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続・悪意の仮面

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続・悪意の仮面

リアクション

「おい、アニス。あそこにいる人間は仮面を付けておらんか?」
 禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)――愛称リオン――が地上を指し、空飛ぶ箒を操るアニス・パラス(あにす・ぱらす)に示してみせる。
「あ、ほんとだ! さっそく和輝に伝えなくっちゃね!」
 アニスは確認すると、精神感応を使い、彼らのパートナーである佐野 和輝(さの・かずき)に呼びかけた。
『和輝和輝ー! 少し先の路地に仮面をつけた人を発見したよー!』
『そうか、じゃあ後は援護を頼んだぞ』
『リョーカイ!』
 通信は簡潔に終えられる。
「どうやらアニスたちが仮面を発見したらしい」
 和輝は隣に控えるリモン・ミュラー(りもん・みゅらー)に今の内容を伝える。
「この先の路地に付けた人間がいるそうだ」
「そうか、ならばさっさと手に入れようぞ」
 リモンの瞳は楽しげに輝いた。

「さーって、あの子はどんな反応をするのかな?」
 少し時間を遡った時の話。
 紅護 理依(こうご・りい)は朝斗たちの後を追うネームレスに目を付け、後をつけていた。
「……何です?」
 動きが遅いのもあり、後方を歩いていたネームレスは何か気配を感じ足を止める。
「……何か、見られるような気配がするのですが……」
 振り向き、背後を確認するも何もない。
 ネームレスは再び歩き出した。
「アシッドミスト!」
 その時、理依はネームレスに向かって術を放った。
 途端、ネームレスの服が段々溶けていく。
「あはは。どうだ、自分の服が溶けていく瞬間は! 裸になることで羞恥心に身悶えてしまえ!」
 ネームレスの追っていたメンバーたちが視界から消え、理依はネームレスの羞恥心を煽ろうと飛び出す。
「……」
「ほら、黙ってないで叫び声なりなんなり出せば良いだろう? まあ、それで誰かが聞きつければ余計にその醜態が広まるだけだろうがな」
 理依はネームレスを見下ろしながら言った。
「……クク、それで満足はしましたか?……」
 だが、ネームレスの口から発されたのは平然としたもの。
 むしろ動揺しなさ過ぎて不気味なくらいだった。
「な、なんでだ? 普通恥ずかしいだろ……?」
 そこで理依はネームレスの異常さに気付く。
「っち、恥ずかしがらないならもういい!」
 作戦の失敗に舌打ちし、理依はもう用がないとばかりに去ろうとした。
「ブラインドナイブズ!」
 そこへ、唐突に武器が飛んでくる。
 理依は反射的に体を避けた。
「おいおい、和輝。避けられてしまったではないか?」
「闇討ちは失敗か。なら堂々と仮面を奪うだけだ」
 それまで逃げようとしていた理依の前に和輝とリモンが立ちはだかる。
「契約者か……捕まってたまるかよ!」
 理依は火術で柱を作り、反対方向に駆け出した。
「足止めか。まさかこれで私たちから逃げられると思っていないであろうな」
『アニス、任せたぞ』
『うん。にゃは〜っ! アニス頑張るもん!』
 動揺した素振りのないリモン。
 その横で精神感応で和輝は上空にいるアニスと連絡を取った。
「いっくよー! ちゅど〜ん♪」
 空からアニスが雷術を放つ。
 理依が怯んだとところに、今度は死角からミルディアが飛び出し理依に体当たりを食らわせた。
「はい、仮面は回収するよ!」
 仰向けに倒れた理依の上に乗っかって抑え付け、ミルディアは理依から仮面を剥ぎ取った。

「――ぃった、くない?」
「怪我したところは全て医学を極めた私が治療したからな。当然であろう」
 ミルディアの体当たりによって頭を打ち、気を失っていた理依が目を覚ます。
 そこへリモンが尊大な口調で返した。
「そうか、俺が仮面で暴走してたのを止めてくれたんだっけ。今考えたら八つ当たりとはいえいくら何でもやりすぎだったしな……。止めてくれてありがとう」
 起き上がった理依は反省の言葉を口にした。
「ところで、その仮面なんだが」
 和輝はミルディアの手に持つ悪意の仮面を指す。
「こちらに渡してもらえないか?」
「なっ、何を言うの!? これは危険だからあたしが回収するんだよ!」
 和輝の言葉に、ミルディアは仮面を後ろに隠した。
「そちらこそ何に使う気だ。まさか被る気ではなかろうな?」
「違うもん! 回収するだけだよ!」
 リモンの問いに、アニスはむっとして答えた。
「悪いが、それは渡して欲しいんだ。俺たちはそれが何かを調べたい」
「え、調べる……?」
 和輝の言葉が予想外だったのか、ミルディアはきょとんと返した。
「そう、だから渡して貰えないかな?」
 アニスにまでせがまれ、ミルディアは渋々仮面を受け渡した。
「わかった。どうせあたしが仮面を回収してもどうしようもないしね」
「ありがたい。礼を言おう」
 リオンがそれに頭を下げたのだった。