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リアクション
――同時刻。
――特別教室棟1F、美術室にて。
「……誰もいなそうですね」
そっと美術室の扉を開けたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が、中を見回して呟く。
「んふ、なんだか面白くなってきたのう」
ザカコの後に続いたファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)が、何処か楽しげに言う。
「これが普通の肝試しならいいんですがね……」
「まあ、こういうのも悪くなかろう。それよりも用事をさっさと済ませてしまおう」
「ああ、そうですね」
二人は辺りを物色しだす。目的はここにあるであろう、工具だ。「脱出の際には役立つだろう」と探しにきたのだ。
「……それにしても、荒れてますねぇ」
ザカコが呟く。美術室内は絵画や胸像、イーゼル等が乱雑に置かれている。
「まあ美術室なんてそんなもんじゃろう……お?」
「何かありましたか?」
「おお、あったぞ」
そう言ってファタが指差した物は、一体の少女の全身像だった。
「……像、ですか?」
「おお、なかなかいい像じゃぞ。まぁわしはもうちょっと幼い方が好みじゃが……悪くは無いのう、んふ♪」
嬉しそうに言うファタにザカコが苦笑する。
「……ん?」
その時、ザカコが気づいた。像の表情が、動いた事に。
「ファタさん!」
ザカコが叫ぶと同時に、像が動いた。
「ん? うぉっ!?」
「あっと」
像――レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が口を開く。
「ほ、本物じゃったか……」
「うーん、気づかれちゃったか」
「ファタさん、逃げ――」
「悪いが逃げられはせんよ」
物陰から現れたミア・マハ(みあ・まは)が笑みを浮かべる。
「戸は閉めさせてもらった。そなたらは袋の鼠、というわけじゃ」
ミアの言葉にザカコが戸に目をやると、杖がつっかえ棒になっていた。
「ボクより早く出られるかな?」
そう言ってレキが手に持った【たいむちゃんの時計】を見せ付けられ、ザカコが悔しそうに歯を軋ませた。
距離としてはザカコの方が戸には近い。しかし、戸を開けるのに僅かだが時間を要する。アイテムによって速度が上がっているレキ相手だと、その僅かに時間が致命的な物となる。
「わかったようじゃの。あきらめて……ん?」
「どうしたのミア?」
「いや……そなた、どうしたのじゃ?」
ミアがファタに声をかける。彼女は全身をわなわなと震わせていた。
「あれ? どうしたの?」
その様子に、レキも声をかける。
「よ……」
「よ?」
「幼女じゃああああああああ!!」
「「……は?」」
レキとミアが、突如豹変したファタに目を丸くする。
「こんなむさくるしい所に幼女がおるとは、この世に神もおるもんじゃのぅ!」
「ちょっと待て! 幼女とはわしのことか!?」
「他に誰がおろうか! ピンポイントでわしのハートを打ち抜いてくれおって!」
「聞き捨てならん! わしはこう見えても……」
「実年齢なんぞどうでもいいわい!」
「……とりあえず、つーかまーえたっと」
完全にミアに気をとられているファタの後ろから、レキが抱きついた。
「ん? おお、捕まってしもうた」
「逃げる気など無かったくせに……」
呆れた様にミアが呟く。
「まあまあ、それよりわしは捕まってしもうたんじゃぞ。早く、早くペナルティとやらを!」
「……レキ、行くぞ」
疲れた表情を浮かべ、ミアがファタを引っ張っていく。
「あ、待ってよー」
その後ろを、レキが追いかける。
「……自分、置いてけぼりですか……まあ、捕まらなかっただけ良しとしましょうか……とりあえず、工具見つけたから持って行きましょう」
その騒動の中、ほぼただの背景と化していたザカコが呟いた。
「これがボク達のペナルティだよ。これから暫くそのままで過ごしてね」
レキは取り出したロープでミアとファタを縛る。『縛りプレイ』というのがペナルティだった。
「んふ、幼女に縛られるというのものも悪くないのぅ」
抵抗もせず、あっさり縛られたファタが嬉しそうに言う。
「ああ、幼女は愛でる物だと思っていたが、やられる側はそれはそれで興奮するのぅ……」
「……何故そなた喜んでおるのじゃ」
「うーん……あんまり罰にならなかったなぁ?」
悦に浸るファタを見て、レキは苦笑し、ミアはドン引きしていた。
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