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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第三章 カウントダウンイベント 3

「お、男の娘だと……!? なんとけしから……いや、随分と盛り上がってんな。こっちのほうも盛り上がってるかな?」
 エロ親父的発言をかましながら、近くの女官を見つけてはドサクサ紛れに乳を鷲づかみにする棗 絃弥(なつめ・げんや)
 彼はビンタをくらいながらも次々と大きめの乳を目指す。
 酒が回りすぎているようではあるが、巨乳と貧乳の区別が付いており、酔った上での事故、前後不覚といういい訳は通じなさそうだ。
「おおおお〜なんというモミ心地! この弾力! ああ、両手に収まらないほどこぼれる柔らかい乳〜!」
 絃弥が葦原明倫館総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)のデッパイに到達したとき――ハイナは紅白にも出ていたがなぜか大広間にも居た――彼の幸福度は絶頂に達していた。
「俺、このまましんでもいいわ」
「だったら、しにやがれでありんす!」
 ハイナが手甲(てっこう)で 絃弥の顔面を殴打する。
 鼻血をふきながら吹っ飛ばされた先には、柔らかな『平らなもの』があった。
 絃弥は両手のひらで『平らなもの』を撫でる。
「あれ、何だコレ。壁?」
「……!?」
 彼が触っている『壁』……アナスタシア・ボールドウィン(あなすたしあ・ぼーるどうぃん)のチッパイは、ふるふると震えていた(揺れてはない)。
「煩悩〜退散っ!!」
 アナスタシアは絃弥の胸倉を掴み、何処からともなく現れた梵鐘に撞木(しゅもく)代わりに打ち付ける。

 ご〜ん、ご〜ん
 ご〜ん、ご〜ん……

「いい音色だ。除夜の鐘ですか。さすがアナさん、用意がいいですね」
 源 義経(みなもと・よしつね)は、絃弥の乱行とその顛末を、酒を飲みつつ笑いながら傍観していた。
 彼は百八煩悩についてウンチクを語る。
「煩悩が108あるといわれますが、108という数の由来は煩悩の他に月の数の12、二十四節気の数の24、七十二候の数の72を足した数である108。つまり、1年間を表すという説や四苦八苦を取り払うということで、4×9+8×9=108をかけたとも言われているんですよ」
 義経は鐘の音を数えながらそのように言った。
「九郎ッ、解説……してないで、助けろおお!!」
「だ、黙れ! 絃弥の煩悩はこれで晴らすー! 煩悩退散〜!」
 絃弥の叫びもむなしく、アナスタシアの打ち付ける鐘の音は速くなり、それに合わせて彼の頭がひどいことになっていく。
 ……からだが!! うごかない!!
 彼には不適に笑う死神の顔が見えてきた。
 気付いたときにはもう手遅れである。
「Oh……Jesus……ざんねん、わたしのぼうけんは これでおわってしまった!」

卍卍卍


「どうしよう、ここドコなんだろう?」
 天御柱学院からやってきた水鏡 和葉(みかがみ・かずは)は、マホロバ城内で遭難していた。
 彼は確か大奥とは反対のほうへ進んでいたはずだ。
 しかし、マホロバ城は他にも執政を執り行う表、将軍の居住する中奥と、巨大な建物が連なる。
 また、歴代将軍が自分の趣味によって増改築を繰りかえしており、さながら『違法建築の玉手箱や〜!』である。
 そして和葉は、自分が迷子であることを認めなかった。
「ボクは断じて迷子じゃないよ。ちょっと足を踏み外してるだけだよ」
「和葉……そっちは大奥へ繋がる廊下で、将軍しか通ることができない御鈴廊下ですよ。将軍にもし見つかったら……それこそ人生の足を踏み外しそうですよ」
 マホロバ人の神楽坂 緋翠(かぐらざか・ひすい)が声をかけるが、和葉は聞いてないらしく、ひとりでふらふらと奥へと進んでいく。
 緋翠が追いかけて和葉に追いついたとき、和葉は目の前の立派な着物を着た若者に道を尋ねていた。
「すみません、なるべく大奥から離れてて花火の良く見える場所、ご存知ですか?」
 若者は答えず、じっと和葉を見つめている。
「あれ? お兄さん、何か悩んでる?」
 和葉は、顎に手をあてて考え込んでいる背中をぽんと軽く叩いた。
「よく分からないけど、難しいこと考えすぎて自分のしたいことが出来なかったら、疲れるだけだよ? なんていうか『粋』じゃないよね! もっと、人生楽しまないと!」
「あなたは楽しみすぎですよ、和葉。……申し訳ありません、そのいでたち。あなたはもしや鬼城 貞継(きじょう・さだつぐ)様では?」
 緋翠に名前を呼ばれ、貞継ははっと正気に戻ったようだ。
「(何だかさっきから変な感じだが)……いかにも、鬼城貞継だが?」
「え!? そうなの?もしかしていきなり有名人に会っちゃった? あ、ボク? 水鏡 和葉だよ! よろ……(ふがふが)」
 緋翠は慌てて和葉の口をふさいだ。
 彼の顔は若干青ざめており、最敬礼でお辞儀をする。
「この者はまだ子供ですから……どうかご容赦を!」
「まあ、今宵は無礼講だ。花火を観にいくのだろう? ついて参れ」
 そういわれて、貞継の後を付いていく和葉と緋翠。
 流石は将軍の知った廊下だ。迷いがない。
「ところで、大奥に行こうとしてなかったか?」
 突然くるり振り返った貞継に、二人は全身で全否定していた。
「めっそうもない!」と、緋翠。
「そうだよ、女の集団なんて怖くて近づけないよ!」とは、和葉。
つい本音を口走った和葉だが、貞継は笑っていた。
「まあ、一理あるかな(さっき、うさぎ女にさんざん弄られたような気がする……)さて、花火を見るならもっと近くがいいだろう……」