うむ、私は幸せだ!!」
「殿、これは……」
合流した今宵は油揚げの山にただ呆然とするばかりであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「しかし今夜は何にしましょうかね……」
「瑠璃こういうところあんまり来たこと無いから面白いの!」
「まぁ……折角瑠璃と一緒ですからね、瑠璃に選んでもらいますか」
「いいのー!?」
緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は買い物カートを押しながら、はしゃいでいる紫桜 瑠璃(しざくら・るり)に優しく声をかけている。今日の晩御飯を自分が選べるなんて、滅多にできることじゃない。兄様とお買い物できるだけでも楽しいのに、ええと、いったいどうしよう……。
「何が食べたいですか? ここは試食が自由ですから、実際に食べてみて決めてもいいですよ」
「そうなの!? じゃあ、選んでくるねー……っ」
「あんまり食べ過ぎてお腹一杯になったりとかしたら駄目ですよー……って、もうあんな遠くに」
瑠璃は全速力で総菜コーナーを目指していった。遙遠の声が聞こえると振り向いて頷いているが、よそ見をして走っているため誰かとぶつかりそうでハラハラしてしまう……。
「……まぁ今日は女装も何もしてませんしね。たまには売り上げ貢献です。特売品で済ませたい気もしますが……何がありますかねぇ」
瑠璃が向かった総菜コーナーでは、金欠自慢の比賀 一(ひが・はじめ)が片っ端から試食をしまくっていた。ハーヴェイン・アウグスト(はーべいん・あうぐすと)は注意された時に備えて逃げる準備まで整えているパートナーの姿に大げさなため息をついている。
「やれやれ、コイツの食い意地の張りっぷりには驚きだぜ」
「アンタが言うか? 人の金少しずつちょろまかしてんの知ってんだぜ俺ぁ……って、ん?」
視線を感じてあたりを探すと瑠璃が自分をじーっと見ている。一は迷子になったのかと思い、楊枝に刺していたウィンナーのかけらをパクリと食べると瑠璃の目線に合わせてしゃがみこむ。
「どうした、はぐれたのか」
「違うよ! ……ねえ、どうして大人なのにいっぱい食べてるの?? 兄様は、食べ過ぎちゃダメって言ってたよ?」
グハッ!!!
こ、ここのところ稼ぎが少なかったものだからロクなもん食って無くて……。
なんて、こんな子供に言えるかドチクショウッ!!
「……知ってるか? 試食コーナーの三原則」
「ううん」
ぷるぷると首を振る瑠璃の肩にぽんと手を置くと、一はいい笑顔を浮かべて瑠璃の知らない世界の常識をレクチャーしてあげた。じゃっかん口の端が痙攣しているのはハーヴェインの気のせいだと思う。
「いいか、これは何処においても使えるんだ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
☆試食コーナーの三原則
一つ、目を合わせない
二つ、美味いと言わない
三つ、試食する時は足を半歩引き、逃走準備を整える
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「四つ、コンテストの審査員をやる」
「そう、審査員を、って……」
一の後ろにはニヤニヤ笑いのナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が、ハーヴェインに酒という名の賄賂を渡しているところだった。もにょもにょとナガンが耳打ちすると、ハーヴェインは『がっはっは』と陽気に笑って何やら承諾しているようだ。
「いやぁ、いいものもらっちまったなぁ」
「何で笑ってんだよ。とにかく、俺から盗った分3倍にして返してもら」
「ナガンパーンチ」
「うからヘブラッ!!!」
