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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

リアクション

「――間にあえッ!!」
 その飛空挺に乗っていたのはレン・オズワルド。
 彼は小型飛空挺のスロットルを全開にして落下していく唯斗に向かって一直線に降下していく。
 だがそれを邪魔するように空賊機が立ちはだかった。
 と、それを護衛船から確認したレンのパートナー・メティスが、装備していた2基の六連ミサイルポッドを展開し、レンの行く手を阻む空賊機に照準を合わせる。
「レン、援護します!」
 そしてそう言うと、メティスは全弾を一斉発射。放たれたミサイルは白い尾を引いて目標に向かい、敵機を巻き込んで次々と爆発する。
 レンはその爆発の中でもスピードを緩めることなく、落下する唯斗へと向かう。
「共に戦う友の為ならば、何も臆することなどない――!」
 加速エネルギーを得て、レンの飛空挺はグングンとスピードを上げる。ついには雲をつき抜け、目の前に海が見えてきた。
 スピードメーターはとうに振り切れ、先ほどから危険を知らせるアラートが鳴り止まない。
 だがレンはそれを無視してさらに加速を続ける。
 そしてついに唯斗へと追いついたレンは、右手を伸ばして唯斗の体をなんとか抱きかかえることに成功した。
 だが安心したのもつかの間、海面がすぐそこまで迫っていた。
 落下する唯斗に追いつくために降下をし続けていた飛空挺は人では操れないスピードの領域に達してしまっている。操縦は不可能だ。衝突は避けられない――誰もがそう思い、諦めるような状況だったが、レンはそうではなかった。
「うおおおおおォォッッッ!!」
 サングラスの奥に隠れたレンの瞳が、零れだした魔力によって紅く彩られていく。
 レンは左腕一本で操縦桿を握り締め、機首を上へ向けようと力を込める。
 普通ならば無駄な足掻きにしかならないようなその行動だったが、レンの左腕は普通ではなかった。
 機晶姫の腕を義手として移植していたレンの左腕は、主の思いに答えるようにその力を発揮する。
「上がれぇッ!!」
 レンの叫びと共に海面スレスレの所で機首が上がり、飛空挺は海面を派手に波立たせると再び空へ向かって舞い上がった。



 その頃上空では、優梨子が商船を守るガーディアンナイツたちを相手にひとり立ち振る舞っていた。
「もうヤメてくださいです、わるいコトしたらいつかケガとかしちゃうですよ」
 空飛ぶ箒に乗ったヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は優梨子に向かってお説教する。
 すると優梨子は満面の笑顔を浮かべ、ヴォネガットに向かって槍を突き入れた。
 それをなんとか回避したヴォネガットはむむっと眉根を寄せる。
「むーっ、どうしていうことをきいてくれないですか!?」
「ごめんさない。私、お説教って嫌いなんです」
 ふふっ、と笑うと優梨子は槍から闇黒を撃ち放つ。
「むむっ! ”ひかりのたま”です!」
 対するヴォネガットは光術を使って光の玉を撃ち放った。
 光と闇は激しくぶつかり、互いを打ち消しあう。
「もう、こんなことしたらメッですよ……んっ、あれれ? いなくなっちゃいました」
 ヴォネガットはそう言って、姿を消した優梨子を探す。
「こっちですよ」
 と、優梨子の声が後ろから響く。
 ヴォネガットが驚いて振り向くと、牙を剥き出しにした優梨子の顔がそこにあった。
 そして次の瞬間、優梨子はヴォネガットの首筋に噛み付いた。
「――あうっ!」
「うふふっ、いただきます」
 優梨子はそう言うと、ヴォネガットの首筋から溢れ出る鮮血を美味しそうにゴクゴクと飲み干していく。
 そしてある程度満足するまで飲み終えると、優梨子は首筋から口を離した。
「ご馳走様、美味しかったですよ」
「あっ、ああっ――はうっ……」
 優梨子に血を吸われたヴォネガットは精神を幻惑され、空飛ぶ箒からがくりと崩れ落ちる。
 とそこへ、唯斗を連れて上空に戻ってきたレンが現れ、ヴォネガットを受け止めた。
「あら、ナイスキャッチ」
 優梨子はその光景を見てクスクスと笑う。
 レンは傷ついた仲間たちを乗せた飛空艇を旋回させて、護衛船へと戻る。
 甲板につくとエクスがすぐさま駆け寄ってきた。
「唯斗! 大丈夫かっ!?」
 そして声をかけながら必死に治癒の魔法を唱える。
「……思ったより傷は深い。その程度の魔法ではダメだ」
「そんな……じゃあなんとかしろ! 我はシュペルディアが姫! エクスであるぞ!! 姫のいうことが聞けぬのか!!!」
 レンの言葉を聞いたエクスは喚き散らす。
「だっ、だいじょうぶですよ。ボクがぜんぶなおしちゃうです」
 と、血の気の失せた顔のヴォネガットがフラフラと起き上がる。
 そして持っていた天使の救急箱でまずは自分の傷を癒して体力を回復すると、唯斗の前に座り込んで瞳を閉じた。
 ヴォネガットは両手を唯斗の傷口の上に置いて、険しい顔つきになる。
 するとその両手から温かな光が溢れ、やがては唯斗の全身を光が包み込む。
「むむむむっ……いたいのいたいのとんでいけですっ!」
 ヴォネガットはそう叫ぶと、バンザーイと両手を挙げた。それに合わせるように光も天に上がる。
 皆がその冗談のような魔法の唱え方にちょっと驚いていると、唯斗が小さく呻き声をあげた。
「唯斗!?」
「……んっ、あれ、エクス? 俺、どうして――?」
 目を覚ました唯斗は皆に囲まれている状況がよくわからず、目を瞬かせる。
 そして先ほど優梨子に貫かれた場所に目をやると、そこは服がやぶれているだけで、傷は塞がっていた。
「だいせいこうです♪」
「おぬし、よくやった! 感謝するぞ!!」
 エクスはそう言ってヴォネガットに抱きついた。そしてその胸の中でエクスはプルプルと肩を震わせる。
「よしよし、もうあんしんですよ」
 そんなエクスをヴォネガットはぎゅ〜っと抱きしめるのだった。
「終わりましたか?」
 影の翼をはためかせ、空からその様子を見下ろしていた優梨子は目を細めてそうつぶやく。
「……なぜ、攻撃してこなかった」
 と、レンが優梨子に向かって言った。
 すると優梨子はクスクスと笑う。
「弱っているものを殺しても面白くないですからですよ。殺して食べるのならば、やっぱり粋がいいのがいいでしょう……さぁ、では遊びましょうか? ガーディアンナイツの皆さん」
 そう言うと、優梨子の体から悍ましいほど黒い気配が一気に溢れだす。
 その場にいたガーディアンナイツたちはその迫力に畏怖を感じつつも、パートナーや仲間たちと目を見合わせると武器を手にして立ち上がった。