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リアクション
第2章 村人たちの避難を
避難するマウロや村人たちをまた、イノシシが見つけ、追いかけて来た。
そこへ駆けつけたのは光精の指輪から呼び出した人工精霊や、魔法書のページをドラゴンの姿へと変化させた使い魔、紙ドラゴンを携えた神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)と、彼女のパートナー、ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)だ。
「ほらほら、イノシシさん、こっちですよこっち♪」
人工精霊や紙ドラゴンをイノシシの目の前へとけしかけ、注意を惹くようにうろうろさせる。イノシシは視界の中を動き回るそれらに牙を向け始めた。
「……さ、皆さん今のうちに安全な所に……!」
そうしながら、マウロたちの方を視線だけ振り向かせた有栖はそう告げた矢先、人工精霊がかき消され、紙ドラゴンが力なく宙を舞った。
イノシシの牙が直撃したのだ。
「有栖お嬢様っ、モンスターはわたくしが食い止めますわ! ……今のうちに皆様方を安全な場所に……!」
ミルフィがライトブレードと雅刀をそれぞれの手に構え、立ちはだかった。
「手伝いましょう」
冷ややかではあるものの、頼もしい言葉が聞こえてくる。
ミルフィが視線を向けるとそこには、道明寺 玲(どうみょうじ・れい)とパートナーのレオポルディナ・フラウィウス(れおぽるでぃな・ふらうぃうす)だ。
「こっちだよぉ!」
建物の陰から清泉 北都(いずみ・ほくと)が姿を現し、避難を促す。
「大丈夫ですか!? あちらに避難しましょう!」
クナイ・アヤシ(くない・あやし)が村人たちの様子を窺いながら、北都と共に安全そうな方向を指す。
それに従い、逃げ出す村人たちに向かって、イノシシが火炎弾を吐き出した。
ミルフィは火炎弾に向かって斬りかかり、軌道を逸らさせようとしたが勢いに圧され、ビーム状の光刃がぶれるだけだ。
「伏せてっ!」
クナイが声を上げる。
その隣で北都が手を火炎弾に向けた。念力で、逸らさせようと試みたのだ。
完全には逸らすことは出来ないものの、軌道をやや逸らされた火炎弾は近くの建物を崩して消える。
バラバラ……と落ちてくる瓦礫に、クナイが村人たちを守った。
「怪我は……?」
訊ねるクナイに、村人たちは大丈夫だと答える。
その無事を確認すると、北都の誘導の下、その場から逃げ始めた。
ミルフィと玲は立ちはだかったまま、イノシシを見続ける。
今にも駆け出そうとするイノシシの足元に、2人は構えた。
北都とレオポルディナは自分たちを中心に張った保護結界に危険な存在が近付いていないことを感じながら、建物の陰を移動していく。
そこへ、話を聞き駆けつけた火村 加夜(ひむら・かや)が合流してきた。
「瓦礫の中から配水管などを紐で組ながらテキサスゲートを作るんです。それを建物の間の通路に何箇所も設置するんです」
偶蹄目のイノシシは小さな蹄を持ち、そのようなスリットの上は歩けないから……と加夜は説明する。
設置することで、安全な場所の確保だけでなく、イノシシと戦う仲間たちの手助けにもなるのだと付け加えた。
「出来る限りやってみよう」
マウロが村人たちを見回すと、彼らは了承と取れる頷きを見せる。
男性たちとマウロが辺りの瓦礫から、配水管などを探してくると、加夜と女性たちが紐を用いてそれらを組んでいく。
スリットの間隔は、イノシシが通常サイズでなく、巨大だということも念頭に置き、少し広めにした。
鉄心が記憶術で以って、覚えておいた跡地の地形全体を思い出し、加夜と共に的確な場所を割り出すと、それぞれの場所に、組み上がったゲートを設置していく。
効果の程はイノシシがやって来ないことには分からないけれど、ゲートを挟んでいれば、一先ずは安心だろう。
「この村の跡地以外に、避難に適した場所はないの?」
けれどもそれ以上に安全を得るために、とマウロや村人たちへと北都は訊ねる。
「ここから、彼らが避難している場所までの間には、そういったところはなかったな」
「そう。ないとなると、この村の跡地の中で一番頑丈な建物は?」
マウロの答えに、北都は更に問いかけた。
逃げ回るよりどこか安全なところで身を潜めた方が良い。
「今仕掛けたゲートより外となると……」
「西の外れの家……だろうか」
マウロに見舞わされた男性の村人が答えた。
「そこに向かいましょう」
レオポルディナが禁猟区が危険を知らせてこないのを確認して、村人たちを促していく。
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