瑠璃はどてっ腹に奇襲を受けて泡を吹き、そのままナガンに担がれて行った一を心配そうに見つめている。ハーヴェインに大丈夫なのかと尋ねると、彼はもらった酒びんを大事そうに抱えて『あれでいいのだ』と頷いた。
「あのお兄ちゃんは、あっちで料理コンテストの審査員をやるんだってよ」
「そうなんだ! じゃあ、兄様に教えてあげようっ」
「兄様ーっ」
「美味しそうなものはありましたか?」
「あのね、試食のお兄ちゃんがね。えと、逃げおくれて? つかまっちゃって、シンサするんだって!」
「はい……?」
遙遠は詳しく聞いても状況がよく分からなかったので、その日は海老フライとハンバーグを購入。仲良く手をつないで家路についたそうな。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
食品フロア主催の料理自慢コンテストの今回のテーマは『おふくろの味』! 見た目・味・香が審査対象であり、コンテスト会場の特設厨房では各選手が気合の入った表情で決戦の時を待っている。ルールはいたってシンプル……その場で料理を準備し、皿に盛り付け、審査員に食べさせればオッケーだ。ただし空京百貨店側の『料理文化を楽しく学んでもらいたい』という意向により、参加者同士のコミュニケーションを重視しているのが特徴。個人参加の選手は1つの厨房を複数人で使用してもらう。たんに厨房の数が足りなかったわけではない、決してだ!! ほら、テレビ中継とか考えるとね。うん。
〜厨房A〜
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は特技が調理ということもあり、なかなか本格的な料理を出品するようだ。対して同じ厨房の七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は半分ナガンへのお礼が目的なので、あまり気負わず食べ慣れている味で勝負するらしい。
「本郷さんは……サバ味噌ですか? お出汁のいいにおいがしますね〜」
歩がパッと見たところ、涼介は鍋の昆布出汁に下ごしらえの終わったサバと砂糖、酒、醤油、生姜をいれて一煮立ちしているところのようだ。皮目が上にくるように並べてまわりにネギを入れている。
「味がしみこみやすいように皮目に切り込みを入れるのがポイントですよ」
頭、尻尾、内臓をとってよく洗ったサバは2枚におろし、ぶつ切りに。塩と酒を振って30分置いてからよく洗い霜降りをしているため、サバ特有の生臭い匂いはすっかり抜けていた。サバの表面に煮汁をかけながら落としブタをして10分ほど煮る間、隣の歩が冷蔵庫をごそごそしているのに気づいた。
「七瀬さん、こっちに味噌ありますよ」
「ほんとだ♪ ご飯も炊けたからかき混ぜておかなきゃ。しゃもじ、しゃもじ」
歩が作るのはご飯とお味噌汁、そして好物であるハムエッグだ。最初にバターをちょっとだけ溶かしてハムを炒めるのが隠し味である。
「……うちは結構貧乏だったからあんまり豪華なのは無理だけど、美味しくできるといいなぁ」
内心、ナガンがどんな料理を作るかも気になっている。直接お礼に行くのは気恥ずかしいので、このコンテストはチャンスなのだが……。おっと、涼介にもらった味噌も使ったお味噌汁の具剤は大根のようだ。
「葉っぱは入れないんですか? ハムエッグ、美味しそうな黄色になっていますね」
「うちは白いところだけでしたねぇ。えへへ、卵はやっぱり半熟です」
涼介は味噌、砂糖、みりんをあわせた味噌だれを煮汁で伸ばし、サバの表面に塗るように入れて、煮汁をかけながらさらに3分煮込んでいる。
「サバ味噌、キラキラしてますね〜♪」
「鯖を皿に取り出した後も大事なんですよ。こうしてとろみが付くまで煮詰めるんですが、火を入れ過ぎると味噌の香りが飛ぶので油断ができませんね」
「あっ、お味噌汁だいじょうぶかな」
最後に、サバ味噌にあしらいとして白髪ネギを添える。涼介のサバ味噌の完成だ! 歩も盛り付けが終わって、2人で審査員のところに料理を運ぶことにする……。
