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不思議な花は地下に咲く

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不思議な花は地下に咲く

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「えっと……」
 カムイと綺人は不思議そうにあたりを見つめるばかりである。遠くから様子を見ていた愛美たちは、呆気にとられるばかりだ。
「凄いねっ! みんなでゴーレムの隙間に弾丸とか石とか摘めちゃうんだもん。スノーさんなんて武器の先端を突き刺しちゃうし!」
 愛美に代わって、彼女の気持ちを代弁したのは結である。
「これならいけるね、余裕だよね!」
 隣で見ていたなずなも、どこか誇らしげにそう呟いた。戦闘を見ていたエースとエオリアはその戦いぶりに拍手を送っている。
「凄いな、君たちは。これなら俺たちの出る幕はないかもしれない」
「その様です。誰も傷つかずに勝利をおさめられれば、それが一番ですものね」
 そこに、軽快な足音が二つ、ゴーレムに向かって行くのが聞こえる。一同が音のする方を見やると、“疾風”と呼ぶに相応しい速度で二人、美羽とベアトリーチェが駆け抜けていた。
「皆さん、よそ見は禁物ですよ」
「そうそう、最後はあたしたちで決めちゃうもんね!」
 ベアトリーチェの言葉を聞いた一同が慌ててゴーレムを見ると、両の手を失ったゴーレムが、あろう事か思い切り体を逸らしている。
「流石にあの頭突きはやばいでしょ」
「ですよね」
 ベアトリーチェは返事を返すと、思い切り手に持つ大剣を振りかぶり、宙を舞う。
「皆さんが揃っている時点、残念ですが貴方に勝ち目はなかったみたいです」
 振りかぶった状態の剣を、ゴーレムの首元に落とした彼女は、落下の力を利用して更に深くまで斬撃を落とした。
「だからこれで最後にしてよ――ねっとっ!」
 更に高い位置まで飛び上がっている美羽が、右の足を空に掲げた状態でにんまり笑う。
「んじゃ、そーゆー事で! おやすみっ」
 ベアトリーチェの一撃で持って完全に体を畳んでいたゴーレムの後頭部に、美羽の踵落としが落ちる。音もなく着地した美羽と、音もなく活動を停止させられたゴーレムを見て、一同が再び拍手を送る。
「良かった良かった、なんとか目立てたよ」
「そうですね。スカートなのに、あんなに高く足を上げれば、目立っちゃいますよ」
 ふと、二人は視線の先に立っているエヴァルトに気付く。
「お……俺は見てない! 何も見てないぞ!」
「………」
「………」
 沈黙と苦笑いで瞬間的に静寂となったが、次の瞬間には笑い声が辺りを包んでいた。と――。
「いや、こちらは余裕の様だったな見たいだね」
 数人が、“うわっ”とでも言いたそうな表情となる。声の主は、ウォウル。
「通り過ぎる必要、なかったですね」
 続いて真人の声が聞こえ、セルファの姿が現れる。
「ま、これだけ人数いれば大丈夫だったでしょ。みんな無傷って言うのは流石だと思うけどね」
「ええ、随分と手練れ揃いみたいですからね」
 北都とリオンもそう言いながら現れ、特に何を言うでもなく、飛鳥が後に続く。
「先輩たちは……」
 リディアが恐る恐る尋ねる。
「そりゃあ、大変だったけど、でもこっちも協力して何とか敵さんを黙らせてきたよ」
 「まぁ、先輩なんだからそうだろうねぇ」などと、フィオレッラは別段驚く事もなく言い放つ。
「って事で、僕たちは再び順路に戻るとするよ。無事、このルートの敵さんもいなくなったみたいだしね」
 一行を横切る様にしてウォウルたちが、出てきた場所と対角線上にある違うルートへ消えて行く。その様子を、一同はただただ見送るだけだった。
「……随分早いフェードアウト、ですね」
「ですね。何がしたかったんでしょう」
 呆然としたままに、クリスと瀬織が呟く。
「と、兎に角! 休憩したら、気を取り直して先に進もうよ! 全然休憩できなかったからさ」
 愛美が慌てて言うと、ようやく全員で腰を下ろし、休憩に着くのだ。