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リアクション
「なあ、信長……いいかげん機嫌を治したらどうだ?」
セイバーの桜葉 忍(さくらば・しのぶ)は、出立からここまでずっと不機嫌そうなパートナー、英霊の織田 信長(おだ・のぶなが)に声を掛けた。
「忍よ、お前には私が怒っているように見えるか?」
「……うん、見える」
「私は怒ってなどおらんわ、馬鹿者!」
怒気を含んだ声で言われても説得力はないのだが、仕方のないことなのだと忍は思っていた。
(……雨が降るかもしれない)
その雨で出来る虹はきっと、
「うおおおお――ッ! こい、お前達! 二度と悪いことが出来ぬ様、死より恐ろしい目に、この私が遭わせてやろう!」
ヒロイックアサルト『第六天魔王』の発動で炎のような禍々しいオーラと威圧感を出す、赤黒い色なのだろう。
「俺はシルキスに向かう敵を……まあ、いいか」
信長は既に地を蹴り、パラ実生がどっと押し寄せてくる眼前に立ち、剣を地面に刺し、立ち上る火柱でバイクや武器を一瞬で溶かし、燃やし尽くした。
「次ィィッ!」
荒れた信長を尻目に、忍はシルキス達に近づきそうなパラ実生に狙いを定め、片刃の大剣の光条兵器を出した。
「ヒャッハー! 轢き逃げしてやるぜぇぇ!」
意気込むパラ実生の間合いに、忍は一瞬で潜り込み、一閃。
バイクは切れ目よく真っ二つに寸断された。
信長の元に複数のパラ実生が一気に近づく。
援護は不要なんだろうなと思いつつも、忍は目くらましとして光術を使用し、相手の操縦ミスを誘う。
「うつけ者共がッ! 我が地獄の業火に焼かれるがよい!」
再び噴火する信長の怒りが地から炎なって吹き出し、パラ実生の頭に火柱を起こした。
肩で息をする信長に忍はもう一度聞いてみた。
「なあ、信長……いいかげん機嫌は治ったか?」
「忍よ、お前には私がまだ怒っているように見えるか?」
「……まあ、見える」
「当たり前じゃ! 私はまだ怒りなど鎮まっておらんわ、馬鹿者!」
なら、気が済むまで付き合うのがパートナーとしての責務だろうと忍は思い、構え直した。
「別に夢見る女の子がどうなろうと、私の知ったことではないわ。だけど、男のくせに数にものを言わせて女の子を連れ去ろうなんて、非常に気に入らないわね」
ウィザードの刹姫・ナイトリバー(さき・ないとりばー)が嫌悪を露わにした。
「今時令嬢の誘拐なんて流行らんじゃろう。パラ実生達には、今の流行が狩りだと教えてやらねばな。その身体にのう、ふふふ」
刹姫のパートナーである魔道書、黒井 暦(くろい・こよみ)は口元に暗い笑みを浮かべながら、パラ実生と虹の根元を目指す一行の戦いをただ眺めた。
「私は夜に漂うナイトリバー。さあ、愚か者達よ。悔い改めなさい」
片手を胸に、もう片腕を空に差し出し、刹姫は決め台詞のように吐いた。
(……で、またサキ姉は馬鹿なことを。ま、俺も同じ男として連中は気に食わねーから付き合ってやっか)
その様子を傍で見るパートナーの魔鎧、夜川 雪(よるかわ・せつ)は、刹姫が百合園にでも入ればまた違う性格になっていたのではないかと思いながら、パラ実生がやられる様を見ていた。
パラ実生は次々に負けていく。
それも呆気ないほどに、情けなく。
「情けないわね。数に頼っても、この程度とは」
「弱虫を狩るのもまた一興じゃろう、くふふ」
「暇だな、見学は……」
3人はそれぞれ思い思いに、ただただ同じパラ実生がやられる様を見続けた。
(キマクに来てまで治安維持に努める義理はないけれど、ヴァイシャリーの貴族令嬢が相手とあれば話は別かしらね)
ドラゴンライダーの崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)は溜息を1つついて、シルキスの元に寄った。
