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ダークサイズ本拠地・カリペロニア要塞化計画の巻

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ダークサイズ本拠地・カリペロニア要塞化計画の巻

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 ダイソウトウの間には、結果的に秘書室を抜けて到達する形になる。
 そこの内装を受け持っていたのは、黒崎 天音(くろさき・あまね)ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)、それに氷雨。
 六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)がボスの部屋らしく司令塔のモニターやマイクなどの電子機器を提供し、現在その配線を、ミルディアとイシュタンが行っている。

「で、天音よ……」

 ブルーズは、何故か隅に設置されている簡易キッチンで、パラミタイノシシの肉料理を作りながら、椅子に座ってくつろぐ天音に、いつものように小言を言う。

「何故お前がダイソウトウの椅子に座っているのだ……」
「ん? 何がいけないんだ?」
「いけないに決まっているだろう。さすがにそこに陣取るのはまずいと思うのだが」
「ふふ、甘いねブルーズ。僕はダイソウトウの視点で、何か不具合はないか、使いにくいところはないか、きちんとチェックしているのさ。彼は忙しいからね。いわば僕は、ダイソウトウのスタンドインを受け持っているのさ」

 天音は、ブルーズに言い訳するが、

「まったく何を言ってるんだ。自分が座りたいだけのくせに……」
「さあブルーズ、その肉料理の味をみよう。ダイソウトウが満足する味になっているかどうか」
「バカなこと言うんじゃない。これはちゃんと働いている者に提供するのだ。お前もいいかげん仕事をしないと、食べさせてやらんぞ」

 はたから見ると、遊ぶ子供に宿題をうるさく迫る母、という風にしか見えない。

「ふぁ〜、おいしそう〜」

 ブルーズのフライパンを、指をくわえて覗きこむ氷雨。

「おい、危ないぞ。油が飛ぶ」

 子供が苦手のブルーズ。若干ぶっきらぼうに氷雨に注意する。

「ブルーズおじちゃん、料理じょうずだねっ」
「お、おじちゃん……か」

 と、何とも言えない顔をするブルーズ。

「おおっ、ひ、広い!」

 ちょうど秘書室を抜けて、ダイソウトウの間に入ってくるダイソウ一行。

「やあ、来たね……」

 と、天音はわざわざマイクを使ってダイソウに話しかける。

「ほう、マイクがついているのか」
「あ、はい! 私が提供させていただきました!」

 優希がダイソウに走り寄る。

「せっかくですから説明させていただきます。このダイソウトウの間から、カリペロニアの各所に設置した監視カメラの映像を確認することができます。このボタンで切り替えることができます」

 優希はダイソウをモニターの前に案内し、操作盤の説明をする。
 優希がモニターを切り替えると、ラルクが特訓にいそしむ訓練所、ペンギンを飽きもせずもふもふする円のペンギン王国、明日香の受付、カリペロニア電波塔や、霧雨農場、十八号のレールガンで倒壊した研究所、はたまた大総統の館でうろうろするバスティアンの姿などが確認できる。

「これはすごい、島を網羅しているではないか」
「はい! がんばりました!」
「ん? こっちに切り替えたいときはどうすればいいのだ?」
「あ、それはこのボタンで」
「こっちか?」
「いえ、それはマイクの切り替えです」
「なるほど、こうか」
「いえ、それは画質の補正です」

 優希の説明に関わらず、ダイソウは操作を全然把握できない。

「画面操作はお前に毎回頼むことにしよう」

 と、ダイソウはあっという間にさじを投げる。
 そこに氷雨が、ダイソウのマントをくいくいと引く。

「ダイソウトウさん、ボクも作ったんだよ!」

 氷雨が指をさすフロアの中央には、なぜか畳敷きの八畳間が。

「えへへ。みんなに命令する途中で、休憩できるようにしたの!」
「フロアの真ん中が休憩所なのか……」

 氷雨の贅沢な空間の使い方に戸惑いながらも、試しにダイソウと、ちゃぶ台をはさんでハッチャンとクマチャンが座ってみる。その瞬間、

しゃきいいいん!

 畳の下から、ハッチャンとクマチャンの目の前に、剣が突き出る。

「ひいいいい!」
「こうやって敵さんにダメージを」
「敵に座らすのかよ!」
「ダイソウトウさんのことだから、敵さんをもてなそうとするかもしれないと思って」

 ハッチャンクマチャンは早速冷汗をかくが、

「まあ、居心地は悪くない」
「畳だから落ち着くよね」

 と評判は上々のようだ。
 そこに、肉料理をよそった皿を、ブルーズがちゃぶ台に持ってくる。

「このように時には食事もできるぞ……」

 と、ブルーズが料理を置く。
 すると、ちゃぶ台の下から小さくカチッという音が聞こえ、

がしゃああああん!

