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 そこへ、ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)がやって来て言いました。
「ピーターさんこんにちは。私の事覚えていますか?
「うん? 確かお前は……ミュリエル・クロンティリスじゃないか」
「そうです。覚えていてくれたのですね。ちょっと前まで、私もここにいましたからね。あの時は、とてもお世話になりました。楽しかったです」
「ああ。それなのに、帰っちまったんだよな。何度も引き止めたのに。ていうか、よく帰れたよな。奇跡的だぜ」
「……そ、それは……」
 『愛する人がいたから』だなんて、恥ずかしいです…。と、ミュリエルは心の中で思いました。
「でも、帰ってよかったです。だって、目が覚めたらお兄ちゃんがとても心配していましたから。ここは、確かにとても楽しいところですけど、でも、誘拐はいけない事ですよ」
「そのとおり、誘拐はいけない事だぜ!」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がピーターに向かって言いました。
「俺の妹ミュリエルも2日ほど起きない事があり、非常に心配した。報せを受け女子寮に駆け込んで、容態確認後に集団でボコられたのは、今では笑い話だ。依頼を見たら、他の子供に同じ症状があるらしい。悪気が無くとも、いい度胸だ…!」

 そう叫ぶと、エヴァルトは空中に飛び上がってピーターと対峙しました。

「やろうってのか? おもしろいじゃないか」

 ピーターは笑うと、ファイアーストームを撃ちました。炎の嵐がエヴァルトを焼き尽くそうとします。
「おっと!」
 エヴァルトは、素早く上に逃げました。間を置かずピーターが再びファイアーストームを撃ってきます。しかし、エヴァルトは再び素早く逃げます。彼は、プロミネンストリックを装備しており、通常の何倍も速く移動できるのです。
 しかし、ピーターが次々と繰り出す魔法攻撃で、そばに近寄る事ができません。
 エヴァルトは叫びました。
「遠くからチマチマやっているようでは俺は倒せん!かかってこい、腰抜け!」
 しかし、ピーターは挑発には乗りません。
「くそ! いまいましい小僧め!」

 そこへ本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)が飛び込んできました。
「加勢するぜ!」
 涼介は叫びます。
「魔法使いの弱点は同じ魔法使いである自分にはよくわかる。それは接近されると魔法が使えないということだ!」
 涼介は背後から『バーストダッシュ』でピーターに近づくと、無光剣で攻撃しました。
 見えない光の刃がピーターに襲いかかります、しかし、ピーターは敏感に気配を察知して上昇し、天井を蹴り降下。一旦着地した後、反対側の壁に向かい猛スピードで上昇。
 そこへ、強化光翼を装備したクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)がピーターの頭上から深緑の槍を手にランスバレストを発動! ピーターは素早くよけ、クレアに短剣を投げつけます。クレアは歴戦の防御術でラスターエクスードを展開して防御しました。
 ピーターは体勢を整え直すと「エンドレス・ナイトメア」を唱えました。しかし、エヴァルトが『護国の聖域』で味方全員の魔法防御を上昇させ、魔法は無効化。
「ちくしょう」
 さすがのピーターも4人の敵を相手に息が乱れて来ています。
 そこへ、ミュリエルの攻撃。
「シューティングスター」を唱えピーターにに光輝と雷電の魔法ダメージ。
 さらにエヴァルトが近づいて来て、カウンターで攻撃。
 落下していくピーターに向かって涼介が魔法を唱えます。
「凍てつく炎!」
 炎熱と氷結が同時にピーターに直撃! ピーターは勢いよく床に落下しました。

「ピーター!」
 ウェンディは落ちて来たピーターに駆け寄り、その体を抱き上げました。ピーターの体はぼろぼろになっています。しかし、見る見るうちに傷が塞がり、「こんなもんカスリ傷だ」と、ウェンディを押しのけて立ち上がりました。
「もう、やめて! 死んじゃうわよ」
 ウェンディは叫びました。しかし、ピーターは振り向きもせず浮かび上がっていきます。

「ピーター!」
 ウェンディは立ち上がると、変身の実を口に入れました。ウェンディの姿が小さくなり12才ぐらいの少女の姿に変わります。
「ピーター!」
 ウェンディはその姿でピーターに呼びかけました。
 ピーターは振り返って驚きます。
「ウェンディ!」
「あの頃のあなたを思い出して! あの頃のあなたもいたずらばっかりしてたけど、人を悲しませて平気な顔ができるような子じゃなかったわ」
「……」
 ピーターは何も答えません。しかし、あきらかに動揺しているのがみてとれます。
「ねえ、お願い。もう、無駄な戦いはやめて子供たちを返して!」
「……だめだ!」
 それだけ答えると、ピーターは、再び戦線に戻っていきました。