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死骸の誘う暗き穴

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死骸の誘う暗き穴

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「さて、それではどうしますか?」
 敵の防御は思ったよりも厚い。セルファの突破力なら、抜けられないこともないが、敵の総数もわからない中、彼女を特攻させるわけにもいかない。
 どうするかと、真人が考え始めたその時だった。
「うぉーーーーっ! どけ、どけ、どけぇーーーーっ!」
 そんな声をあげ、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が現れた。手に、刃渡り2メートルの大剣型光条兵器を握り、一目散に敵の防衛ラインに突っ込んでいく。美羽は一歩も引かずに、大剣を振るい、向かってくる骸骨たちを次々と叩き潰していく。
「み、美羽! ひとりで先に進んだら、危ないだろ」
 そんな美羽の後を追い、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が駆け寄る。両手左右に槍を構え、美羽の後ろから攻めてくる骸骨たちをなぎ払う。
 そんなコハクに向かい、美羽はムッと顔をしかめた。
「のんびりなんてしていられないよ! この先に敵のボスがいるんだよ? ここは、先輩である私が、海くんたち後輩のために、ひと肌脱がなきゃダメなんだから!」
 えっへんと胸を張り、美羽はさらに光条兵器を振るう。やれやれとコハクは呟き、説得するのをあきらめた。
「わかったよ。後ろはまかせて。美羽は道を切り開いて」
「うんっ♪」
 元気に返事を返し、美羽は進んでいく。
 向かいくる骸骨たちから逃げることなく、美羽は大剣で敵を粉砕していった。
「よし、今だ! 俺たちも後に続くぞ!」
 そう告げるのはシオン・グラード(しおん・ぐらーど)だ。二人の相棒、ナン・アルグラード(なん・あるぐらーど)華佗 元化(かだ・げんか)も、シオンの言葉に頷く。
「よっしゃ! そろそろ、骸骨の相手は飽き飽きしてたとこだぜ!」
「うむ。このチャンスを無駄にする手はないな」
 そのまま、シオンたちは美羽の後ってついて行く。遅れて真人たちも、美羽に続いた。
 だが、彼らの進行はすぐに止まることになる。進行方向近くの壁が崩壊し、そこから肉の怪物が出現したのだ。
『――クソぉっ! 目障りなヤツらめ!』
 全身のあちこちから血を流しながら、怪物はくぐもった声で悪態をつく。
「な、なんだこいつ?」
「き、気持ち悪っ!」
 真人とセルファが顔をしかめて敵を見る。
「あ! もしかして、こいつが敵のボスなのかな?」
「多分、そうだろうね」
 美羽の言葉を、コハクが首肯した。
「それじゃあ、アイツを倒せば」
「ああ。全部、片がつくってとこだろうね」
「そうか。それはちょうどいい」
 シオンたちは、余裕の笑みを見せて、腕の骨を鳴らした。
 誰もが、そこにいる肉の怪物を『敵』として認識し、迫っていく。
『ええい! 邪魔だ、貴様ら!』
 そう叫ぶと、怪物は呪文を唱えた。ふたたび、地中から手が伸び、骸骨たちが召喚される。それを素早く見越し、シオンが叫んだ。
「――ナンっ! 元化っ! 邪魔な骸骨を蹴散して、前を開けろ!」
 シオンの言葉に、返事をするより先に、二人は動いた。まだ地中から全身を出していない骸骨たちに容赦なく、攻撃を仕掛ける。
「今だ! 今のうちだ!」
 そんなナンの言葉が響き、その場にいた残り五人は駆け出した。
 真人は杖を構え、
 セルファは剣を構え、
 美羽は大剣の光条兵器を構え、
 コハクは二本の槍を構え、
 シオンは刀を構えた。
 邪魔をする骸骨たちを、ナンと元化が撃破し、敵は無防備となる。その隙を見逃さず、五人は駆けだした。
「「「「「うぁあああああああああああああああっ」」」」」
 五人分の咆哮が響く。次の瞬間、四人分の剣が怪物を貫き、ひとりの雷撃魔法が、怪物の身体を焼いた。
『ぐぅっ、ば、バカなぁ……わ、私が、この私が、……敗れるはずが、』
 怪物はそう呟き、信じられない物を見るかのように、自身の身体を突き刺す四本の剣を見つめた。
『う、嘘だ……わ、私は、まだ……人間を喰らって生き残る、はず、な、の……にぃ』
 次第に力を失い、身体を貫かれた怪物は、静かにその場に崩れ落ちた。怪物の身体は、まるで塵かなにかのように、サラサラと風に舞った。
 同時に、あれほど暴れていた骸骨たちは一斉に動きを止め、ふたたび物言わぬ死骸へと戻る。
 こうして、長い戦いは終了した。