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合コンパーティにバトルにお爺さん孝行!?

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合コンパーティにバトルにお爺さん孝行!?

リアクション

 次の挑戦者はある意味、異色だった。弓削 理との組み合わせに関しては、ある意味、「食べ合わせがまずいと大惨事になる」見本とも言えるだろう。
 そう、その名は変熊 仮面(へんくま・かめん)登場。
「黒脛巾にゃん丸から合コンに美少年が現れるとの話を聞きつけた。弓削理! 合コンに美少年は二人もいらん!」
「合コンじゃなくて、一応、剣戟試合なんだけれどもね…それにしても、君、凄いね」
 薔薇のマントで体を覆った美少年、変熊仮面。剣の試合会場に舞い散る薔薇の花と、甘い匂い。
「なるほど…剣の使い手か。真の美しさは実力も兼ねるべきと言うわけだな?」
「僕も人の話を聞かないけど、君も人の話を聞かない人だね」
「ならばどちらがより美しいか、己の肉体美をかけて戦おうでは無いか!」
 羽マスクを外し惜しげもなく端整な素顔を披露する。キャーッ!! 轟く女子の黄色い悲鳴。全裸に薔薇のマントを被っただけの変熊仮面には、違う意味での悲鳴も上がりそうな予感がするが、そこはさておき。
「肉体美ねえ…」
 バサアッ! 薔薇学マントの間からそびえ立つは『栄光の刀』!ただし場所が悪かった。…全裸の股間に挟んでいたのだ。
薔【裸】学剣道!! ふふふ…完全無防備。自分の美しい体を賭して戦う。男らしいとは思わんかね。」
 キャーッ!!轟く女子の黄色い悲鳴。嫌な予感はあたった。
「ふふふ…あまりの美しさに色めき立つの無理もないが。ここは男の勝負! 女子の皆さんには黙って見ててもらおうか。」
「たぶん、それ、悲鳴の種類が違うと思うよ」
 理はくすくすと笑っている。
「ユニークな人だなあ! 君って!」
 しかしそんなことはお構いなしに…股間に剣を挟んで内股歩き。クネクネと腰を左右に動かして、理に迫ってくる!
「さあっ、さあっ! 何処からでもかかってきなさい!」
「なんか僕の清らかで高貴な剣が汚れそうな気がするけれど、はい、じゃあ遠慮なく…」
 布都御魂剣でカッキーンと『栄光の刀』を下から上へとなぎ払う。
「ちょ、本気で打ち込むなよ! もげちゃうじゃないか!」
「じゃあ、もう一回」
 カッキーン!!
「ギャー!!」
 さすがの変熊 仮面も男としての一番の急所にキケンを感じたらしい。そもそも、『栄光の刀』を挟んだのは変熊 仮面本人なので、自業自得ではあるが。
「い、一本…弓削…」
 審判を務めるメティスも少々脱力気味であった。
「赫夜ちゃん、真珠ちゃ〜ん! 僕、負けちゃったあ! 見て見て!」
「ぎゃあああ!!」
 全裸で走ってくる変熊 仮面に女子からの惨劇に近いような悲鳴が上がる。蟻の子を散らしたように、一目散に逃げる女子達。その光景はある意味、スプラッター映画同様であった。
「キャー!!」
 真珠も顔を覆っているが、指の隙間からのぞき見ている。好奇心が強い性格のようだった。
「そんなものをみせるなー!!」
 赫夜のパンチが変熊 仮面の美しい顔面にヒットする。
「ああ、顔はやめて、顔は…」
 それが変熊 仮面が気を失う前の最後の言葉だった。



 最後に登場したのは如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)だった。
「…君だね、赫夜さんが想う人は」
 理はあくまでも笑顔を崩さない。
 佑也は緊張した面持ちで立っている。

 佑也は少し前のことを思い出していた。
 理の動画が山葉 涼司から送信されてきた日から、ずっと佑也は悩み続けてきたのだ。
 パートナーたちと同居している佑也は、料理をしていても、洗濯掃除をしていても、ついつい、ため息が出てしまう毎日。
「許嫁かぁ…良いトコのお嬢さんだし、そういった人がいるだろうとは思ってたけど……なんか複雑な気分だな」
「佑也! お味噌汁、吹きこぼれてるわよ!」
 パートナー、アルマ・アレフ(あるま・あれふ)の声で我に返る佑也。
「わ、わわわっわわ!」
「あーあ。あとでコンロまわり掃除しないとね…あ、そうだ、佑也! 合コンパーティで剣の試合があるらしいから、佑也の名前で勝手に登録しておいたわよ!」
「えっ…」
 動揺を隠せない佑也。
「…って、ノリ悪いわね。もしかしてあのメールが原因?」
「…」
「何悩んでるの? 赫夜ちゃんって子と最近、仲良くしてたじゃない?」
「そうなんだけど」
「なに、話してみなさいよ」
「正直な所、あまり乗り気じゃないんだ。だって幼馴染で許嫁で、それであのメールだろ? 俺よりずっと前から赫夜さんの事想い続けてるんだろ? そう思っただけで、なんか戦いづらいし…横入りしたのは俺なんだから、今更しゃしゃり出ても…な…」
 そうはいいつつも佑也の脳裏には赫夜の笑顔が浮かんでくる。天体観測に出かけた日に、自分で作ったという卵焼き。ぱさぱさすぎて、塩と砂糖を間違えていて、凄まじい味で一種のダークマターだったが、それでもその卵焼きはあったかい味がした。
『ご、ごめんなさい!』
 謝る赫夜の顔がみたことのない顔で、佑也は微笑ましかったのだ。
「…ちょっと、それ以上情けない事言ったら蹴り飛ばすわよ? 惚れてんでしょ? 傍に居たいんでしょ? だったら戦ってきなさいよ!」
「ひっ!」
 アルマの剣幕に佑也は気圧される。だがアルマは続ける。
「剣の勝負じゃないわ。想いの勝負よ! 想いの強さに、時間なんて関係無いんだから!」
「…」
「…それにキナ臭い話も出てるし、何かあった時に赫夜ちゃんを護れる様に、パーティには参加しておいた方がいいでしょ? なにより、佑也、あんた、赫夜ちゃんに惚れてるんでしょ!? 男として戦わないで、一生そうやって味噌汁ふきこぼしているつもり!?」
 佑也は一瞬顔を伏せたが再び、顔をあげた。