〜厨房B〜
おふくろの味っていうより、ママの作ってくれた味……。
緋姫崎 枢(ひきさき・かなめ)が一番最初に思いついたのはアップルパイだった。偏食だった自分に、ママがおやつに作ってくれたアップルパイ。手伝いをするうちに作り方を覚えた、思い入れのある味だ。
「か、枢。お砂糖ってこれで大丈夫?」
ナンシー・ウェブ(なんしー・うぇぶ)は材料をはかり、おどおどしながら枢に確認してもらう。彼女は料理が苦手なようだが、恋人に作る時が来た時も考えて彼女なりに一生懸命手伝いをしていた。
「オッケーよ。オーブンは大丈夫?」
「あ、忘れてた! えっと、250℃よね。……うん、大丈夫」
「卵黄の準備もお願いね」
「白身と、別々にするのね。そーっとやれば、できると思うわ」
枢は紅玉の皮で器用にリボンを作り、芯を抜き取りくし切りにカットしていった。外見が高飛車な美人なだけに料理は不得手なのかと思いきや、意外に作業はテキパキとしている。その気になれば他の料理もお手の物、といった印象だった。
「そうだ、お皿も用意しなきゃ……」
反対に年齢より落ち着いた雰囲気のナンシーは、失敗しないように気をつけながら洗いものなどのサポートをしている。包丁や味付けは手伝えることが少ないのだが、自分にできることを見つけて頑張っているようだ。
「おー、いい女がいるじゃねえの。甘いのは苦手だが、独りで飲む酒もそろそろ飽きてきたしなぁ……」
酒を飲みながら調理風景を見物しているハーヴェインは、オーブンの中身を心配そうに確認しているナンシーの方を見ている。あとで話しかけてみようか……。
「よーしっ、完成だわ!」
「枢、美味しそうだけど……少し地味じゃないかしら?」
「うーん、見栄えを考えればアイスクリームを添えてもいいけど……今回は、このままでいいわ。お店と、ママの良さは違うものね」
2人で作ったアップルパイは見た目は合格点で、味はシナモンのきいた家庭的なものだった。あえて和食ではなく、自分が好きな母親の味を選ぶのが枢らしかった。
〜厨房C〜
七枷 陣(ななかせ・じん)はリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)と小尾田 真奈(おびた・まな)の3人でチームを組んでいた。彼らはおふくろの味……というよりは、家庭で大事な人に食べてもらいたい味を考えている。
「確か、かーさんが作ってた味は……なんやったっけなぁ」
陣は首をひねりながら煮干しと昆布でだしをとり、白みそを入れて人参・玉ねぎ・豆腐を具にして味噌汁を作った。途中から母の味より、身近な人が美味しいと食べてくれるものを優先することにしたらしい。隠し味にはちょっぴりのコチュジャンが入った。
「……リーズ達が美味しいって言ってくれるようなモンを作りたいとこやなぁ。野菜も多めに入れとこか」
真奈の作るブリ大根は甘めの料理やしなぁ。
真奈は手際よく大根をイチョウ切りにし、味がしみやすくするように氷術で凍らせておいている。酒・みりん・醤油・砂糖・だし汁で煮汁とたれを作ると、しっかり煮込んでアクセントにショウガの細切りを付け加えた。おとと……あまり甘さがしつこくならないように気を付けてっと。
「ご主人さま、そちらのお料理はいかがでしょうか?」
「んー。いや、今日はまかしとき」
「え?」
「真奈ばっかりに家事任せてるし、偶には……美味しいって言ってくれるモンを作りたいんよ」
ぱっと顔を赤らめると、真奈はうつむきがちに自分の担当に戻って行った。
……私は、ご主人様やリーズ様がいつも美味しいと言ってくれた普段のご飯を、心をこめて作っていこう。
「んにぃ……ボク食べるの専門だから美味しく作れるかなぁ」
「私でよろしければお手伝いしましょうか?」
「いいの? ありがと、真奈さんっ」
