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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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リアクション


「ぐああああぁぁぁ!?」
 幾多の半透明の触手が、セルシウスの体にまとわりつき、ギリギリと締め上げる。
 だが、貴重な触手プレイを受けるのが大の男のためか、観衆の関心度は今一つ低い。
「ボクじゃなくて良かった……」
 戦いを継続しながら、レキが横目でそんなセルシウスを見る。
「でも、あの人何だかすごく苦しそうよ、レキ?」
 雅羅が呟く。
「大丈夫だよ……多分」
 厄災の震源地たる雅羅からは少し遠いから、と言いかけたレキ。頭の中に、やはり不幸の連鎖は断ち切れないのかな?と、思いを巡らす。
「私も、何か……武器、いいえ、イコンさえあれば!!」
 悔しそうに唇を噛む雅羅。
「力が欲しい? 雅羅ちゃん?」
 天から聞こえた声に雅羅が振り返る。
「誰?」
 振り返った先には、腕組みをした想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)が立っている。小柄なその姿がいつも以上に大きく見える。
「瑠兎子……?」
 瑠兎子の青い瞳に宿る何かの決意に、雅羅が息を呑む。
「雅羅ちゃん。この夏の貴女は覗き魔、亡霊、パラ実生を相手によく戦ったわね。だけど見ての通り、あの巨大クラゲは今までの敵とは桁外れよ。雅羅ちゃん。貴女の本当の勇気を試される時が来たの!」
「私の勇気……?」
 ゆっくりと歩いてきた瑠兎子が雅羅の両手を掴み、瞳を見つめる。
「戦う力ならある! あとは、雅羅ちゃん次第なのよ!! どう、クラゲと戦う勇気はある?」
 少しの沈黙の後、雅羅が静かに頷く。
「ええ……あるわ!」
「じゃあ、一緒にイコンで戦って! この海水浴場の危機に! 強大な敵に!! 貴女の勇気と正義が臆さなければ!!!」
「私に出来るなら!!」
 雅羅が応じたのを見た瑠兎子が、携帯電話を取り出す。
「雅羅ちゃん! 呼ぶのよ!! 手を上げて、貴女の力を!!!」
 瑠兎子に促された雅羅が、一緒に右手を突き上げる。
「ユッチー!!」
 瑠兎子の叫びに、青空から一体のイコン、NT-1が降臨する。
 コクピットハッチが開き、薄い茶色のボブカットの髪を揺らす想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が顔を出す。
「さぁ、雅羅!! オレとキミで行こう!! この雅羅ロボで!!!」
「ええ!! さ、行くわよ! 瑠兎子!! ……瑠兎子?」
 いつの間にか瑠兎子は、イコンから離れた場所にて雅羅に手を振っている。
「ワタシ、揺れに弱いから無理なんだー! ゴメンネーー!! イコンは一人でも操縦出来るそうだから、雅羅ちゃんが操縦できなくてもユッチーが何とかやるわ!ー! 頑張ってーー!!」
「……え?」
 雅羅に手を振る瑠兎子を残し、夢悠がハッチを閉める。
 こうして、雅羅が乗った瞬間、このイコンNT-1は雅羅ロボになるのであった。
 戦闘を開始する雅羅ロボのコクピット内では、夢悠が自分の携帯音楽プレイヤーに入っていた瑠兎子作の歌を大音量で流す。

【雅羅ロボのうた】
作詞・作曲・唄:想詠瑠兎子

平和な海水浴場を 荒らすクラゲを退けろ
ユッチー!カモーン! 雅羅が出撃だ
巨大な保安官 雅羅ロボ
弾丸パンチ! 弾丸キック! 正義の一撃
弾丸! スピア! 倒したぞ!
行け行け DX! 雅羅ロボ!


「弾丸パーンチ!」
「弾丸キィィーック!」
「弾丸スピアァァーッ!!」

「……やめて、夢悠。何だか恥ずかしいわ」
「あれ? そう?」
 コックピットに響く熱い魂の入った歌をバックに燃える夢悠。先ほどまで技名を叫んでいたのも彼である。
「ただのパンチ、キック、スピアなのに大袈裟じゃない?」
「違うさ! 『弾丸』が付くのは雅羅ロボだからだよ!!」
「射撃武器とかは無いの?」
「無いね」
「どうして?」
「こう……気分を出すために、かな?」
 夢悠がアハハと笑う。