リアクション
13
『さあ、残り時間もわずかです。
マカロン選手、今ゴール。
続く選手は……』
「ハーイ、いらっしゃいませデース。こちらは、カレーの無料……はうあーっ!」
また完食してくれとカレーを突き出したアーサー・レイスであったが、黙々と突き進むローゼンが、どーんっと正面に立ち塞がる障害であるアーサー・レイスを、躊躇なく突き飛ばした。
キラン☆ とお星様になりかけたアーサー・レイスが、不幸中の幸いで公園内に墜落して気絶する。
『何か事故があったようですが、大したことはなかったようです。御安心ください。
さて、ラストのデッドヒートは垂うさ選手が一歩リードしたようです。ゲリ選手フレキ選手とかなり差を開けました。
でも、まだまだ分かりません。ゴールまでは、全選手射程圏内です』
★ ★ ★
「きゅー」
マカロンが、縄を解かれた秋月葵の身体を駆け上って、頭の上でエクレールと再会の挨拶を交わした。
「遅かったよー、マカロンちゃん。ずっと待ってたんだからあ。でも、間にあってよかったぁ」
秋月葵は、ほっと胸をなで下ろした。
★ ★ ★
『では、ここで現在順位です。もう、ほとんど残っている選手はいません。
31位マカロン
99 ローゼンクライネ
92 垂うさ
85 ゲリ・フレキ
14
『ローゼン選手、垂うさ選手、相続いてゴールしました。
後は、ゲリ選手フレキ選手だけです。はたして、無事にゴールできるのでしょうか』
★ ★ ★
「大丈夫だったかい、最後の方で何か弾き飛ばしたみたいだったけれど」
なんとか無事に帰ってきたローゼンに、心配そうにコハク・ソーロッドが訊ねた。
だが、当のローゼンは、何を弾き飛ばしたのかも覚えてはいないようであった。きっと大した物ではなかったのだろう。
★ ★ ★
『さあ、順位報告も、これで最後となりますでしょうか』
32位ローゼンクライネ
33位垂うさ
94 ゲリ・フレキ
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『残るは、ゲリ選手フレキ選手だけですが、制限時間も一杯です。ここでゴールできないと、タイムアウトとなってしまいます。
頑張れ、ゲリ選手、フレキ選手。
ただ、ほとんど力が出ないのか、ふらついているのが気にかかります』
「ゲリ! フレキ! ほら、餌だ、餌だぞー」
『なんということでしょう、柏餅を両手に持った月詠さんの声を聞いて、両選手、死にものぐるいで走りだしました。
あっ、今情報が入りました。なんと、両選手、ここしばらく飯抜きだったようです。これでは力が出ませんね。
でも、このままでは、リタイヤになってしまうのではないのでしょうか。
はたして、時間内にゴールはできるのか。
ゲリ選手、フレキ選手、走る、走ります!
ああ、勢い余って足がもつれた。
両選手転びました。
おおっと、転んだ勢いで、餌ブースの前で止まれません。
その勢いのまま、ころころと転がった両選手、今、ゴールラインを越えました。
同時にレース終了です!』
★ ★ ★
「だから、こんな作戦はだめだと言ったんですよ」
ゴール地点に戻ってきた月詠司が、ウォーデン・オーディルーロキに言った。
「それはいいから、早く助けるのじゃ」
二匹の狼とじゃれあいながら、ウォーデン・オーディルーロキが叫んだ。
いや、じゃれているのではなく、もしかしてこれは食べられようとしているのだろうか。
「いや、私も、今朝、食われそうになったんですよ。だから、たぶん大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃないから助けてなのじゃー」
★ ★ ★
「つまらないのだ」
大筆をかかえたまま、ジュレール・リーヴェンディが本当につまらなそうにつぶやいた。
結局、全員がゴールしてしまったため、誰も罰ゲーム対象者がいなくなってしまった。
「いや、ちょうどいいカンバスなら残ってるぞ」
そんなジュレール・リーヴェンディの雰囲気を察した緋桜ケイが、床に倒れて気を失っているアーサー・レイスを指さして言った。行き倒れがいるというので、警備を担当していた緋桜ケイが様子を見に来ていたのだ。とりあえず大したことはなかったので、さてどうするかというところになっている。
「カンバス……」
ジュレール・リーヴェンディはニッと笑うと、元気よく大筆を振り上げた。
★ ★ ★
『順位、最終報告です』
34位ゲリ・フレキ
閉会式
「新春ペットレース、全選手がゴールしました。
では、成績を発表いたします。
優勝、エリシア・ボックさんの、ゴーレム、フォルテシモ選手。
準優勝、鷹野栗さんの、狼、ミヤルス選手
三位、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』さんの、黒猫、クトゥグァ選手とイタクァ選手。
ブービー賞、朝霧垂さんの、垂ぱんだうさぎ、垂うさ選手。
残念賞、ウォーデン・オーディルーロキさんの、狼、ゲリ選手とフレキ選手です」
シャレード・ムーンに呼ばれた各選手とペットたちが、表彰台に上っていく。
エリザベート・ワルプルギスから、トロフィーと賞状が渡された。
「それでは、これで新春ペットレースを閉会いたします。さようならー」
第2回ペットレース、無事に終了しました。
人数が少なめでしたが、結構波瀾万丈で、ボリュームがあまり変わりませんでした。
細かい推移は、マスターページに期間限定で一覧表をアップするので、そちらも御覧ください。