 ちゃぶ台の片方が跳ね上がり、ブルーズの料理がハッチャンとクマチャンに直撃する。

「ぎゃああああ!」
「あち! あちいいいい!」

 と、悶える総帥と大幹部。氷雨は頭を描きながら、

「こうやって敵さんにダメージを」
「なんだよこのからくり!」

 料理をかぶった勢いで二人は後ろに倒れこむ。
 すると、畳の底がカパッと抜け、

「うわああああぁぁぁぁぁ……」

 と、穴から落ちていく。

「こうやって敵さんにダメージを」

 と氷雨のダメ押しの説明。

(お、落ち着けない……)

 と、今後の使用を迷うダイソウであった。

「あ、落ちた先の様子はこちらで確認できますよ」

 優希が画面を切り替えると、ダストシュート方式で、館の壁の一部が開き、ぺいっと外に放り出される二人の姿が確認できる。

「なるほど……結果的にこのように見事な組織構成となっているのですね。我が主が興味を惹かれるのも、よく分かります」

 カリペロニア要塞化の行程を隠れて観察しながら、ダークサイズの懐の深さを探っていたサルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)。彼女はついに、ダイソウの前に姿を現す。
 サルガタナスは厳かにダイソウの前に進み出て、自らの主ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)以外の者に初めて膝をつく。

「ダイソウトウ。わたくしはジャジラッド・ボゴルの忠実なるしもべ、サルガタナス・ドルドフェリオン。囚われの主に代わって、ダークサイズに力を添えに参った者ですわ……」

 ダイソウに頭を下げつつも、齢3000歳の貫録は隠せない。
 ダイソウも、キリッとサルガタナスに対応する。

「うむ。私はダークサイズの大総統、ダイソ……」
「我が主からの言伝を伝えに参りました……」

 サルガタナスを通じたジャジラッドからの伝言……

『直接ツラ見せられずに失礼するぜ。まあ、ちょっとしたポカをやからしてな。今はシャンバラ教導団の牢獄で囚われの身だ。オレの見たところ、オレをシャバに助け出してくれそうなのはダイソウトウ、おまえしかいねえと見込んでのことだ。とりあえず幹部としておまえの下についてやるから、サルガタナスに渡したこいつを研究して、ぜひやってもらいてえことがある……』

 サルガタナスが懐から取り出したのは、何と十二星華の牙城、浮遊要塞マ・メール・ロアの破片。

「これは……」
「我が主を救出するには、浮遊要塞が必要。そして悪の組織の拠点には、浮遊要塞は絶対必要条件ですわ。これをネネさまの経済力を通じて、量産に向けて研究していただきたいのです」

 カリペロニア要塞建設で、これはさすがに誰も思いつかなかったらしく、一同ざわめく。

「ま、まさか……このカリペロニアを浮遊要塞にしろと」
「左様ですわ」

 ダークサイズ幹部によるカリペロニア発展に驚き続けたダイソウは、これには大きな衝撃を受けたようだ。

「カリペロニアが浮遊要塞に……ものすごくカッコイイではないか」
「時間がかかるかもしれませんが、ぜひ実行していただきたい。名付けて、『蒼空の城ラピュマル』計画!」
「蒼空の城ラピュマル!」

 作戦名も気に入ったらしい。ダイソウは早速立ち上がり、

「興味をそそればネネも惜しみなく動くであろう。ネネはどこだ」

 ダイソウは携帯電話を取り出し、未沙に電話をかける。

「未沙よ、館に温泉は引けたのか?」
『あー、大丈夫よ。館の地下に浴場を作ったよ』

 ダイソウは電話を切り、

「ネネは地下にいる」

 と、ネネの行動を読む。

「なるほど、地下だったらいい方法がある」

 一部始終を大人しく聞いていた天音が、ダイソウトウの椅子に居座ったまま言う。

「この館は非常によく出来てるね。この椅子のここのボタンを押すと……」

 天音がダイソウトウの椅子の腕かけにあるボタンを押すと、天音の足元が

ヒュン

 と、円形に開く。
 そして、天音は椅子ごとその穴に消えていき、

「地下で待ってるよー……」

 という言葉を残す。

「おおー、カッコイイ……」

 と一同感心するが、ブルーズが一言。

「お前が使ったら、ダイソウトウは階段で行かねばならんではないか……」