リーズは真奈の手助けを借りながら、なるべく自分で作るように努力をするらしい。真奈が作ってくれる炊き込みごはんの味を思い出し、人参・まいたけ・油揚げを具にして調味料と一緒に炊飯器に入れている。
「お水、醤油、和風だし。あとは……なんだったかな?」
「お酒とみりんを薄味になるように混ぜてくださいね」
「そうなんだ! 美味しくできるといいな〜♪」
盛り付けはどうしようか。後片付けもしなくては! 料理はずいぶんやることがある……真奈にやってもらうことが多いリーズは、作った後の大変さを学びながらご飯が炊けるまでの時間を過ごした。
ピー、ピー、ピー……♪
「おお、炊けたみたいやなぁ。どーれどれーと……えらい美味そうにできとるやん!」
「えへへ、2人で作ったんだよ?」
陣はご飯を試食程度にパクリと食べる。彼が味を確かめている間、リーズと真奈は彼からもらえる感想が気になって仕方がない。
「ん、美味いで! ……なんや、その顔?」
「美味しいって言ってもらえてよかったなーって」
「真奈のブリ大根も、よう味が染みてるわ。店に出せるやん♪」
真奈は控えめにお礼を言い、3人で作った料理をそれぞれ食器に盛り付けた。あとでリーズとお味噌汁の味見がしたいな。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
白目をむき、泡を吹いていた一は何者かに体を揺さぶられて目を覚ました。立ち上がろうとするものの、奈落の鉄鎖でがっちり固定されている……なんじゃこりゃあああああ!!!!
「やあやあ、紳士淑女の皆さん。これより料理自慢コンテストの始まりダヨ。審査員はー……はい、自己紹介ダヨ」
朗々とナガンが今回の趣旨説明を読み上げるのを聞き、一は何の因果か審査員をやることになったと悟った。今暴れると両脇にいるグールに何をされるか分からないのでまずは状況把握を……。
「あのヒゲも捕まって……って、いるじゃねえかあ!!!」
ハーヴェインはナンシーの肩を抱き、一升瓶を高々と天にかざしている。売られた!? ねえ、俺、売られちゃったの!?
「カワイソウ。美味しいもの食べて、元気出しナ」
「サバ味噌……しくしく、もぐもぐ。う、うんめええええええええええええ!!!!!!」
一は差し出されたサバ味噌をかきこむようにして平らげ、歩のハムエッグには醤油をかけて完食。その間に一番『おふくろの味』っぽいものを考えておけとナガンに言われるが、心のこもった手料理とご無沙汰だった初めにはどれもこれもがうまくて仕方がないらしい。炊き込みご飯は3杯おかわり、アップルパイは出された瞬間かれのお腹に消えていた。
「ナガンショーター……イムッ」
「あんたのおふくろ、いつもこうなのか?」
ナガンの料理は演出勝負らしく、光術と冥府の瘴気で料理そのものがよく見えなくなっている。ドライアイスの煙とミラーボールの光を想像してほしい。一は料理らしき部分を箸でつまみ、ぽいっと口の中に放り込んだ。
「こ、これ……懐かしい味だ……!」
「クフフリ」
「俺には見える。エプロン姿のおばちゃんの姿が……そう、つまりこれは……俺がさっき食品コーナーで試食していたお惣菜だー!!!!」
「「「な、なんだってー!?」」」
どよめく観客の視線を一身に受けながらも、それでもナガンはひるまない! ああっ、その手には3割引きのシールが貼られているコロッケの空のパックが!! 水曜日はポイントが16倍、空京百貨店食品フロアを皆さんよろしくお願いします!
「チッ、見抜いたカ。美味いカ?」
「結構、美味い」
「ヨカッタナ! ゲラゲラゲラ!!!」
なにはともあれ、審査員はすべての料理を食べ終えた。
「優勝はー……アップルパイだなぁ」
一がアップルパイを優勝に決めた理由は、『自分の考えるおふくろの味とは違ったが、作り手の思い出が一番分かりやすかった』からだそうな。味と香はどれもすぐれていたので、見た目から作り手の家庭が想像できるものを選んだようだ。
「ヒゲ見なかったか?」
「カエッタヨ」