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ネバーランドへGO!

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ネバーランドへGO!

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「でかしたたぜ!」
 とらえられたティンカーベルを見て、フック船長は大喜びです。
「さあ、ティンク。ピーター・パンの居場所を言え!」
「レディに向かって、汚い顔を近づけないで!」
 ティンクはそっぽを向きました。
「お願いよ! ティンク!」
 ウェンディが変わって頼みます。
「私たちを助けて」
「誰が『ウェンディ』の頼みなんか聞くもんですか! それ、この世で一番嫌い名前よ!」
 ティンクは、以前ウェンディがこの世界に来ていた時に、あまりにもピーターと仲良くしすぎたせいで、今だにやきもちを焼いているのです。
「ボクからもお願いだよ。ティンクちゃん」
 アゾートが言いました。
「ピーターさんが見つからなければ、子供たちを連れて帰る事ができないんだもん」
「別にいいじゃない。あっちの世界の事なんて、みんなすぐに忘れちゃうわよ」
 ティンクはそっぽを向いたまま答えました。
「それはそうかもしれないけど……子供達の両親はとても悲しんでいるんだよ。なんとかしてあげたいよ」
 悲しそうなアゾートの言葉に、さすがのティンクも心を打たれたのか「分かったわ」と、答えました。
「そこまで言うなら、ピーターの居場所に案内してあげるわよ。そのかわり、私の体をぐるぐる巻きにしているこの糸を切ってちょうだい」
「ダメだ! 切るんじゃねえ!」
 フックが止めます。
「そいつは、けろっと嘘をつくぞ」
「だったら、教えてあげない」
 ティンクは機嫌を損ねたようです。
「いいよ。キミを信じる」
 そう言うと、アゾートはティンクの体に巻き付いていた糸を切りました。
「ありがとう。じゃあ、私の後について来て」
 ティンクは羽を広げて船の前へと飛んで行きます。

 やがて、たどり着いたのは、島の中央にあるお城でした。ネバーランドの入り口から見えた、あのお城です。
 近づいてみると、驚いた事にその城はお菓子でできていました。
「お菓子の城だったなんて……。実は、ここに来るのは、あたしも初めてなの」
 ウェンディが感激して叫びます。
「この城の一番奥の広間に、ピーターはいるはずよ!」
 ティンカー・ベルはぶっきらぼうに言いました。
「ありがとう。ティンクちゃん」
 アゾートが礼をいい、それからみんなそろって城の中に入っていきました。

 城の中は、壁も床も調度も全部お菓子でできていました。
 床は飴、壁は生クリームを塗ったスポンジでできています。鏡は氷砂糖、壁に飾られた絵はチョコレート。
「お腹すいちゃうなあ……」
 レイチェル・スターリング(れいちぇる・すたーりんぐ)は、思わずつばを飲み込みました。
「食べちゃおうかなあ」
「ダメですわよ、はしたない……でも少しだけなら……」
 クリアンサ・エスパーニャン(くりあんさ・えすぱーにゃん)は、そう言うと壁のスポンジを少しだけかじってみました。

「……! おいしいですわ!」

 クリアンサは叫びます。

「こんなおいしいケーキ、食べた事がありませんわ!」
「本当? じゃあ、私もちょっとだけ食べちゃおっと」
 レイチェルは壁にかかったチョコレートにかじりつきました。そして、クリアンサと同じように叫びました。

「おいしーーーい!」

 その時、

『白アリ侵入、白アリ侵入。駆除部隊出動せよ!』

 という音声が流れ、その後、

 ダダダダダダダ

 どこからか、太鼓が鳴り響き、同時にザッザッという足音が聞こえてきます。

「お姉様、なんだろ? あの音」
「さあ……何者かが行進してこちらに向かっているように思えますけど……」
 クリアンサは壁の生クリームを手に取って答えます。
「でも、白アリ侵入とか言ってましたから、害虫駆除の業者でも来ているのではないかしら? 私たちには関係ないと思いますわ」

 しかし、足音は、どんどんこちらに近づいてきます。そして……

 バアアン!

 ビスケットでできた扉が開いたかと思うと、おもちゃの兵隊がなだれ込んできました。

「白アリを駆除せよ!」

 隊長のアリクイが叫びます。
 なんと、白アリとはこの城に侵入して来た一同の事を言っていたのです!
 兵隊達は、銃口をこちらに向け、一斉に発砲してきました。

「きゃあ!」

 クリアンサとレイチェルは、間一髪で床にふせ銃弾をかわします。スポンジの壁に、蜂の巣のような穴があきました。

「乙女に向かって、白アリってどういう事ですの?」

 クリアンサは立ち上がると、光条兵器を手に、兵隊達に向かっていきました。
 そのクリアンサに向かって、兵隊達が銃を向けます。そして……

「撃てーーー!」

 その合図とともに、一斉に銃が火を噴きました。

「!!」

 クリアンサは、またもや間一髪で危機を逃れます。

「剣で向かっていってもダメだよお姉様! 相手は銃剣を持ってるんだよ!」

 レイチェルは叫びました。

「言われなくても分かっていますわ」
 クリアンサは、光条兵器を捨てると、ファイアーストームの詠唱を始めました。その間に、兵隊達は弾を込め、再びクリアンサを狙います。
 
「もう! 仕方ないなあ」
 レイチェルは、クリアンサに駆け寄ると、そのスカートをビラッとめくりました。

「……!!!!!」

 クリアンサが硬直します。

「おお!」

 おもちゃの兵隊達は一斉に鼻血を吹きます。

 すかさず、レイチェルが光術を撃ちました。兵隊達の目がくらみます。

「今よ! お姉様!」

 レイチェルの合図でクリアンサは叫びました。

「……ファ……ファイアーストーーーーーーーー!!!」
 しかし、あまりの恥ずかしさに、力が入りすぎ、クリアンサはファイアーストームを暴走させてしまいます。いつもより、はるかに高威力な炎が兵隊達に襲いかかり、一気に焼き尽くしました。しかし、壁という壁を覆い尽くしても、その暴走は止まりません。
「おい! 熱いよ! なんとかしねーか!」
 フックが泣きながら叫びます。
「ハイハイ。さあ、そろそろ、いい頃かな?」
 レイチェルはころあいを見て背後からクリアンサの胸を掴みます。
「きゃあっ!」
 クリアンサは、驚いて胸を隠しました。それで、ようやく炎が収まります。
 レイチェルは言いました。
「胸は使いようだよね。でもやっぱりなんか残念。」
「……もうお嫁にいけませんわ」
 クリアンサはそうつぶやくと、がっくりとうなだれました。

 それから、一同は焼けこげになった城の中を歩いていきました。しかし、ティンクの言っていた一番奥の広間に行ってもピーターの姿はありません。城中さがしても、やはりピーターの姿はありません。

「ちくしょう、やっぱり騙しやがったな」
 フックがティンクを睨みつけます。すると、ティンクはけらけらと笑い出しました。
「……やっと気がついたのね。このウスノロ!」
 そして、小さな壁の隙間から、外へと逃げていってしまいました。