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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~
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リアクション

 フーリの祠・道中0〜待ち合わせ、そしてちょっとした昼ドラ〜

「買い物だー! デパートくるとやっぱワクワクするねー♪」
 ワンピやミニスカ、ホットパンツ、フリルがついた服や流行の最先端まで、デパートには女の子を可愛くしてくれるアイテムがいっぱい揃っている。
「ケイラちゃん、こっちー! こっちの可愛いよー!」
 春夏秋冬 真菜華(ひととせ・まなか)が手招きすると、ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)御薗井 響子(みそのい・きょうこ)の手を引いてやってくる。
「本当だ、可愛いねー。これも似合うんじゃないかな?」
 ケイラも、選んだ服を真菜華に合わせてみる。男でも可愛い物はわかってるつもりだ。
 鏡の前できゃっきゃうふふと楽しそうにしているピンク髪の2人に、店員も声を掛けてくる。
「とてもお似合いですよ! ご試着もどうぞー」
「そーですかー? じゃあ着てみよっかなー」
 やがて出てきた真菜華は、新しい服を着てくるりと一回転した。
「うん、いいねいいね! これ、そのまま着てってもいーですかー? あとこれとこれとー」
「まだ買うんですか……」
 荷物を持たされたエミール・キャステン(えみーる・きゃすてん)は不機嫌そうだが、それはまあ全く気にしない。店内の服を眺めながらケイラが言う。
「こんなに沢山物があるとバザールを思い出すね、こっちの方が全然綺麗だけど……あ、このスカートとか、どうかなあ。ね、響子」
「え……僕ですか……?」
 いきなりふられ、響子は一歩引いた。無表情だが、マニピュレータがぴょこぴょこと動いている。
「あの、僕は……スカートとか小物とか似合わないんで……荷物持ちでいいです」
「そうかなあ、一回試してみるのもいいと思うよ」
「いえ、あの……僕は特には……買い物とかも……」
 ぴょこぴょこ。
「そうだよそうだよ! おしゃれしてみよーっ!」
「……い、いつも通りで……」
 ぴょこぴょこぴょこ。
「エミール様……助けてください……」
「また、気が向いた時に合わせてみたらどうですか? 真菜華、いろいろ持ってきすぎです。返してきなさい」
 前半は柔らかい笑顔で、後半は半眼でエミールは言った。
「ふーんだ! ……あ!」
 その時、真菜華は何か思いついたようにぱっ、と明るい顔になった。
「ね、そうだよせっかく空京きたんだしピノちゃんとかいないか連絡してみないー?
 携帯を取り出して、真菜華はピノに電話を掛けた。
「出ないかなー、出るかなー?」

 空京市街。
 ぴろりろぴろりろ……
 突然の大きな音に、ピノは足を止めた。パラミタキバタンが1度はばたく。
「……? どこから……」
 身体のそこら中を叩いたりポケットに手を突っ込んだりして、何とか携帯電話を取り出す。折り畳まれたそれを見て――
「何これ、うるさいわね。どうしてこんな音……。どうやって止めるのかしら?」
 脇のボタンを手当たり次第に押すが止まらず、筐体を開いてボタンを――

「あ、つながった、もしもしー? あれ?」
「どうしたの?」
「なんか、ボタンを押す音が何回かして切れちゃった……。変だにゃー、ピノちゃんが電話切るなんて……『これ?』『こっちかしら』とかいう声も聞こえたよー」
「? 話し方がおかしいね。番号間違えたとか」
「ううん? 合ってるよ、声も同じだったしー……。なんだろう、ラスに電話してみよー」
「そうだね、えっと……」
 携帯を取り出しかけて、ケイラはその動きを止める。
「あれ? 連絡先の交換とかしたっけ……」
「マナカ知ってるよー!」
 こちらはすぐに繋がった。
『なんだよ、今忙し……』
「ピノちゃんが変だよ! 何か知ってる?」
『……お前、どこでそれ……! 会ったのか!?』
 かみつかんばかりの勢いに、こちらがびっくりしてしまう。電話を掛けたらおかしかった事を伝えると、ラスは手短にカフェでの出来事を説明した。ついでに、GPSで場所は分かっているが休日の人混みでまだ追いつけていないと話す。あと、どうにもピノが若干迷っているらしい事も。
「ええっ! それ大変じゃん! マナカ達も行くよ、ピノちゃんは可愛い妹みたいなものだからね! そこから動いちゃだめだよ!」
『動くなって、それ……!』
「GPSがあるからだいじょぶなんだよね! 場所は?」

