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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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 クラゲの数え方は『◯桶』だという。
 一桶だけではなかった巨大クラゲに、掃除屋達に大号令がかかる。
 麦わら帽子とサンダルでゴミ拾いに従事していた掃除屋のレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は、ウインドブレーカーの下にタンクトップ、短パンとサンダルという服装のカムイ・マギ(かむい・まぎ)を伴い、慌てて現場へと走っていた。
 白色の肌の保護のため、日焼け止めをしっかり塗ったカムイが、風に飛びそうな熱中症対策用の白い帽子を手で抑えつつ、邪魔にならないよう、後ろで括った髪をなびかせて走る。その手には、砂浜を歩きながらゴミを拾っていたゴミ袋が持たれている。
 レミリアがあちこちに立てた『ポイ捨て禁止』の看板を横目に見たカムイが呟く。
「僕、後で手の空いてる人に看板を立てて貰おうって思ってたけど、もう実行に移している人がいたんですねぇ」
「そりゃあ、やっぱり泳ぐなら綺麗な方がいいし、ゴミや流木で怪我しちゃったら大変だもん。みんなそこは譲れないんだよ」
 レキの赤髪のポニーテールが揺れる。
「レキ。巨大クラゲが出たって……さっき浅瀬で見たのがやっぱりそうじゃないでyそうか?」
「うん、ボクもそう思う。切れ端だったんだね」

 浜辺でゴミ拾いをしていた時、
「ん? 何か白っぽくて半透明のプカプカした物が浮いてる。あれはビニール袋?」
と、レキが海面を漂うモノをヒョイと拾いあげる。
 落ちたコンタクトレンズを探すような慎重さで足元を見ていたカムイが、
「困りますね……ビニール袋は、ウミガメが誤って食べてしまって窒息することもあるらしいんですよ?」
と、返答する。
「迷惑な話だよねー……て、何探してるの?」
「……あ、あった!」
 カムイがキラリと光った欠片を手に取り、レキがそれを覗き込む。
「これ、ガラス?」
「はい。割れた瓶の残骸でしょうね。ガラスの欠片って、足を切ったりして大変ですから。光りの反射など気をつけて見ていたんです」
 カムイが欠片をゴミ袋に入れる。
「まったく、海で思い出残すのはいいけれど、ゴミを残すのは駄目だよね」
 レキの手に持たれた半透明のソレを見つめるカムイ。
「レキ……ビニール袋にしては形状が変だと思います」
「え? だ、確かに……ビニールにしては厚いような。グニグニしてるような。長い触手のようなものが垂れ下がっているような……」
「そう言えば、この海にクラゲが出るって聞いたような気がしま……」
 ドオオオンという音が遠方で聞こえる。
 レキが見ると、イコンガ海辺で何やらグレネードを放っている。
「アレ……って?」
 カムイが呟きかけると同時に、レキが走りだす。
「ホラ、カムイ! 何かトラブってるみたいだし、ボク達も行くよ!!」
「あ、待って下さい! ……もう、汗はあまりかきたくないんですよ?」

 現場に到着したレキとカムイは素早く各々の役割分担を決めた。
 リタイアした(させられた)刀真の代わりに、雅羅達と共に戦うレキ。
 そして、刀真を『ナーシング』と『ヒール』で回復する役をカムイが務める。
「レキ、無茶しないように!」
「大丈夫!!」
 そう言って、レキを送り出したカムイは刀真の傷を治す。
「(でも、クラゲがここまで凶暴なんて……何か理由があるんでしょうか? この傷なんて、まるで銃で撃たれたみたいです……)」
 そう考えつつ、刀真のパートナーである月夜が一人孤独に砂浜で○×ゲームに興じる風景にカムイの頭は余計に混乱していくのであった。
 刀真亡き後、前衛がいなくなっていた豊和達にとって、セイバーであるレキの参戦は心強いものであった。
「いっくよぉ!! たああぁぁーー!!」
 レキの『アルティマ・トゥーレ』が、触手へのダメージと共に、海面の表層ごと凍らせて動きを鈍らせる。
「氷術!!」
 豊和がレキの意図をいち早く汲み取り、更なる氷をクラゲにプレゼントする。
「あんた、やるじゃない!! それなら……!!」
と、ルクセンが『弾幕援護』を仕掛ける。
「いっけぇぇぇーー!!」
 複数の触手が氷漬けになったところに、レキの『財天去私』が叩き込まれる。
 ガラスを砕く様に、粉砕されていくクラゲの触手。
 レキが外した触手は、レミリアがパイルバンカーで援護している。
 危機と受け取ったのか、クラゲが海中へ一旦後退する。
「倒したの!?」
 荒い息をついたルクセンに、豊和が「だと、いいんですけど」と返事をする。
「!? ……フェイント!? みんな、気をつけて! 来るよッ!!」
『殺気看破』で察知したレキが、仲間に警告を発する。
 巨大クラゲが大きな胴体の傘をすぼめ、一気に掻きだす。
 普段より大きな波がレキ達を襲う。
 波に気を取られたレキ達、直ぐ様豊和が雅羅のガードのため、彼女の前に立ち塞がる。
 だが、クラゲの触手は思いも寄らない方向にいた人物に向かう。
 そう、雅羅の生まれ持った厄災は、知的好奇心を抑えきれなかったエリュシオンの男にも襲いかかったのである。
「む!? な、なんだ……こ、これは!?」
 突如自分の体が天地逆さまになった事に驚愕するセルシウス。
「人質を取る気!?」
 ルクセンが叫ぶ。
「馬鹿な!? そんな知能を持ったクラゲなんて聞いたことありませんよ!?」
 豊和が困惑の表情を見せる。
「うおおおぉぉぉーーー!!?」
「駄目だ……」
 カムイの治療を受ける刀真が苦悶の表情を浮かべて寝言のように呟く。
「え? 刀真さん、何か言いました?」
 カムイが耳を刀真の口元に寄せる。
「そ……そういうのは、女子でやらない……と……」
「……」
 一人ケンケンパーをしていた月夜が「スケベ……」と愚痴る。