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えすけーぷふろむすくーる!

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えすけーぷふろむすくーる!

リアクション

――特別教室棟1F、用務員室。

「どうですか、そっちは?」
「駄目駄目。なーんにもありゃしないね」
「こっちもなーんにも」
「同じく」
 棚を漁っていた叶 白竜(よう・ぱいろん)世 羅儀(せい・らぎ)セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がため息を吐いた。
「こっちも何も無かったね」
「うむ」
 机を探していた黒崎 天音(くろさき・あまね)ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が戻ってきた。
「鍵の一つでもあるのかなーと期待していたんだけどね」
「ねえ、もしかして他の人が持って行ったんじゃない?」
 セレアナが言うと、
「あ、それあるかもしれないよー? さっき調べていた人いたみたいだし」
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が話しかけてくる。彼女は畳の上に敷いてある布団に寝転がり、すっかり寛いでいた。
「うーむ……ここは特に無さそうですね」
「しゃーない、他行くか。そんじゃーねー」
「ばいばーい」
 皆に向かってレキが手を振った。
「ってちょっと待った待った! 何平然と送り出そうとしとるんじゃレキ!」
 用務員室入り口を出ようとした彼らの前に、ミア・マハ(みあ・まは)が立ちふさがる。
「ちょっと疲れちゃったよ。一休み一休み」
「全く……じゃがわしはそこまで甘く「ほいっ」っておわぁっ!?」
 セレンフィリティがミアの足元に持っていたビンを放り投げる。割れたビンの中身から、冷気が立ち上る。
「な、何じゃこれは!?」
「液体窒素」
「そんな危ないもん投げるんじゃないわい!」
「えーだって通せんぼされたらねぇ……後何残ってたっけ?」
「濃硫酸があるわ」
「だってさ」
 ミアに向かって、セレンフィリティが笑みを浮かべた。
「……ドウゾ、オトオリクダサイ」
 拒否したら間違いなく投げる。そう判断したミアは素直に横にどいた。

――同時刻、美術室。

「……ふむ、やられたね」
 花京院 秋羽(かきょういん・あきは)が顎に手をあて、ため息を吐きつつ呟く。それはどこか感心した様子が混じっていた。
「っぺっぺ」
 シェリオ・ノクターン(しぇりお・のくたーん)が口に入ったチョークの粉を吐いていた。
「うー……あの野郎ー!」
 シャルロッテ・マミルナ(しゃるろって・まみるな)が涙目になって毒づく。

 美術室に入ってきたレリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)。待ち伏せしていた秋羽はとを入り口に回し挟み撃ちにしようとしていた。
 しかしレリウスは手に持ったチョークの粉を2人に投げつけると、転がっていたイーゼルを手に取り逃げ出したのだった。

「しかし……工具ではなくイーゼルなんて何に使うんだろう?」
 秋羽は一人呟くが、その答えを語る者は誰も居ない。

――特別教室棟1F、廊下。

「……くっ、やはり駄目か」
 手に持った分解したイーゼルのパーツを床に落とす。落とした音が、やけに大きく響いた。
 美術室で手に入れたイーゼルで、窓枠を歪め外そうとしていたのだが、想像以上の強度を誇る壁の前に徒労に終わる。
「……おい、誰か来るぜ?」
「む、敵か?」
「……いや、違うみたいだ」
 ハイラルの言葉通り、現れたのは白竜、天音、セレンフィリティ達だった。
「あれ、何してるの?」
 セレンフィリティがレリウスに問いかける。
「窓を壊そうとしているんだ。窓枠をこうやって……な!」
 レリウスは再度、イーゼルのパーツを手に取ると窓枠に叩きつける。が、やはり傷一つついていない。
「窓、ねぇ」
「どうした、天音?」
「いや、流石に少しは傷もつくんだろうけどさ、全くついていないのが気になってね」
「見た目以上に強固みたいですね。壁や戸なんかはそう簡単に壊せないでしょう……おや?」
「白竜、どうした?」
「……ガラス、ずいぶんと薄いんですね」
 ガラスを叩きながら、白竜が言った。
「あん? どういうこと?」
「いえ、普通防弾ガラスだったらもっと厚いと思うんですが」
 簡単に言うと、防弾ガラスとは薄いガラスを何層かに合わせているものである。弾丸を弾く、というより厚みで勢いを殺すのだ。
「それでも普通のガラスよりかは頑丈そうですが……」
「防弾じゃないのね……ね、一発撃ってみようか」
「やめなさいよ……音で誰か来たらどうするのよ?」
「大丈夫大丈夫。ほら、ばーんっと」
 セレアナが止めるのも聞かず、セレンフィリティが【マシンピストル】を窓ガラスに向けて撃つ。

――あっさりと、ガラスは粉々に砕け散った。

 ここで『強化ガラス』と『防弾ガラス』は違うということを簡単に説明する。
 この校舎にはめられている『強化ガラス』は面の衝撃には強いが、点の衝撃には脆い。更に一箇所が割れると破片を残さないくらい粉々に砕ける、という特性を持っている。
 今、ガラスは銃弾という点の衝撃を食らい、耐え切れず砕け散ったのだった。

「……えーと、どゆこと?」
 そんなこととは露と知らない撃った本人が、困ったような表情で振り返る。
「わ、私に聞かれても……」
 セレアナも困った表情で返す。
「……天音、どういうことかわかるか?」
「さあ、僕にもわからないね。とりあえず、出られるって事はわかるけど……本当に、何があるかわからないもんだね」
 ブルーノの言葉に、天音が楽しそうに言った。
「……とりあえず、出ましょうか」
「そ、そうだな」
 白竜の言葉に皆頷く。
「そうときまりゃとっとと出ようぜ」
「……色々と納得いかない」
 ただ一人、レリウスが釈然としない表情を浮かべていた。