リアクション
12
『さて、レース時間も残り少なくなってきました。ほとんどの選手たちがゴールに入ります。
レイちゃん、ヨルムー選手、影虎選手、パラミタペンギンズ、むるん選手、小雪シスターズ、コト選手ら、第一グループの選手はほぼ全員がゴールしました。
残るローゼン選手、マカロン選手は、現在一所懸命ゴールにむかっています。
また、最下位は、なぜか立ち止まってしまった垂うさ選手と、ゲリ選手フレキ選手が、文字通りデッドヒートを繰り広げています。これは、まだまだ油断できません。いったいどうなるのでしょうか』
★ ★ ★
「レイちゃん、だめだよ、知らない人のカレー食べちゃ。メッ!」
やっとゴールしたレイちゃんを、『空中庭園』ソラが叱っている。
「まあまあ、レイちゃんも頑張ったんですから。まあ、頑張りすぎちゃった人もいますけど」
そう言って、ソア・ウェンボリスがチラリと横を見た。そこでは、従者たちを寝かせて、雪国ベアがせっせと介抱している。
「畜生、てめえらの仇は俺がとってやるぜ」
どこの誰だか分からない犯人にむかって、拳を振り上げる雪国ベアであった。
★ ★ ★
「お帰り……戻って……」
縄を断ち切ったヨルムーにむかって、ネームレス・ミストが言う。すると、障気の蛇は、ネームレス・ミストの身体にグルグルと巻きついていって一体化した。
★ ★ ★
「影虎〜。ちょっとそこに座りなさい」
戻ってきたティーカップパンダの影虎を目の前に正座させると、戦部小次郎が懇々と語り始めた。
「?」
「いいかい、私は最初に言ったよね、小ババ様には絶対に勝つようにと」
「??」
影虎が、それってなあにという顔で小首をかしげる。
「だからね、小ババ様には勝たなきゃいけないんだ」
「!」
分かったと言いたげに、影虎がキョロキョロと小ババ様を探して周りを見回す。
「いや、今さら探しても遅い……はあ、もういいですよ。影虎は影虎です」
根負けした戦部小次郎が、がっくりとうなだれた。もともと無理強いした自分がいけないのだ。
「すまなかったですね、影虎……、影虎?」
いつの間にかいなくなっていた影虎を捜して、戦部小次郎が周囲を見回した。
「こばー」
「♪」
なぜか、影虎が小ババ様と一緒に公園内を駆け回っている。
「影虎〜」
戦部小次郎は、がっくりとその場に両手をついた。できれば、混ざりたかった。
★ ★ ★
「うんうん、完走しただけでも充分だよ。観客は、この愛らしさにもうめろめろのはずだもん」
パタパタと羽根を震わせながら戻ってきた三匹のパラミタペンギンズを見て、小鳥遊美羽が言った。
ただ、前回善戦したローゼンがまだゴールしていない。
「大丈夫だもん、オリヴィエ博士の傑作ゴーレムなんだから、すぐにゴールするわよ」
「うん」
足許をパラミタペンギンズにグルグル回られながら、小鳥遊美羽がコハク・ソーロッドに言った。
★ ★ ★
「なあに、帰ってきたですってえ、あの馬鹿猫ぉ」
カラスのふぎむぎをゲシゲシと蹴り倒しながら日堂真宵が言った。
そこへ、完走したむるんが、どや顔で帰ってきた。
しゃーっと猫パンチで日堂真宵の縄を断ち切る。
「にゃあ」
さてさて、自慢げに報告しようとしたむるんだったが、あっと言う間に日堂真宵に縄でグルグル巻きにされてしまった。
「にゃっ?」
「さあ、さっさと帰るわよ。アーサー、知らないわよ、そんなカレー」
「ぐわっ、ぎゃっ!」
「ぎにゃぁ、ぶぎゃぁ」
縛ったふぎむぎとむるんをぼこんぼこんとはずませて引きずりながら、日堂真宵はその場を後にしていった。
★ ★ ★
「ちっ」
コトがゴールしたので無事に下ろされる神代明日香を見て、アーデルハイト・ワルプルギスが持っていたアイスクリームの匙を振って小さく舌打ちした。
「そんなあ、私はアーデルハイド様に酷いことなんかしたことないですぅ」
「さっき、私を縛ったじゃろうが!」
そらとぼける神代明日香に、アーデルハイト・ワルプルギスが怒鳴った。
「まったく残念じゃ」
使い道がなくて、大筆にしがみついてごろごろしているジュレール・リーヴェンディを見て、アーデルハイト・ワルプルギスはそうつぶやいた。
★ ★ ★
「帰ってきたでござるな、小雪α、β、γ。成績は今ひとつであったが、完走はりっぱでござるよ。それにしても、クロセル殿は帰りが遅いでござるな。あっ、いつものことでござるか」
いつまでも帰ってこないクロセル・ラインツァートを心配して童話スノーマンが言った。
「そうですか、誰も罠にかかってくれないとは。それは寂しいですね」
そのころ、月詠司の所で、油まみれの姿でクロセル・ラインツァートは余った柏餅をぱくついていたのだった。
★ ★ ★
「さて、現在残っている選手の一覧です」
24位レイちゃん
ヨルムー
26位影虎
27位パラミタペンギンズ
28位むるん
29位小雪αβγ
30位コト
94 ローゼンクライネ
89 マカロン
82 垂うさ
ゲリ・フレキ