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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

リアクション


ACT2 ブラッティローズ

 ガーディアンナイツたちが出発の準備をしていた頃。タシガン空峡の中にある浮遊島のひとつを隠れ家にしているブラッティローズ一味も空賊行為を行う為の準備を進めていた。
 飛空艇の簡易ドックへと改造された島の内部では大勢の男たちが忙しそうに動き回っている。
「ほらっ、そこ! もっとキビキビ動くんだよ!!」
 そんな男たちの中から一際目立つ女の声が先ほどから響く。
 見れば、胸元深くまでチャックを下ろした技師のツナギの上にトレンチコートを羽織った目つきの鋭い女が男たちに向かって声を荒げていた。
 この女こそ、この空賊団のボス・ブラッティローズその人であった。
 このドッグには似合わないずいぶんと豪奢な椅子に長い足を組んで座り、豊満な胸と赤銅色の長い髪を振り乱しながら男たちを指差して指示を出す。
 その姿は傲慢な女王のようにも見える。
 と、そんなブラッティローズに部下の男が話しかけてきた。
「姉さん」
「なんだい?」
「さっきから気になってたんですが、アイツらは何者なんです?」
 ブラッティローズは気だるげに男が指差した方向を見る。
 するとそこには銃の手入れをする国頭 武尊(くにがみ・たける)と小型飛空艇に迷彩塗装を施している猫井 又吉(ねこい・またきち)の姿があった。
「武尊、なんかこっちをみてるぜ」
 三毛猫の獣人である又吉は、ブラッティローズの視線を敏感に感じ取り、面白くなさそうにそうつぶやく。
「……俺たちは傭兵だ。珍しがられてるだけだろう。あまり気にするな」
「へっ、わかってるよ」
 又吉はそういうとまた自分の作業へと戻った。
「――あいつらはアタシが雇った傭兵だよ。カワイイだろ、あの猫。アタシはああいうカワイイものには目がないから断れなくてねぇ」
 口元をニッと歪めてそう言うブラッティローズ。
 それを聞いた部下の男は、顔を引き攣らせる。
「げっ、もしかして姉さん……今度は猫がマイブームなんですかい!?」
「ハァ? なにを言ってんだい? アタシは元々カワイイもの好きなんだよ!」
「そ、そうですかい。それならいいんですけど――」
「なんだい、その顔は。何か言いたそうな顔だね? どれ、言ってみな?」
「あっ、いえ、あっしは別に……」
「アタシが言えって言ってるんだ! 聞こえなかったのかい!?」
「ひっ! いや、その、姉さんは趣味が変わると奪うものまで変わるじゃないですか――いま狙ってる美術品とかこの前までの宝石とかならいいとは思うんですが、だいぶ前に狙ってた犬とかは金にもならなかったですしどうかと……」
「なんだい……アンタはこの私に口答えをしようっていうのかい!?」
「ひいっ! すっ、すいません!」
「フン、アンタは今回出力ルーム行きだよ!」
「えっ、ええっ! そりゃないですよ姉さん!? 姉さんが言えっていうからあっしは言っただけで……」
「見苦しいよ、アンタも空賊の端くれなら覚悟を決めな!」
「ううっ、わっ、わかりやした」
 ”出力ルーム行き”を言い渡された部下はそう言うと、肩を落としてトボトボと持ち場に戻っていく。
 他の仲間たちはその後姿を見ながら、「バカな奴だ」と思っていた。
「なっ、何者だ! おめえらぁッ!!」
 と、突然辺りが騒然となる。
 その騒ぎに座っていたブラッティローズも立ち上がった。
「なんだい、騒々しいねぇ!」
「姉さん! 怪しい奴らがここに侵入してきやした!」
「なに!? 見張りの奴らは何をやってんだい!!」
 ブラッティローズが報告に来た部下を怒鳴り散らす。
 するとそれに答えるように、誰かが言った。
「見張りっちゅうのはこいつらのことか?」
「なんだってッ!?」
 ブラッティローズがその声に反応して顔を向けると、そこには見知らぬ3人が部下達に囲まれて立っていた。
 そしてその足元には見張りをしているはずの者たちが目を回して転がっている。
 それを見たブラッティローズは、唇の片方だけを吊り上げて歪んだ笑みを浮かべた。
「これはこれはアタシの部下がお世話になったみたいだねぇ――で、アンタたちはどちらさんかね?」
 ブラッティローズがそう言うと、3人のうちのひとり、金髪を高く結い上げた女が一歩前に出て口を開く。
「お初にお目にかかるんじゃけぇの。わしは自由無法同盟のシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)と申すもんじゃ」
 ウィッカーがそう名乗ると、後ろにいた女の子もそれに続いて名乗りを上げた。
「同じく自由無法同盟のガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)です。以後お見知り置きを」
 そして最後に残った合成獣のようなドラゴニュートも静かに名乗る。
「俺はネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)だ」
「フン、この状況でも動じないとは、アンタたちたいした度胸だね」
「ありがとうございます」
 ハーレックはそう言いながら、金色の髪をかきあげてニコリと微笑む。
 その仕草にブラッティローズは舌打ちをし、ハーレックたちを囲んでいた部下たちは息を飲んだ。
「姉さん。こいつのことヤッちまってもいいですか?」
「……フフッ、そうだね。バラす前にたんと遊んであげな」
 ブラッティローズがそう言うと部下の男たちが一斉に野卑な笑い声を上げた。
「黙りんさいッ!」
 と、ウィッカーが女とは思えないようなドスの利いた声を張り上げる。
 その迫力に笑っていた男たちも思わず押し黙った。
「いいか、よう聞け。わしらはなぁ、あんたらと戦争をしにきたわけじゃない。協力するためにきたんじゃ」
「協力、だって?」
 ウィッカーの言葉を聞いたブラッティローズが眉をひそめる。
「そうじゃ、わしらはなぁ――……」
 ウィッカーはそう言って、自分たちがわざわざここにやって来た理由をブラッティローズに話した。
「……なるほど、ガーディアンナイツとかいう奴らがねぇ」
 話を聞き終えたブラッティローズは目を閉じてそうつぶやく。
「そうです。正義という名の盾を背に暴力を振りかざし、この空域の自由を脅かすガーディアンナイツをこのまま野放しにはしておけません。ここで彼らに大きな顔をさせては自由な空に秩序が持ち込まれてしまいます」
 ハーレックがそう言うと、ブラッティローズは鼻で笑う。
「アタシにはそんなことはどうでもいいね。この空域が自由であろうがそうでなかろうが、アタシはアタシのやりたいようにやるだけさ。アタシは誰かの決めたルールなんかに乗る気は元々ないんでね」
「……そうですか。なら、私も私のやりたいようにあなたに協力させていただいてもよろしいですね?」
「フン、そうさねぇ……まあ、良い情報を教えてくれたんだ。その分の義理は果たすとするかね――好きにしな」
 ブラッティローズはそういうと、ハーレックたちを囲んでいた部下たちに「聞いての通り、話はついた。アンタら、作業に戻りなッ!」と声を張り上げる。
 男たちは少し残念そうにハーレックたちに目を向けると、渋々と持ち場に戻っていく。「さすがはハーレックだ」
 ネヴィルは犬が喜ぶようにしっぽをパタパタさせて、ハーレックにそう言った。
 ハーレックは余裕の笑みを浮かべ、
「ウィッカー先生に鍛えられてますからね」
 と、言った。