空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

【空京万博】海の家ライフ

リアクション公開中!

【空京万博】海の家ライフ
【空京万博】海の家ライフ 【空京万博】海の家ライフ

リアクション

 セルシウス海水浴場の一角にある特設ステージ。
 ささらの言った「ミス・セルシウス海水浴場コンテスト」(通称ミスコン)には、続々と参加者が集まっていた。
 にも関わらず、まだコンテストが始まらない原因は、開催委員長である男が行方不明であったからである。

 そんな中、湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)が壇上に上がる。
「お集まりの皆様、ミスコン開催まで今しばらくの合間、ネフィリム三姉妹演ずるパワードスーツ航空ショーにてお楽しみください」
 実はこの遅延は、凶司にとっても都合がよいものであった。
「(ちょうどいい機会だ。航空用パワードスーツの使い勝手を試してみるか)」
 そう考えて彼は壇上に上がったのである。
 凶司の司会が終わると同時に、空を滑空する三人の影。
 上空をパワードスーツ姿のエクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)ディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)セラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)、すなわちネフィリム三姉妹が華麗に舞う。
 そもそも、このパワードスーツはアクロバット飛行に最適化された装備のため、戦闘力は低い。それでも、各スーツは三姉妹の特性に合わせて微調整が施されており、エクス機は旋回性能、ディミーア機は最高速度、セラフ機は兵装管制にそれぞれ若干優れている。

「(これってセラフお姉ちゃんとかが使ってる地球の装備なんだよね。ボクでも使えるのかなぁ、どきどきするなぁ……)」
 三姉妹の末っ子であるエクスは、凶司の指導の下、パワードスーツを何度かテストはしているものの、初の本番という事で、動きがやや鈍い。最も、それは他の姉達や凶司にしかわからない程だ。
 そんなエクスのおっかなびっくりの飛行を、パワードスーツの性能を確認しつつ、アクロバット飛行の演目を生真面目にこなしていくのは、次女のディミーアである。
 最高速度に優れた彼女のパワードスーツは、旋回性能に優れたエクスと対照的に直線的な高速機動で観客を魅了する。
「まだいける! もっと早く、高く!!」
 凶司には、「ほんと、次から次へとよく考えるわね……まぁ、使い勝手は悪くなさそうだけど。こんなので本当に戦闘に役に立つわけ?」等と軽口を叩く事も度々あったディミーアであるが、今はもっと最高速とそれに見合う加速が欲しい、と思いつつ、風を切って飛ぶ。
 目を攫うような最高速での上空通過から急加速、急減速などで緩急をつけた演技飛行を見せるたディミーアが、空で置き去りにした二人に叫ぶ。
「エクス、姉さん、いくわよ!」
「それじゃ、マニューバB−2、いってみましょうかぁ? エクス? いけるわねぇ?」
 三姉妹の長女であるセラフは、ハイテク兵器の取扱いに長けた身として、エクス、ディミーアをサポートするまとめ役であり、上空での演目進行、アート用スモークなどの使用指示も担当していた。
「(急に教導団に出向させられたと思ったら……なるほどねぇ)」
 今日の計画を凶司に打ち明けられた時、セラフは真っ先に賛同していた。
 ディミーアは「武器の使い方として間違いよ!」と口を尖らせていたが、出稼ぎの傭兵時代があったセラフには、凶司が提案したパワードスーツによるアクロバットショーは、今までしたことのない魅力的な武器の使い方だった。
 そんな姉として、そしてまとめ役としてか、一番心配していたエクスを見やるセラフ。
 だが、彼女の目に飛び込んできたのは、エクスの驚くべき姿だった。
「よ……よしっ、だいぶなじんできた……!!」
 慣れてくるにしたがって、ディミーア以上に大胆なアクロバット飛行を見せるエクス。
 元々、旋回性能に特化した機体ではあるが、それでも客席をかすめるような低空飛行からの急上昇、『バーストダッシュ』によるクルビット機動のような超高速状態からの旋回など、初心者の芸当ではない。
「いけるよっ、お姉ちゃん! ディミーア!!」
「やるじゃない! エクス!!」
 ピューと、ディミーアが口笛を吹く。
「マニューバB−2!! 状況開始するわよぉ!!」
 三姉妹がそれぞれ、腰に付けた缶状の装備に手をかける。
プシューーーッ!!

「「「おおおおおぉぉぉーー!!」」」

 空を見上げる観衆がざわつく。
 三姉妹の腰の缶から白いスモークが飛び出し、空京万博のマスコットたいむちゃんが描かれていく。

「「「うおおおぉぉぉーーー!!!」」」

 一気にボルテージの上がる観客。
 壇上の凶司も満足気に頷く。
「(三次元には興味はない! だが……俺とて男だ。世の一般的な男性がどういうのが好きかはきっちり抑えているのだ。メカと若い娘が嫌いな男などいるものか? いや、断じていない!!)」
 心の声で14歳とは思えぬ思いの丈をぶちまけた凶司が、コホンと咳払いをし、
「それでは準備も整いましたところでマイクを代わりましょう、どうぞ……」
と、凶司がマイクを渡す。
「え? あ……あ、アレ? 美羽さん?」
「やっほー! デスメガネボーイ!!」
 マイクを受け取ったのは、ギターを持ち、ミニスカートとリボンが付いているAラインのワンピース水着、その上にヨットパーカーを羽織った小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)であった。
「あれ? 次はミスコンの開催だって聞いてたんですけど……」
 小声で呟いた凶司が舞台袖を見ると、スタッフと思われる男が両手でバツ印を作っている。
「まだらしいよ? 何かトラブったんだって……」
 そう言いながら美羽がマイクをスタンドにセットする。
 凶司が「ふーん、そうですか……」と言いつつ、舞台袖へ戻っていく。
 その道中、トランクス型の水着にヨットパーカーを羽織り、ベースを持ったコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)と、腰に長いパレオを巻いていたワンピース水着とヨットパーカー姿のベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)らとすれ違う。ちなみに、三人が着ているヨットパーカーはおそろいのものである。
 そして……もう一人。
 凶司がその姿を見て、呆気にとられる。