|
|
リアクション
「さすがに人数多すぎて、いっぱいいっぱいかも。ここは一旦……」
不利な状況と悟りなななはあの場から逃げ出した。
「おっと、なななさん。これ以上は行かせませんよ」
そうしていくつめかの路地に入ったとき、2階立てビルくらいの高さから、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)がなななに呼びかける。
「とうっ!」
そして、なななの前に飛び降り、立ちはだかった。
「あなたも公務執行妨害する気? わかったよ、さっきはちょっと不利だったけど……今なら……!」
「ちょっとちょっとなななさん! それは少し横暴ですよ! そもそも独断と偏見で超法規的に悪を叩きのめすのは、俺のようなお茶の間のヒーローの専売特許なんだから!」
クロセルはビシイッと決めポーズのようなものをして主張した。
「ちょーっと待つにゃ! ヒーローというならボクの方がふさわしいにゃ! にゃんこ中尉参上!」
黒乃 音子(くろの・ねこ)がクロセルの背後から現れる。
同じくヒーローと名乗る存在の登場に、クロセルは背後に顔を向けた。
「何を言うんですか。俺のヒーローという地位を勝手に名乗らないで欲しいものですね」
「そっちこそ何を言うんだにゃ。ヒーローはひとりで十分にゃ」
二人はしばらくの間、睨み合う。
「あっ、ななながいなくなってるにゃ!」
ふと、視線を戻したときになななが消えているのを見て音子が声をあげた。
「それは大変です。早く探さないと! こうなったら俺が先になななさんを正気に戻してヒーローの座に返り咲きます!」
クロセルはなななの姿を探して駆け出す。
「あっ! 待つにゃーー!!」
音子もその後を追って駆け出した。
「っ!」
逃げ出したなななの前に、今度はレリウスが現れる。
「これ以上は逃がしませんよ、金元少尉」
レリウスは野生の蹂躙を使い、逃げ道のなかったなななはまともに食らう。
しかし、なななは倒れずに持ちこたえた。
「おいおい。少しは加減しろよ、傷を作ったらどうすんだよ」
「これでも、最大限に加減をしていますよ。ほら、立っているじゃありませんか」
思わず中尉をしたハイラルに、レリウスは真面目にそう返す。
「あんまりそう見えないんだよな……」
思わずそう心の突っ込みが漏れた時、その場にクロセルの声が響いた。
「あーーっ、見つけましたよ!」
なななは聞き覚えのある声に振り向いた。
クロセルは上から降ってくると、なななに向かい合った。
「さーって、なななさん。実は今、あなたに見せたいものがあるんです」
そう言って現れたクロセルは超伝導ヨーヨーを取り出した。
「ほーっら、見てください」
そして、クロセルはヨーヨーを変則的に操る。
「あの人は何をしているんです……?」
「さあ?」
その意図が分からず、レリウスまでもどう対応しようか迷うほどだった。
「えーーっと?」
なななでさえも、首を傾げる。
完全に油断したとクロセルは見切り、声を張上げた。
「今ですよ、音子さん!!」
クロセルの合図に音子が飛び出す。
「もらったにゃー!」
音子はにゃんこ・クロウで仮面を割った。
「ぅう〜っ……ごめんなさい」
「謝るくらいなら最初からやらないで欲しいわ。自分の立場、本当に分かってるの?」
反省するなななに、祥子は容赦することなく説教する。
そうして涙目になっているなななの手をルカルカはそっと握り、背を優しく撫でた。
「それにしてもなななが戻ってきてくれて嬉しいよ。おかえり、ななな」
「そうだな」
ルカルカの言葉に、ダリルが同意する。
「あ、ありがとう。……ただいま」
ふたりのの優しく迎える態度に、なななは笑みを浮かべる。
「ホントね。なななくんを無事に取り戻せて良かったわ」
リカインもホッとした表情を見せる。
「それより、怪我はないですか? ハイラルがそれを見ると言ってま」
「お、顔に傷があるじゃねーか。レリウスは本当にやりすぎなんだよ。ほら」
レリウスの言葉が終わる前にハイラルが割り込み、ヒールで傷を癒した。
「ありがとう……」
「それよりさっきから想っていたのですが、そんなにしおらしいなんていつものなななさんっぽくありませんね」
元気がほとんどないなななを見兼ねてか、クロセルがそう声をかける。
「何だにゃ? なななを止めたのはヒーローポジションに返り咲くためだけじゃなかったのかにゃ?」
音子の突っ込みに、クロセルはムッとする。
「それだけならば俺は音子さんと協力したりなんかしませんよ。俺はいつものなななさんに戻ってもらおうと……」
「……は、ははっ」
クロセルの言葉を遮って、なななは笑い声をあげた。
「今日の出来事で、なななはどれだけ皆に想ってもらってたのか解ったよ。なんか、悩んでたことがどうでも良くなりそう! そうだよね、皆に本気で信じてもらえなくたって、なななはななならしく宇宙刑事をやればいいんだから!」