「ご心配には及びませんわ。蛮族狩りは乙女の嗜み」
「え……そうなのですか?」
「……知りませんでしたの?」
「存じませんでした。これはパトナー家の娘として、狩りを覚えなければいけませんね」
その言葉だけで、シルキスがどれほど世間に疎く、屋敷から出ていないのか十分に窺い知る事ができた。
シルキスがそのうち、パラ実生狩りで名を馳せたら面白いだろうなどと考えながら、亜璃珠はレッサーワイバーンに乗って戦闘を開始した。
(敵の機動力を殺ぐために、ワイバーンの吐く炎でバイク等の乗り物を黙らせるわ。燃料に引火させられればきっと素敵な事なるんじゃないかしら)
思うがままレッサーワイバーンに命令し、地上に向かって炎を吐かせた。
横薙ぎの炎が、複数台まとめて襲い掛かり、狙い通りに引火して爆発した。
黒こげになって自慢のモヒカンに引火したパラ実生が、火を消すために踊っていた。
「ふふ……汚物は消毒しなければいけませんわ」
「クソが! 撃ち落せぇぇぇぇ!」
パラ実生は亜璃珠向かって遠距離攻撃を仕掛けるが、まるで当たる気配がない。
欠伸で退屈をアピールし挑発するが、それでも不発続き。
それが徐々に苛立ちに変わる。
「乙女の柔肌に傷を付けようだなんて……やはり教育がなってませんわね」
急降下したワイバーンの速度を乗せたランスバレストに、パラ実生は吹き飛ぶのだった。
「病弱ないたいけな少女を誘拐しようとは不届き千万」
「うるせぇぇよ、ヒャッハー!」
セイバーのマクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)は、1台のスパイクバイクを駆る2人乗りのパラ実生と戦っていた。
後ろに乗るパラ実生のボーガンを、カルスノウトで払い落とす。
が、機動力にものを言わせ一撃離脱を繰り返すパラ実生に、マクスウェルは距離を詰められずにいた。
「――ッ!」
捌ききれずに一本の矢が、マクスウェルの頬を掠った。
「主っ!?」
パートナーである剣の花嫁、御堂 椿(みどう・つばき)は、邪魔にならぬよう後衛に徹していたが、傷を癒すために傍に駆け寄り、ヒールを唱えた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。下手な消耗戦に付き合って……」
舐めてかかったというわけではないが、どこか相手を見下す気持ちがあったのかもしれない。
まんまとパラ実生の思う壺に嵌りかかっていた。
「ウェルさん、私が引き付けます。その機を狙ってください」
「お、おい!?」
言うとすぐに椿は駆け出し、パラ実生の目の前に立った。
ホーリーメイスを突きつけ、宣言した。
「女性の扱いもわからぬ貴方達の相手は私です。きなさい!」
「ヒャッハー! それで俺たちを挑発しようってか?」
「ハッハー! 金になる女だけ掻っ攫えばいいんだよぉぉ!」
「なっ!?」
それはあまりに予想外だった。
てっきり挑発に乗るかと思われたパラ実生は、シルキスの方にバイクを向けた。
「待ちなさ――ッ!」
だから、もう頭の中は追うことで精一杯で、それ以外の行動はとれなかった。
椿が駆け出した瞬間Uターンしたスパイクバイク。
必死に青筋を堪えたパラ実生の演技に、ミスを冒したと気付いた時には手遅れだった。
思わず目を閉じた。
が、次に目を開けたときには、横転して滑り、傷付いたパラ実生達の姿があった。
マクスウェルが逸早く反応し、隙を突いてタイヤを斬り、事なきを得たのだ。
「……また、戻るからな。おまえがいないと、偏食が治らない」
「……本当に治す気はあるのですか?」
「さあな」
パートナーだけを見続けたマクスウェルだからこそだった。
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