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リアクション
――教室棟2F、とある教室。
「……何、あれ?」
「……いや、俺にもなんだか……」
教室内にいる探索者を探していたエールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)とアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)。2人がとある教室で目にした者は、
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「ほらリリィ! 後ちょっとだ!」
一心不乱に【ヘキサハンマー】で窓ガラスを叩きまくるリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)と、後ろで掛け声をかけるマリィ・ファナ・ホームグロウ(まりぃ・ふぁなほーむぐろう)だった。
「……ぜー……ぜー……」
「どうしたリリィ! 後ちょっとだろ!? どうしてそこで諦めるんだ!」
「あ、貴女も手伝いなさいよ!」
「あ、いいの?」
そう言うとマリィは【血煙爪】を取り出し、
「本当の不良なめんなガラスー!」
ガリガリとガラスを削りだした。
「……どうしよっか?」
「いや、あれ邪魔できる雰囲気じゃないだろ……」
エールヴァントとアルフが困った顔で見合わせる。
中には鉄槌と伐木道具でガラスを割ろうとしている女子が2人居る。しかもスクール水着で。この格好はペナルティによるものである。
予想外すぎるカオスな光景に、2人は追跡者であることを忘れていた。
「よし、わたくしも一発……せーの……おらぁッ!」
リリィが思い切りハンマーを叩きつける。
――皹が入ったと思うと、ガラスが即座に粉々に砕け散った。
「よっしゃ見たか! 壊れないもんなんてねーんだよ!」
「……割ったのは……私、ですわよ……ぜー……ぜー……」
息を切らせながらリリィが言う。
そこで、漸くエールヴァント達は自分達の役目を思い出した。
「ま、待て……ってあぶっ!」
中に入った瞬間、マリィが仕掛けていた黒板消しが降って来た。
「お、見つかったようだな……でも悪いがおさらばさせてもらうぜ!」
「それではさよならです!」
そう言うとガラスからベランダに出て、柵を乗り越えると一気に飛び降りた。
「ってちょっとこれ高くない!?」
「も、もう遅……ひゃあああああ……」
ぐしゃり、と鈍い音がした。
「……大丈夫かな、あの2人?」
「生きてはいるんじゃないか?」
「で、どうするか? アレの相手する?」
そう言って、アルフが廊下を指す。
「いや、あれは……」
とエールヴァントが苦笑した。
――その廊下では、
「大丈夫ですよぉ……痛いのは多分一瞬だけですから……」
半分虚ろな目で【黒薔薇の銃】を向ける月詠 司(つくよみ・つかさ)。
「……厄介ですね」
水橋 エリス(みずばし・えりす)の頬を汗が伝う。
「……どうする? 虫気にしてないみたいだよ?」
ニーナ・フェアリーテイルズ(にーな・ふぇありーているず)がエリスに言う。先ほどから虫を向けているが、司は気にもしない様子であった。
「こんな毒のない虫なんて向けられても、普段されてることに比べればなんてことないんですよ!」
「……普段どんな目に合っているんですか、あなた」
「え? それはですねぇ……」
エリスの呟きに律儀に答えようとする司。
「はぁッ!」
そこを狙い、トイレからアーシュラ・サヴェジ(あーしゅら・さう゛ぇじ)が飛び出すが、
「おっと、そこにも居ましたか!」
司は銃を向け、アーシュラに何度も撃つ。
「ひゃっ!?」
照準が定まっていなかった為、アーシェラには当たらなかったが動きが止まった。
「相手は他にも居ますよ!」
エリスが【リカーブボウ】の矢を放つ。
「そうでしたねぇ……でも、みんな殲滅させてあげますから安心してくださいよぉ!」
「……ど、どっちが追う側なのかわかんないよこれじゃ」
ニーナが半分泣きそうな顔で呟いた。
「何か、パパかっこいい通り越してこえぇ……」
その様子を離れて見ていたリル・ベリヴァル・アルゴ(りる・べりう゛ぁるあるご)が呟く。
「完全に暴走しちゃってるわねぇ。全く、面白……面白くなってきたわねぇ」
シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が新しい玩具を目にした子供のような目で言った。
「いやそれ言い直せてねぇから! あ、あと御守はさっきからなにしてんだよ?」
「か、カメラ……何故カメラがないのですか!?」
天寺 御守(あまでら・みもり)がリルの持っていたリュックを必死になって漁っている。
「いや、だから無くしたんだろ……それより、どうするんだよあれ?」
リルが司を指差す。他の者達の気が全て司に向かっている為、リル達は無事であるが暴走させたまま放っておく訳にもいかない。
「うーん……マダレイの血……はアホ過ぎて駄目だとして、リルの吸わせてあげれば?」
「うぇっ!? だ、だからパパに血をだなんて……いや、そんな……い、嫌なわけじゃないぞ? ほら、ひ、人前だし……でも2人っきりなら……って2人っきり!?」
「即妄想の世界ねぇ……いやー面白いわぁ」
「司殿とリル殿……親子で吸血プレイ……禁断の関係に禁忌プレイだなんてこれは薄い本が出ますわぁ!」
「やっぱマダレイはアホねぇ」
そう言いながらシオンは【霧隠れの衣】を羽織った。いざとなったら見捨てる為に。
「……ねぇ、シェイド。行かないの?」
その様子を教室から見ていたミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)が首を傾げながらシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)に問いかける。
「ええ、後ろから追いかけるのは無理そうですし」
それにあまりかかわりあいたくない、というのが本音だった。
「ふーん。ね、あの人がさっきから何騒いでるの? 吸血、とか薄い本、とか」
「聞いてはいけません」
そう言ってシェイドはミレイユの耳をそっと塞いだ。
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