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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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「マズッ!!」

 元の、というか元祖海水ラーメン食べたアスカが、吹き出したのはつい先ほどである。
「ちょっと! これ作ったのどこの味覚馬鹿なのよぉ……ってあれ??」
 器を持って厨房に文句を言おうとしたアスカの目に、トーガを着た見覚えのある男がとまる。
「あれ? 久しぶり〜金髪ギリシア彫刻君〜♪」
「む?」
 ノーンとなななによるラーメン改造を見守っていたセルシウスがアスカに振り向く。
「コンビニ以来だな」
「そうね。あの時はいい仕事できて楽しかったわ〜、今回はここに遊びに来てたんだけどぉ……って、そうじゃないのよ!」
と、アスカがラーメンの器をセルシウスに差し出す。
「さすがにこのラーメンは酷いと思うの〜……おかげで吹いたし、危うくスケッチブックにゲルニカちっくな絵を衝動的に描きそうになったじゃないのぉ!!」
「創作意欲が沸いたのか?」
「違うわよぉ! これがエリュシオン流ラーメンなのぉ?」
「……断じて認めたくないが、ヤツにも同じ事を言われそうだな」
 頭を抱えるセルシウスに、アスカが小首を傾げる。
「ヤツ?」
 セルシウスはアスカにエポドスの来襲の事を話した。
「う〜ん、詳しい内容は分からないけど要はそのエポドン君に嫌味言われたくないんでしょ〜?」
「そうだな。他者の欠点を探すのには頭が最高に切れる男だからな」
「海は楽しめたし、面白そうだから手伝うわぁ」
「ラーメン作りをか?」
 セルシウスの問いにアスカが、ノンノンと指を振る。
「私って料理は専門外なのよねぇ。だからぁ、私なりのお手伝いするわね〜♪」
「?」

「はいー、出来たわよぉ!」
 座ってアスカに二の腕を差し出していた客が満足気に頷く。
「おお! ありがてぇ!!」
 客の男の二の腕には、空教万博のマスコット「たいむちゃん」が見事にペイントされている。
 アスカは、海の家で食事した者達に、無料でボディペインティング、謂わば即席のタトゥーを提供しているのであった。
「でも、これじゃあ海に入れねぇな」
「平気よぉ〜、これは特殊染料だからそのまま海に入っても大丈夫なのよぉ。あ、でもぉ、お風呂や熱いシャワーを浴びると消えちゃうからねぇ」
「そうか! わかったよ」
 笑顔で立ち去った客を見て、アスカがフゥと一息つく。
「みんなには喜んで貰えるけどぉ、私の腕が腱鞘炎になりそうねぇ」
 今や、海の家の一角に即席のアトリエを持つアスカ。
 アスカのボディペインティングを待つ客達を整理していた陽太が振り向く。
「一度、休憩を入れましょうか?」
「大丈夫よぉ、マスオさん」
「……その呼び名は、まぁ、婿には入りましたけど」
 苦笑する陽太。
「それよりぃ、あなたも、奥さんのペインティングなんてどうかしらぁ?」
「!!」
 陽太の心がざわつく。確かにアスカなら、彼女の顔を端正に描いてくれるだろう……が。
「お言葉ですが……彼女はもう俺の心にハッキリと刻まれてるんです」
「ラブラブしてるわねぇ」
 冷やかすアスカから、照れた顔を背けた陽太が声を出す。
「はい、次のペインティングをお待ちの方、どうぞー?」
 その時、アスカの耳に「ブッ!!」という声が聞こえてくる。
「まぁた……被害者かぁ……」
 果敢に元祖海水ラーメンに挑んだお客には、ラーメンの印を描いてあげようかな? アスカはそんな事を思いながら、ペンを握るのであった。