「なんなんだ……」
 電話を切ったラスは、小型飛空挺を道端につけると、降りないままに地上30センチ程の位置でふよふよと浮いた。車であればアイドリングストップして下さいと注意されそうな所だが、動力が機晶石なのでパラミタにも優しい。
 ちなみに、駐挺場はデパートの屋上以外に地上にもある。そこに停めていた飛空挺に乗って街中まで出てきた。屋上までわざわざ戻ったわけではない。
「なあに? 誰か来るの?」
 光る箒に乗っていた沙幸と美海も降りてくる。彼女達は、普通に地上に着地した。
「あ、ああ……付いてくるから待ってろって……わっ!」
 そこで飛空挺がぐらりと傾いだ。慌てて体勢を立て直すラス。美海が眉を顰めて言う。
「さっきから思ってたのですけど、その飛空挺、かなりポンコツじゃありませんこと? よくバランスを崩しているような気がしますわ」
「……そうなんだよな。どこぞの村の上空で鳥につつかれてからどうも調子が……」
「先行き不安ですわね……」
 そんな会話をしていると、持ったままだった携帯が着信音と共に震えだした。相手は神代 明日香(かみしろ・あすか)だ。
『ラスさん、聞きましたよ〜、ピノちゃんの様子が変みたいですね? 私もフーリの祠まで行きますぅ〜。場所を教えてください〜』
「? 何だ、お前もピノに連絡取ったのか?」
 流石に2度目となるとそこまでの動揺はしない。しかし。
『まだ取ってません〜。というか、全学園に連絡が行ってますよ。ピノちゃんがフーリの祠に向かってる事も、ラスさんがファーシーさんをいじめたことも筒抜けです〜』
「は!?」
 それには物凄く動揺した。
「な、何でそんな事態に……!!!」
『何でも何も、それだけまずそうな雰囲気だったんじゃないですか〜?』
 ――4つの中でもどシリアスぶっちぎってたしね。
『大丈夫ですぅ。会話の内容までは伝わってません〜』
「……伝わってたまるか!」
『親友ですし、私も行きますよ。とにかく、合流しましょう〜。何でしたら、そちらで通る予定のルートを教えてください〜。近くまで行ったら、また連絡しますね〜』

 GPSで把握しているらしいルートをメモして電話を切り、何かしら聞けたら、と明日香はピノに電話した。ピノがラスをからかっただけという可能性も捨てきれないので確認の意味も含めてである。
 数度のコール音の後、電話が繋がる。
「あ、ピノちゃんー?」
『また……! この機械、一体何かしら。変な音楽が鳴って、ボタンがあって……楽器?』
「…………」
 明日香は思わず絶句した。ピノちゃんじゃない。これ絶対ピノちゃんじゃない。でも声はピノちゃん……? 少し、大人っぽいような。気のせいかな?
 ぴぽぴぽ、とボタンをでたらめに押す音がする。明日香は急いで話しかけた。
「あ、あの、止めてください〜」
『……』
 音が止まり、電話を通して怪訝そうな空気が伝わってくる。
『……誰? 私に話してるの?』
「そうですぅ〜。それは遠くにいる人同士が話をする機械で〜、使い方は〜……」
 変にいじられて電源でも切られたら、GPSが使えなくなってしまう。ピノ(?)に電話に出る時と切る時のボタンの位置だけ教えて、明日香は携帯を閉じた。
「ノルンちゃん、エイムちゃん、出かけますよ〜」