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リアクション
ブォオオオオオオオオオオオオ!!
勢いづいた黒毛猪は、そのまま氷の道を弾丸のよに滑っていく。
そして――派手な音を立てて、未加工の鉄骨へと衝突したのだった。
「突撃であります!!」
本来であれば、黒毛猪は鉄槍によって串刺しになっていたのだが……罠は未完成となってしまい、中途半端な成功で終わってしまった。
しかし、もしもこうなった時のことを想定していたクロッシュナーたちは、黒毛猪との戦闘準備を怠っていなかった。
クロッシュナーの合図と共に、その場にいた全員が黒毛猪へと攻撃をしかけた。
「フンッ!」
「くらえっ!」
「えいっ!」
「…………!」
クロッシュナーのハルバートによる攻撃と、飛鳥のリカーブボウによる攻撃。そして、麗夢とアムによる氷術が黒毛猪に向かって炸裂した。
だが――
ブォオオオオオオオオオオオオ!
「くっ!?」
彼らの全力の攻撃もむなしく、体勢を立て直した黒毛猪によって猛攻は弾き返された。
やはり、罠が未完成だったのが痛手となってしまった。
そして、再び黒毛猪が突進の体勢を取った。
まさに、その瞬間――
ピィイイイイイイイ!
耳をつんざく信号弾の炸裂音に、黒毛猪の動きが止まった。
それと同時に――
「みんな、こっちだ! ついて来てくれ!」
「一旦、体勢を立て直そっ!」
クロッシュナーたちの仲間である、ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)とパートナーの天津 亜衣(あまつ・あい)が現れたのだった。
森には、クロッシュナーたちほど大掛かりな罠ではないが、黒毛猪以外の獣が襲ってくることを想定してハインリヒたちが仕掛けた罠が、そこかしこに仕掛けてあった。
そのおかげもあって、全員は何とか森の開けたところへ逃げることができた。
「とりあえず、ここで黒毛猪を迎え撃とう」
ハインリヒが案内した場所は、一本道の先が広場のように開けていて、恐らく匂いを追ってくるはずの黒毛猪を迎え撃つには、好条件の場所だった。
「ヴェーゼル、そろそろ来るよ」
周囲の警戒にあたっていた亜衣が、黒毛猪の接近を伝える。
その直後――
ブォオオオオオオオオオオオオ!!
巨大な咆哮と地響きが、広場の先の一本道から聞こえてきた。
「ふんっ、来やがったか……」
ハインリヒは仲間に『ディフェンスシフト』を使用したあと、自分に『ファランクス』をかけ、盾役となるべくドッシリとその場に構えた。
「っしゃあ、どっからでも来い!」
普段の軽薄さを微塵も感じさせず、ハインリヒは堂々と黒毛猪の突進に備える。
そして――
ブォオオオオオオオオオオオオ!!
罠を切り抜けて現れた黒毛猪は、充分すぎるほどの助走をつけて突進してきた。
「ぐっ……マジかよ、おい」
地響きと共に衝突してきた巨体に、ハインリヒは耐えるので精一杯だった。
しかし――それでも彼は一歩も引こうとしない。
「ぐぉ……さ、さすがだなっ!」
黒毛猪はハインリヒを弾き飛ばそうと数秒間ほど駆け続けたが、とうとう広場に入ったあたりで突進の勢いは止まった。
「よしっ、ここで止めればもう突進はできねぇ!」
そして――
「今だ! やれっ!!」
黒毛猪の動きが止まった瞬間、ハインリヒの合図で全員が反撃に転じた。
「みんな、頑張って!」
黒毛猪へと立ち向かう仲間達に、亜衣のパワーブレスがかけられる。
「ハァッ!!」
「次こそっ!」
クロッシュナーのハルバートと飛鳥のリカーブボウが――
「今度こそ!!」
「……っ!」
麗夢とアムによる氷術が黒毛猪に再び炸裂した。
「よしっ、その調子だ! ガンガンぶち込め!!」
仲間達の攻撃に檄を飛ばすハインリヒ。
だが、彼は気付いていた。
『このままじゃ、みんなの体力がもたないかもしれねぇな……』
今は亜衣の援護もあるし、みんなの士気も高く、黒毛猪を圧倒している。
しかし、どう考えても人数不足だ。このままでは次第に攻撃の手も減っていき、黒毛猪を倒す前に力尽きてしまいかねない。
ハインリヒは、どうすべきかを考え、一人焦っていた。
と、そこに――
「すまない! 来るのが遅れてしまった!」
「準備に手間取っちまったぜ!」
「さ、ここからが猪狩りの本番よっ」
ハインリヒの信号弾を聞きつけ、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)と、そのパートナーであるアンゲロ・ザルーガ(あんげろ・ざるーが)と天津 麻衣(あまつ・まい)が駆けつけてきた。
彼らは、元々クロッシュナーたちが仕掛けた罠の補助に当たる予定だったのだが、思ったよりも黒毛猪の襲撃が早すぎたため、仲間を見失ってしまっていたのだ。
「二人とも、頼んだわよ!」
麻衣によって『パワーブレス』が施されると、ケーニッヒとアンゲロは戦闘態勢に入る。
そして――
「アンゲロっ、行くであります!」
ケーニッヒは、すぐさまアンゲロに向かって合図を送る。
するとアンゲロは――
「フンガァァァッ!!!!」
自慢の怪力を駆使して、密かに運んできたクロッシュナーたちの罠用鉄骨を思いっきり黒毛猪に向かって投げつけた。罠用の鉄骨は、飛鳥が唯一槍の形に加工した物だった。
そして、それと同時に――
「行くであります!」
『軽身功』を使ったケーニッヒが、鉄骨の後を追って走り出す。
鉄槍は、その巨大さからは想像もつかないスピードで黒毛猪に向かって飛んでいき――その巨体が仇となって、黒毛猪は鉄槍の直撃を受けることとなった。
ブォオオオオッ!?
辺り一帯に、黒毛猪の苦痛に満ちた咆哮が広がる。
どうやら鉄槍は黒毛猪の胴体に刺さったものの、その強靭な剛毛によって貫通を拒んでしまったようだ。中途半端に鉄槍の刺さった状態……このせいで一撃での絶命を免れた黒毛猪は、苦痛によってその場をのた打ち回り始めた。
「絶命までの間に余計な苦しみを与えては、ハンターとして獲物に対し失礼であります!」
黒毛猪の苦悶の様子を見たケーニッヒは、宙に向かい跳躍すると――
「どぉりゃあああッッッ!!!!」
『パワーブレス』によって漲る力を拳に乗せ、全力の『鳳凰の拳』を鉄槍に向かって放った。
ブォオッ……
ケーニッヒによって再び叩き込まれた鉄槍は、黒毛猪の強靭な身体をも貫通した。
そして、黒毛猪はその一撃によって、ついに倒されたのだった。
「黒毛猪……まことに勝手ながら、我々の生きる糧となってもらうであります」
着地したケーニッヒが黙祷をささげたその瞬間――ついに、二体目の黒毛猪が揃ったのだった。
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