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リアクション
「こっちですよ〜」
跡地の西の方へと向かうマウロや村人たちの先、建物の陰からラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)が顔を出した。
彼の後方から現れたシュリュズベリィ著 『手記』(しゅりゅずべりぃちょ・しゅき)の姿に、マウロや村人たちは一瞬、驚きと警戒を見せたが、ラムズと行動を共にしていることから、敵ではないと判断し、警戒を解く。
「怪我人はどうぞこちらへ」
ラムズが連れているパラミタ虎の背を指差した。
怪我人はないけれど、女性の体力を気遣い、彼女らを背に乗せる。
猛獣であるパラミタ虎が暴走しないよう、ラムズはその傍につき、後のことは『手記』に任せた。
「どちらへ行くのかのう?」
訊ねる『手記』に「西の外れの家だよ」と北都が答えた。
『手記』は上空を飛ぶ、強盗鳥という大型の鳥を呼び寄せると、西の外れまでの間の安全なルートを探すよう告げて、再び空へと放す。
強盗鳥は一度イノシシの方へと頭を向けた後、早速建物の陰の通路の上を飛ぶように、移動し始めた。
一行はそれを追う。
暫くして、西の外れの家が目の前に迫ってくる。
遠目に見て、一部砂には埋もれているものの、他の建物に比べて損傷は少なさそうだ。
「オホッ! やってるやってる!」
西の外れの家の近く。
光学迷彩で姿を隠したまま、跡地へと近付く影が1つあった――斎義 貞恒(さいぎ・さだつね)だ。
彼のウエストポーチの中には、パートナーのアメン・チア(あめん・ちあ)が入っており、イノシシたちの群れと、各場所でそれに対抗する学生たちの姿を眺めている。
「でもちょっと物足りねぇなぁ軽く味付けしてやるか」
ぽつりと呟いたアメンは、苦笑を零した。
「俺達はこの世界に来て間もない弱輩者だからなぁ。化物共にちょっかい出しても返り討ちにあうのが関の山だ」
だったら、足手まといを甚振って、様子を眺めるのはどうだろうか。
「面白いものが見れるぜ」
「まぁ……やれるだけやってみますよ……」
その指示の言葉を聞き、貞恒は頷くと、村人たちに向けて、ハンドガンを構えた。
近付いてきたところで、引鉄を引く。
放たれた弾丸が貫いたのは男性の村人の脚だ。
「……ケケケッ」
騒然とし始める現場を見つめ、アメンは笑う。
光学迷彩で身を隠したままの貞恒は「後は高みの見物だ」と様子を窺うことにした。
「――ッ!!」
突然、脚を貫かれた男性の村人は、声にならない叫びを上げる。
「大丈夫か!?」
異変に気付き杵島 一哉(きしま・かずや)は男性に駆け寄った。
「何事だ?」
マウロも駆け寄り、男性の傷の様子を見る。
「一体何処から……!?」
周囲に敵が居ないか警戒を向けていたアリヤ・ユースト(ありや・ゆーすと)も突然のことに驚き、辺りを見回す。
見回す限り、人の気配はないようだ。
パラミタ虎に乗っていた女性2人が降り、脚を怪我した男性を乗せる。
レオポルディナが傷口にヒールを施し、痛みを和らげた。
「目的地はすぐそこだ! 急ごう」
マウロの言葉に皆は頷いて、歩みを速めると、目の前に見えていた目的地である、西の外れの頑丈な家跡に、向かった。
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